2色の飴玉。
「孤独を知らないということは、とても寂しいことなんだよ。」
彼女は唐突にそう言うと、ポケットから青とピンクの包み紙の飴を、2つ取り出しテーブルに置いた。
そして青い袋を破ると、飴を口に放り込んだ。
『急にどうしたの?』
僕は携帯電話でニュースをチェックしている手を止めて、彼女に尋ねる。
「ねぇ?人はどうして寂しいと思うのかな?」
彼女は左右の頬を何度も膨らませる。
その度に、彼女の口からは小さく歯と飴がこすれる音が聞こえる。
僕は彼女が怒っているように見えて、彼女の顔色を伺いながら話を進める。
『誰も周りにいないからかな?一人だから、寂しいんじゃないかな?』
彼女は僕の言葉を待っていたかのように、すぐにまた口を開く。
「そうね。ということは、やっぱり寂しいと思ったことのない人は、もっと寂しい人なんだよね。」
「そして、寂しいと思われない人は、もっともっと寂しいんだよ。」
彼女は、テーブルの上の飴を見つめると、今度は静かに飴を舐める。
僕は彼女の言葉を何とか飲み込もうと、視線を移しながら考える。
『孤独を知らない人は、ずっと孤独ってことなのかな?』
僕の言葉を聞いた彼女は、口角を上げて僕に言う。
「きっとそうね。孤独を無くさなければ、孤独を知ることなんてできないの。失わなければ分からないことが、きっと世界にはたくさんあるはずだわ。」
確かに彼女の言うことは正しい。
そして僕の視線の先には、残されたピンクの包み紙の飴がある。
『この子も寂しい思いをしてるのかな?さっきまで、一人じゃなかったもんね。』
僕はそう言うと、飴を手に取り袋を破る。
「きっとそうね。」
彼女は目を点にすると、少し笑って僕に告げる。
僕がいなくなると、彼女は孤独になるのだろうか?
けれどそれは、僕がいなくならなければ分からないことでもある。
僕は口に入れた途端に溶けていく飴を、少し寂しい思いをしながら優しく舐めた。
きっと、さくらんぼ味の飴を舐める度に、この会話を思い出すのだろうと思いながら。
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