見出し画像

書評 デザイン思考が世界を変えるを読んで

10年前に書かれたデザイン思考が世界を変えるのアップデート版です。本書は事例が多く考えさせてくれると思います。考えれば考えるだけ中身が広がってくるのではないでしょうか?翻訳版であるためか日本語の部分で難解であると感じるところがいくつかあります。読みやすいか?と聞かれるとちょっと注意力が落ちると頭に入ってこないこともあります。目次として出ている内容をまとめたマインドマップのように本を読み進めながら思考のどの部分にあるのかをつかみながら読むと良いのかもしれません。デザイン思考に関する本もこの10年で多く出てきています。世界を変えるようなイノベーションを起こすことを目指す上で考える時間を与えてくれる良書であると思います。以下、なんとなくポイントです。

デザイン思考とは、技術的実現性、経済的実現性、有用性の3つのバランスをとって、イノベーションを引き起こすことである。

デザイン思考は、人々が自分でさえ気づいてないニーズを明らかにし需要に結び付けるもので、地図を塗り替えるような発想を生み出すアプローチをするためのツールが、他社の生活から学びとる洞察(インサイト)、極端な利用者から良質な観察(オブザベーション)から人々がしない、言わないことに耳を傾ける、他人の身になって観察対象の人々と根本的なレベルでつながり合う共感(エンパシー)の3つの要素がある。

デザイン・チームはプロジェクトの過程で着想(インスピレーション)、発案(アイディえーション)、実現(インプリメンテーション)という3つの空間を行き来する。デザイン思考における体験とは「収束的思考」「発散的思考」「分析」「綜合」という4つの心理状態の間を繰り返す。デザイン思考において重要な考え方は一つのことを追うだけでなく、相反する考えを対比させて新しい解決策を生み出すインテグレーティブシンキングである。

プロトタイプ製作は想像力を解き放ち、新たな可能性に心を開いてくれる最も初歩的なプロセスの一つである。プロトタイプ自体は手早く作って、やっつけ仕事で構わない。カスターマージャーニーは実体のない「経験」のプロトタイプを作る方法であり、架空の顧客が経験するサービスを最初の段階から最後の段階までを図式化することで、顧客がサービスやブランドに接するタッチポイントの一つ一つから価値提供の機会を示すことができる。

製品を差別化し顧客の評価を得るには、製品の機能・デザインだけでは不十分で顧客に感情的な経験による充足を提供する必要がある。最良の経験はサービスを提供する現場の人々によって届けられるものであり、入念かつ緻密に作り上げ実行されなくてはならない。

人間中心の問題解決アプローチである「デザイン思考」において、物語を通じてアイデアに文脈や意味を与える人間の物語の能力は非常に重要である。エスノグラフィー調査や大量のデータを理解する綜合の段階において第4次元という時間軸に沿ったデザインツールを与えてくれる。デザイン思考家は時間軸と空間軸の間を縦横無尽に動きまわる必要がある。時間軸に沿ったデザインとは人々を自らの物語を築く上で生きた存在、成長する存在、考える存在として扱うことである。効果的な物語は、時間という要素を利用してデザイン思考の総合的なプログラムを前進させる大規模な活動の一部である。

旧態依然とした文化をイノベーション指向でデザイン主導の文化に転換させるには、行動、決断、意思が必要だ。

人間中心の原理に基づく組織において、消費者は受動的な立場ではなくブランドに対して商品の意思決定に対して参画することを求めている。「製品」と「サービス」の境界がなくなり、あらゆるレベルの人たちが参画することで持続可能な指針を得ることができるだろう。デザイン思考は人々に何が危機に瀕しているのかを気づかせ、新しい物事を生み出す時のシステムやプロセスを再評価し、持続可能な行動に向かわせる方法を見つけることができる。

今日の環境問題等持続可能性についての解決の原動力はテクノロジーであったが、すぐれた思考家たちは、自らのスキルを活用した文化の変容に取り組む。

デザイナー思考のスキルは、さまざまな分野が複雑に絡み合う課題に統合的に取り組むことを可能にする。デザイン思考家がR&D活動の初期の段階から関与することで斬新なアイデアをもたらし戦略策定における上流と下流の橋渡しを担うことができる。デザイン思考における人間中心のアプローチは、まず顧客を観察し、新しい製品、サービスと結び付け、ニーズを満たすのか、価値だけでなく意味を作り出すのかを考えることから始める。
偉大なデザイン思考家は「普通」を観察する。一日に1回立ち止まって普通の状況に目を向け「なぜ?」と問いかけることで鋭い洞察を得ることができる。観察内容やアイデアを視覚的に記録する。

今、我々は史上最大の難問であるデザインをデザインしなおすという課題に直面している。緊急性が高く、デザインが有望な道筋を描き始めている分野は、①時代遅れとなった社会システムの再デザイン、②参加型民主主義の復興、③脱自動車時代の都市のデザイン、④人間に優しい人口知能、スマート・マシン、ビッグデータのデザイン、⑤バイオテクノロジーや人間の誕生と死にまつわるデザイン、⑥線形経済から循環経済への転換、などである。



この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?