冷たい布団の中での話。
雨が降るごとに寒さは増していき、冬の足音を感じるというよりも、秋がどこかに消えてしまったという方が、表現が近いように感じる。
買ったばかりのベッドのシーツは冷たく、冷え症の彼女の手足は、氷のように冷たい。
「ねぇ?大切にするって、どういうことなのかな?」
彼女はいつも、僕の腕の中で眠る。
そして僕はいつも、彼女の頭を撫でながら、シャンプーの薫りを感じて眠る。
けれどこの日は違った。
彼女は僕の方を向いて、小さく欠伸をしながら尋ねた。
僕は彼女の欠伸がうつったせいか、小さく欠伸をして答える。
『何があっても守るってことじゃないかな?』
彼女は眠たそうに目をこすると、同じような質問を繰り返す。
「守るって、どういうことなのかな?」
僕は彼女の足を温めるように、足を彼女の足に当てた。
そして、これが守ることになるのではないかと考えながら、彼女に呟く。
『何かがあったときに、戦うってことじゃないかな?大切なものを守るために。』
彼女は僕の答えを聞くと、淋しそうに「そう。」と小さく呟いて、僕に背を向けた。
『何かあったの?』
僕は彼女の淋しそうな背中を見ると、無意識に呟いた。
「抱きしめられていたなら、何かあったって大切にできないもの。」
僕は彼女に分からないように、小さく笑うと彼女に背を向けた。
背中で感じる彼女の心臓は小さく波打ち、僕は布団の端を優しく握った。
そして僕は、暖かくなってきた布団の中で、冷たいままの彼女の足の裏に、そっと足を合わせた。
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