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値上げ後も「お値段以上」と思ってもらうために

最近は、食品や日用品などさまざまな商品が値上げされ、「おトク商品」と言えるものを見かけるのが難しくなりました。これまで650円だったラーメン屋の半チャンセットが急に800円になると、非常に高く感じてしまいます。

従来の経験に基づく商品・サービスの相場感が知覚価値として確立されているため、「それでもこの辺りのレストランの価格と味を比べたら安い」と言われても、なかなか納得できないかもしれません。しかし、これが人気のテーマパーク内の食事なら、味がイマイチで1,500円でも受け入れてしまうことがあります。これも知覚価値によるものです。

知覚価値とは、顧客がある製品やサービスに対して感じる価値のことで、実際の価格や機能以上に顧客の認識や評価に影響を与える要因です。知覚価値は、機能(製品の性能など)、感情(デザイン、ブランドイメージ)、社会(ステータスシンボル)、状況(場所、期間限定など)の要素が相互に影響し、顧客は価値判断を行います。

つまり、知覚価値が高ければ、少しの値上げがあっても顧客は「お値段以上」だと認めてくれるのです。

では、知覚価値はどうやって高めれば良いのでしょうか?

知覚価値は次の4つの要素によって分解した式に表すことができます。

知覚価値 = (結果品質 + 過程品質)÷(金銭コスト + 非金銭コスト)

  • 結果品質とは、製品やサービスが最終的に提供する成果や結果の品質。顧客が最終的に得る利益や満足度に直接影響を与える要素です。具体例としては、商品の性能、耐久性、機能性、サービスの効果などが挙げられます。

  • 過程品質とは、製品やサービスが提供される過程や方法の品質。顧客が製品やサービスを受け取るまでの体験や満足度に影響を与える要素です。具体例には、接客態度、購入手続きのスムーズさ、アフターサービスの対応などがあります。

  • 金銭コストは、顧客が製品やサービスを購入する際に支払う金銭的なコスト。顧客の財政的な負担に直結する要素です。具体例としては、購入価格、維持費、追加料金などが含まれます。

  • 非金銭コストは、顧客が製品やサービスを利用する際に支払う非金銭的なコスト。顧客の時間や労力の負担に関する要素です。具体例としては、購入するまでにかけた時間、労力、精神的ストレスなどが挙げられます。

知覚価値を高めるには、分子(結果品質 + 過程品質)を高め、分母(金銭コスト + 非金銭コスト)を低くすれば良いということになります。

結果品質や金銭コストを大きく変えることは難しいかもしれません。しかし、過程品質の向上や非金銭コストの削減は、顧客視点に立って考えることで何らかの方策が見つかるかもしれません。

その一例として、ファーストフードのバリューセットを考えてみましょう。

バリューセットの常識は覆せる?

バリューセットは、ハンバーガーとポテト(サイド変更可能)とドリンクがセットになっているのが常識的です。バリューセットは、抱き合わせ販売(バンドル価格)と言って価格戦略の定番と言ってもいいです。店内ではドリンクは必ず注文するもので、ドリンクがついて単品よりおトクな価格設定ということで喜んで顧客は選んできました。

一方で、コロナ後はさまざまな外食レストランがテイクアウト商品を始めました。軽減税率も適用されますし、そちらの方がお得です。自宅に帰って食べるのであれば、ドリンクはなくても良いという消費者も多いでしょう。冷蔵庫にあるお茶で十分と思う人には、ドリンクは荷物にもなるし邪魔に感じるはずです。

ドリンクが高利益商品であるという事実は置いておいても、ドリンクのない別のバリューセットをメニューに加えれば、顧客の非金銭的コストを下げることができます。

価格変動期には従来までの商品の提供スタイルを顧客視点に立って修正を加えることで、おトク感を維持することができるかもしれません。

まとめ

顧客に「お値段以上」と感じてもらうためには、知覚価値を高めることが重要です。結果品質や過程品質を向上させ、顧客の時間や労力といった非金銭コストを減らすことが鍵となります。特に、現在のように値上げが続く状況では、企業は顧客視点に立った戦略を取ることで、顧客満足度を高め、競争力を維持することが求められます。

参考文献:


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