一橋MBA戦略分析ケースブック 事業創造編 メルカリ
新たなビジネスモデル構築のヒントとなるケースとして
今回は本書の第6章の「リユース市場におけるメルカリの戦略分析」について考察してみたいと思います。
本ケースが書かれたのが2018年前後と思われますが、それから約2年の間にフリマアプリの市場は競争が激化しています。
楽天のラクマなど、市場の成長に従って、強力な資本力と複合サービスで参入してくる企業もありレッドオーシャンと化しています。
私自身、メルカリ、ヤフオク、ラクマと利用経験がありますが、ラクマはアプリのデザイン設計もメルカリにすごく似ていて使い勝手面でのスィッチングコストも低く、また、利用手数料がメルカリよりかなり低めということでお得感も高いです。
特に、売上金の活用面では楽天市場や実店舗で楽天ポイントの加盟店で活用できるといった使いやすさも売りでしょう。メルカリは、現金化に1万円以上だと手数料が掛からなかったサービスがなくなりましたが、メルペイでの利用が可能になっています。やはり商品数ではまだまだメルカリの方が上かもですね。その点は会員数のベースが優位なのでしょうか?
そういえば、私はアメリカでの留学から日本に帰る際に、Craig Listというサイトで家具や電気製品を売り払ったのを記憶しています。サイト上で掲示したものを欲しい人がコンタクトしてきて、実際に手渡しで現物と現金でやり取りしました。よく考えたら、トラブル発生リスクは高いですよね。メルカリで似たようなサービスがありましたが、長く続きませんでしたね。
本ケースは現在の目まぐるしく変化するフリマアプリの競争環境についてではありません。
メルカリが事業創造に至る中でどのように既存プレーヤと比較優位を築くことができたのかについての分析を行っています。
比較対象となっているのが、ヤフオクとブランディアです。リユース市場に参入するにあたり、この2社の利用者が売買の経験を重ねる中で出てきた利用上の不満や新たなニーズを活用してできたのがメルカリのビジネスモデルということです。
価格設定の不満、不安、配送時におけるプライバシーの保護、個人間決済のトラブル解消、売り手と買い手の世代間のズレを取り除くといった既存のライバルのユーザーが感じる不便を補ったところがメルカリの成功につながりました。
振り返って考えるとメルカリのC to Cのフリマアプリのプラットフォームを構築ということで、既存のプレーヤーであったブランディアやヤフオクとは似て非なる事業を創造したことになります。そこに至るまでに、それらの顧客が利用経験を重ねることでどんなニーズを持つのかを汲み取ることができたことが成功要因と言えるようです。
伝統的なビジネスモデルであるB to B, B to C, そして、今回のケースのようなリユース市場におけるC to C。最近はD to C (Directo to Consumer)というのもよく耳にするようになりました。
メルカリのケース分析を読んで思うのは、
ビジネスモデルの中で常識的に相手側にかけている負担を疑ってみる、そして、それらの負担を解決しようとすると新しいビジネスモデルにつながる機会につながる、ということです。
例えば、B to Bのビジネスは、提供者側のBにとって、最終消費者の顔が見えないというのは課題です。消費者の顔が見えないと新しい提案なんかも独りよがりになりがちな傾向があります。
以前、書評を書かせていただいた奥山清行氏の「ビジネスの武器としての「デザイン」」においても
「to Bの先にあるto Cがしっかりと理解されていないと、それがあなたのビジネスが苦戦している原因の一つであると思われる。」
と言われています。
今回のメルカリのケースを読み、既存の顧客の不満やニーズに着眼することで、新たなビジネスモデル構築のヒントがあるということを感じながら読み進めました。
最後までお読みいただきありががとうございました
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