店舗でモノを買う理由
本屋はAmazonよりもリアル店舗が大大大好きです。
あらためて、リアル店舗とは何なのか?どういう場所なのか?ということを考えてみると、真っ先に思い浮かんだのが新たな偶発的な出会いを生む場所でした。
やはりセレンディピティを起こす場所であり、情報リテラシーの外にあるモノを気づかせてくれるのが店舗であることは間違いなく、これは以前からも言われていたことで、今もリアル店舗の価値だと思っています。
ただ、ウェブでは真逆に進んでいるのではないかと思うこともあります。
これは2019年のツイートですが、ウェブでは顧客一人ひとりの趣味嗜好に合わせた情報を活用して、完全なるパーソナライズ化を目指している企業が多いのではないでしょうか?
実はこの行為は、セレンディピティを奪っているんですよね。
オンラインで新しい出会いはあるものの、そこには「信頼」がないというものが私の考えで、今でもこの考えは変わっていません。リアルであれば、この「信頼」は顧客体験が生み出しているのではないかと思ってます。
リアル店舗では顧客体験により価値を見出すことで、最終的にモノ消費へとつなげていくと言われているので、今日はここを少し掘り下げて、店舗でモノを買う理由を考えてみます。
口コミを生む体験設計とは?
ここ数年、CX(カスタマーエクスペリエンス)や顧客体験という言葉を聞かない日はありません。では、顧客体験の定義とはどういったものなのでしょうか?
顧客体験で重要視されているのは、お客様との接触していく中で、「もう一度来たい」「また買いたい」と思えるような"満足感のある経験"が得られたのか、という点だそうです。
そして、その事例としてよく取り上げられるのがスターバックスですね。
スターバックスは、プロダクトの購入だけではなく、スタッフとのコミュニケーションや店内で流れる音楽や雰囲気を含めて「スターバックス体験」と呼ばれています。
2019年にできた「STARBUCKS RESERVE ROASTERY TOKYO」は、その体験が本当に素晴らしいので、是非皆さんにも体験していただきたいですね。
まだ、行ったことがない人は川野さんの記事をどうぞ。
「STARBUCKS RESERVE ROASTERY TOKYO」は、スターバックスの世界観を体験するエンターテイメントの場所になっていて、まさに小売+エンターテイメントの造語である「リテールテイメント」な体験ができます。
川野さんの記事にも書かれている通り、そこにいるのはスタバのスタッフではなく、ディズニーキャストに見えてきます。
ブランドの世界観を伝えたい時、ウェブではなく圧倒的にリアルの方が影響力(感動)が違うことは分かっていてるので、人間のリアル体験やコミュニケーションにフォーカスして「絶対にまた来たい」と思うほどに感動してもらう体験設計ができているんですよね。
これからの店舗の役割は、体験設計なしにしては有り得ないというわけです。
そして、リアルな場だからこそ生み出せる体験は、誰かと共にする思い出の場所にもなるということに、体験設計のヒントが詰まっているのではないでしょうか。
販売員の役割とは?
接客が嫌われる時代での販売員の役割についても考えていきましょう。
まず言えることは、販売員たちは「モノを売る場所」というバイアスから抜け出せていないということです。
「私たちは何を売っているのか?」
ミッション・ビジョンが問われる時代に、この答えが一致しなければいけませんが、販売員にまで落とし込めていない企業も多く、販売員の役割に統一性が保てていないように感じます。
統一性が保てないということは、ブランディングにも影響が及ぶわけで、「販売員の役割」を経営層から、現場に落とし込む必要があるわけえす。
また、一般的に小売りでは接客時間が長いことを良しとせず、回転率が重視とされますが、私は一人一人のお客様にじっくり向き合うための接客が今の時代に求められているのではないかと思います。
そして、「お客様にじっくり向き合うため」には、自分の言葉で話して、接客というよりも"会話"ができる販売員こそ、価値ある販売員なのではないかと。
和子さんのこの記事に書いている通り、会話の相手を主人公にしなければいけません。
典型的な声がけは会話ではありませんし、マニュアルに書かれていることを実践してもお客様にはイチミリも伝わりません。
しっかり会話の意味を考えて、いかにお客様に寄り添うか?
