アーモンドチョコレートと愛について。

「愛してるってどういう意味かな?」

彼女は指についたチョコレートを舐めながら言った。
テーブルの上には残り少ないチョコレート。
アーモンドが苦手な僕は、アーモンドの入っていないチョコレートを選りすぐっている。

『相手のことを思うことじゃない?』

僕は大したことも考えず、無意識に条件反射のように答えた。

「呪うことだって、相手のことを思うことだよ。呪うことと、愛することって似てるのかな?」

そう言うと、彼女は次のチョコレートの包み紙に手を伸ばした。

『呪いなんて、存在するかも曖昧じゃない。曖昧なものと、比較なんてできないよ。』

そう言うと、僕は天井の梁を静かに眺める。
そして、愛について深く考えてみる。

「だったら、愛だって一緒じゃない?。存在なんて解らない。愛なんて、存在してないのかもしれないね。」

彼女は包み紙を丸めてテーブルの上に置くと、チョコレートを口に放り込む。
僕は彼女の言葉を聞いて、考える。
存在しないかもしれない、愛について。
「愛してる。」なんて言葉を、どうして僕は遣うのだろうか?
何を考えて「愛してる。」なんて、囁くんだろう?
そして、無意識に呟いた。

『君の心の中にいる僕も、君のことを好きだよって意味じゃないかな?』

自分の発した言葉の意味を、理解できずに呟いた僕は、言葉を記憶したまま頭の中で繰り返す。
そして、意味を理解した上で、きっとそうだと確信する。
彼女も僕と同じように、僕の言葉を聞いて考え込む。
そして何かに気づいたように、僕を見て言う。

「なるほどね。私の気持ちは、貴方が思ってる通りですよってことなのかな?じゃぁ、私は君を愛してるってことになるわね。」

そう言って、彼女は少し笑うと、やっと頭を出してきたアーモンドを噛み砕いた。
僕は彼女につられて少し笑うと、テーブルの上のチョコレートに手を伸ばした。
テーブルの上には、アーモンドの入っていないチョコレートしか残っていなかった。

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