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建築に込められた想い。時代をこえて受け止めたい

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建築には、それらを作った人の思いが詰まっている。そんな思いを感じることができればと、建築を見に足を運びます。
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#福岡

建物の外壁に込められた物語

建物の壁には、いろんな素材が使われている。 これらは、福岡で出会った建物の色々な表情 である。数え上げれば、きりがないが、建物 にはそれぞれに、その素材が選ばれた思いが 込められている。出来上がった建物をみて、 その物語を勝手に想像したりするのは楽しい。 建物の前を通りかかる人達に、ほんの少しでも 物語を感じさせ、垣間見せることのできる建物 は人の記憶に刻まれるよい建物であると思う。 ①はつりコンクリート  コンクリートの表面を特殊な工具でたたいて  削るはつり加工による

太宰府天満宮へお参りを

太鼓橋を渡って本殿へと進む。太宰府天満宮は全国の 天満宮の総本宮で、道真公の御墓所として唯一無二の 聖地でもある。天神さまとしての道真公は、己の信じる 道を歩もうと努力する全ての人に寄り添う優しい神様 として1,100年以上にわたり慕われ続けているという。 令和9年の式年大祭に向けて、令和5年5月より約3年を かけた124年ぶりの重要文化財「御本殿」の大改修が 行われていた。改修期間中、御本殿の前に建設された 「仮殿」は藤本壮介氏によって手掛けられた。道真公を 慕う梅の木の

福岡には新しい形を目指す神社もある

紅葉八幡宮を後にして、福岡の街をめぐる旅を続ける。 旅先では行く先々でお参りを。九州の旅で各地の神社 に訪れた。日本建築のもつ時の流れを感じつつも、また 新たな時代の扉を開く建物や空間にもひかれている。 手掛けられた二宮設計のサイトにて内部の写真も 2021年のグッドデザイン賞にも選定されている あらたまった鳥飼八幡宮 現代的な建物と茅葺きといえば花西海を思いだす この建物も二宮設計によって手掛けられた 令和四年度の遷宮計画にて生まれ変わった鳥飼八幡宮 古と今

福岡大名ガーデンシティを楽しもう

刻々と姿を変えつつある天神の街。天神ビッグバン による街の開発は今も進行中だ。今年6月に開業の 福岡大名ガーディンシティは天神の新たなシンボル にもなる建物。分節、スリット、セットバックという デザインにより生まれた大胆な外観デザインに引き込 まれるように内部へ。大名ガーデンシティを楽しもう。 オブジェを見てまわるのも楽しい街歩き ロゴのデザインも建物のコンセプトをよく表している 福岡大名ガーデンシティは新たな天神のシンボルへ 九州初のリッツ・カールトンは国内では6カ

パサージュという名のアパートに広がる空間

PASSAGE-F パサージュエフ 2017 福岡市中央区大宮に1階テナント、2、3階が 集合住宅の建物がある。フランス人デザイナー の手により、築26年の2棟のアパートを一体 でリノベーションされている。床の格子状の パターンや、腰壁や壁の装飾のアンティーク感 により異国情緒が漂う。やわらかな光が差し 込む通路部分の先には、観葉植物がおかれて、 外の樹木と共に、緑ある空間が作られている。 パサージュという名前に、遠い昔に訪れたパリ のパサージュのある空間を懐かしく思い出

限られた空間の中に凝らされた工夫

御菓子處 五島  柿沼守利  2002 福岡の赤坂にある和菓子店である。 黒い外壁は、風景に落ち着いた印象を与え、 芽生えを待つ木々を穏やかに包み込んでいる。 建物は緑に寄り添うように設計されていて、 樹木は、庇の開口部から空へと枝を伸ばす。 入口のデザインされた格子の建具は、 シンプルな外観のアクセントとなる。 外壁と同じ素材でつくられた水盤、 階段や手すりの納まりはシンプルに つくられていて余計な主張はしない。 それらすべてが醸し出す空気感がよい。 ひとつひ

内から外へつながるスロープをたどって

昨年の夏の日のことを思い出しながら書いている。 大きな自転車が届く前に志賀島へ行った時のこと。 小さなウルトラライト7が楽しいのは、30km程度 までなので、自宅から往復60km程の志賀島一周は、 中くらいの自転車のダッシュアルテナの出番である。 天気予報も見ずに出発したはいいものの、少し雲行き が怪しいと思っていると、空からしっかりと大粒の雨。 とにかく雨宿りできる場所を探すことに。ちょうど アイランドシティを通りがかったところだったので、 前から興味のあったぐりんぐりん

木々の向こうのただならぬ気配

昨夏のある日の午後、博多の街を自転車で のんびりと走っていると、木々の向こうに ただならぬ気配を感じた。巨大な石の塊の ような建物は、最近の美術館建築にも見える。 その六角形の建物は、県庁の議会棟であった。 福岡県庁舎の議会棟 1981 黒川紀章 その姿を、悠々と水面に映していた面影は今はない。 干上がった池に建つ建物は、砂漠のピラミッドを彷彿 とさせる。ガラスに越しに庭園を眺めることができた レストランは、昨年3月末に閉店しひっそりしている。 六角形であることで、内か

一台の車のためにある空間

博多から北へ向かう3号線沿いにはアルファロメオ、 ボルボ、マクラーレンなどの自動車のショールーム が点在している。こちらはランボルギーニ福岡である。 鋭い走りを彷彿するようなエッジの利いた入り口。 軒裏の白いラインが、建物の形を際立たせている。 建物の柱や看板の側面と、展示された車の白色に より統一感のあるシャープな色調となっている。 ショールームに展示してあるのは一台であるが、 その圧倒的な存在感は、空間全体と呼応している。 躍動感あるデザインにより、その車は今にも

美術館のようなショールーム

キッチンハウス 福岡ショールーム 窪田勝文  2014 キッチンハウスは、ドイツ製のシステムキッチンの 輸入販売を経て、1984年には自社工場を国内に 設立したキッチンメーカーである。 キッチンへのこだわりに通じる建物にかける思い。 一般的なショールームからは、かけはなれている。 設計コンセプトは「心の開放」であるとのこと。 物理的な開放感が、心の開放につながるらしい。 軽やかに湾曲している庇や屋根、 ゆるやかに傾斜をつけられた壁、 床から天井までの開口部によって、

福岡銀行本店の圧倒的な公共的空間

福岡銀行本店 1975 黒川紀章  福岡の天神地区の一等地に福岡銀行本店がある 築46年の建物は、古さを感じさせない。むしろ 空間という意味での斬新さが、色あせることは ないと思う。濃灰色に大判の御影石の外壁は、 建物を落ち着いた雰囲気で包み込んでいる。 今まで見てきた建物の中でも、この公共空間の 作られかたは想像を絶している。大きな吹抜け た空間を作ることを前提にしないと、この建物 のデザインにはならないと思う。公共的空間に 充てられた空間のボリュームが圧倒的である。