あくまでも私の意見ですが、この目的を果たすことができれば、販売している商品なんて薦めなくても良いと思っています。
私がワインを販売していた時に思ったのが、料理に合わせたいお酒を聞かれた時、別に敢えてワインを提案する必要はないということである。
もちろん、ワインも提案するが日本酒でも合うと、そのお客様に寄り添って、選択できる提案をしてあげることが大事だということです。
もちろん、「ワイン」と指定されたらワインを提案するが、様々な選択肢があるということを教えてあげることも必要なのではないかと。その中で最終的に選ぶのはお客様なわけです。
結局のところ、販売員はお客様に何を伝えるのか?ではなく、お客様が何を知りたいのか?を常に考えて、お客様に寄り添うのが販売員なのではないでしょうか。
販売員の個性を見つける
接客が嫌われる時代で、販売員に興味が沸くことは少ないと思いますが、コロナ禍において会話すら嫌がられる時代にどうすれば人気が出る販売員になれるのでしょうか?どうようなフェーズを辿れば良いのでしょうか?
最所さんの記事に書かれていた通り、事前にお客様に情報を届けることが重要なんですよね。
考えてみると、世の中で人気になっているタレントや芸人たちは、いきなり人として興味を持たれたわけではなく、その人に紐づく個性やコンテンツに興味を持って、その延長としてパーソナリティに興味が流れていることに気が付きます。
このフェーズを踏むためには、まずは一人の人間として個性やコンテンツを持っているという状態を作って、トランジションしていく流れを企業側が作ってあげる必要があるのでないかと思います。
コンテンツとなれば、ウェブでも展開が可能ですし。
中川政七商店が展開する「はたらくをなくそう」は、日々工芸に向きあう中川政七商店の社員がどんな想いや姿勢で働いているのか、仕事への価値観や自分がなぜ、中川政七商店に存在しているのか?というパーパスを語っています。
今だからこそ、販売員の生の声を肉声で届ける価値がありますよね。
もちろん、テキストコンテンツである必要はなく、動画の方がその人の親しみやすさが感じられるし、デジタルでの接客を得意とする販売員の活躍の場を増やすことにも繋がるので、動画の方がより人となりが伝わると思います。
また、フォーカスされる販売員はどうしても一人、二人になりがちだが、小さい店舗であれば、できれば全販売員にフォーカスを当てて欲しいですね。
もちろん、お客様と会話ができることが前提ですが、販売員が持つ個性を見つけてあげて、そこにフォーカスすることも企業の役目なのではないかと思います。
「人」は語ることもあれば、伝えられることも山ほどあるので、どうお客様に届けるか?ということ考えてあげる必要がありそうです。
売り上げはお客様のため
先日、クラブハウスでminimalの山下さんが語っていた内容がとても印象的でした。
この言葉を聞いてハッとしまい、売り上げも"お客様のため"と紐づけられる思考を持たなければいけないと思いました。
たしかに、万が一閉店しなければいけない状況になった時、お客様の満足度は一時的だが下がりますし、お客様は二度とそのブランドを店舗で購入できなくなる可能性すらあるわけで...。
最悪、お客様の顧客体験を奪うことに繋がりかねないので、店舗の売り上げというのは、そういう意味でもお客様のための売り上げという考え方ができるな~と。
この思考を持っていれば、店舗がお客様にとってどういうお店であるべきか?を販売員全員が考えられるのではないかと思いました。
店舗でモノを買う理由は?
店舗でモノ買う理由を問われて、その行動の定義を答えられる人間はまだまだ少ないと思います。
そういう状況でも、お客様が店舗でモノを買う理由を語れるように、まずは店舗が何を売っているのか?...販売員含めて理解にして、行動で示せる店舗になっていなければいけません。
そして、スターバックスのようにブランドの世界観を体験するエンターテイメントの場所として生まれ変わって、体験そのものの思い出としてモノが売れていく仕組みを作っていく必要があります。
ちなみに例はスターバックスだけではありません。
シェイクシャックもまた、ブランド体験ができる店舗設計になっています。
ブランドを体験できる根幹となるプロダクトの美味しさは、食事そのものを体験と化しています。お店の世界観も「黒」を使って高級感を出しており、これまでのフォーストフードとは一線を画すデザインとなっています。
そして何よりもグッズが豊富という点ですね。
この辺は「ブランディング・ファースト」を読んでみてください。
ということで、最初にも伝えした通り、まずはエンターテイメントを体験できる店舗であれば、モノを買う理由になるということです。
これからの店舗は情緒的価値を与えられる店舗設計→そしてお客様自身がそれを感じて言語化→口コミが発生とこの流れを理解した上で、店舗開発が行える企業が残っていくのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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