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公開対話「佐々木拓哉(東京大学)」(2020年5月2日)

本日は、佐々木拓哉さんと対話しました。

先週は賑やかな対談で、それはそれで楽しかったのですが、今日は通常モードで落ち着いて対話。二人きりという心地よい緊張感でした。

それにしても「記憶」というのは不思議なものです。

記憶がなければ意識はないわけですし、感情が起こらなければ記憶されなく、記憶がなければ予測もできないとのこと。

これらはよく考えたらすごいことですが、性格や感情や、そういった人間的な営みの根源は記憶にあるのですから、全ては「記憶」に行き着くというのは大げさなようで当たり前の話かもしれません。そんな話を興味深く聞くことができてとても有意義なひと時でした。

また、記憶することと、思い出すこと(想起されること)は、同じ回路の往路と復路みたいなものという話も納得で、そこに完全な再現性がないということが、むしろ「創造性の源泉」という話はとても示唆的だと思います。

さらに言えば、完全に再現性がないことが、むしろ生存に有利だから、そっちの方向で進化してきたのではないかという話は本当に興味深いです。コンピュータのように全く同じ記憶が蘇る(想起される)のは、生存に有利でないというのはなんとなく理解もできます。

あれはいい、これはダメと白黒すぎるより、間(あいだ)が曖昧な方が、結果として生存に有利だったのでしょう。そしてその曖昧さゆえに、創造性が発揮できると。

佐々木さんは、この不可逆さ、脳のノイズに注目して研究を進めています。脳のノイズは我々が思っている以上に大きいらしく、そのノイズにありがたみを感じているのがとても印象的でした。

それがあるから新しい発想が生まれるし、コロナの影響で家に缶詰になることで、むしろノイズがいい具合に働いて、研究者としてはむしろ良い感じだというのですから興味深いです。

そもそも寝ている時とかの方が脳波は大きいとかそういうことも含めて、我々は脳の働きを間違って認識しているときもあるのでしょう。じっと目を閉じて集中したからといって、脳の活動がゆっくりになるわけではないという話は初めて聞いた時には驚きました。

そんなわけで、三宅さんとした「文脈」の話から、「記憶」に話を繋げたわけですが、最後は「創造性」の話になり、すごく楽しかったです。インプットを減らすことで、むしろノイズがいい感じに暴れてくれて、創造性が増すという話は私にはとても響きました。

またそれでいて、この「対話」の意味も、また一つ自分なりに整理できたというか、自分の中に潜ることと、「対話する」ことを、交互に繰り返すことが、私にとっては「創造性」にも繋がるサイクルなのだという気がしてきています。

■対談参加者





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