嬉しかったのは、覚えてなかったこと。

彼女は僕の腕の中で、寝息をたてている。
そんな彼女の髪からは、シャンプーの薫りが漂う。
小さく寝言を呟く彼女に、僕は静かに聞いてみる。

『僕のこと、好き?』

彼女の頷く感触を、腕の中で確かめると、僕は少し笑って眠りについた。

カーテンから差し込む光に、卵をフライパンに落とした音。
トーストの香ばしい薫りが、僕を幸せな夢から呼び起こす。
食事の準備をする彼女に、僕はあくびをしながら聞いてみる。

『昨日の質問、覚えてる?』

彼女は「何のこと?」と僕に聞くと、目玉焼きを皿にのせた。
僕は彼女の顔を見て少し笑うと、トーストにバターをのせた。
バターはトーストの上で小さく踊ると、僕の心の不安のように消えていった。
僕の笑った顔を見て、彼女も小さく笑った。

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