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INTERLOPER / Search Party

Search Party(捜索隊)と名付けられた1stアルバム。INTERLOPER(侵入者)は元Rings Of SaturnのMiles Dimitri Baker (ex-Rings of Saturn, ex-Ænimus), Aaron Stechauner (ex-Rings of Saturn, ex-Abiotic) と、Andrew Virrueta (ex-Sea of Skies, Vampire Squid)で結成されたいわばスーパーバンドです。ドイツのHM専門レーベルNuclear Blastからのリリース。各メンバーの参加バンドを観るとテクニカルデスコア、メタルコアといったバックグラウンドに見えます。Metallumのジャンル分けは「Melodic/Progressive Metalcore」。聞いてみましょう。

出身国:US(カリフォルニア)
ジャンル:Melodic/Progressive Metalcore
活動年:2014-現在
メンバー:
 Andrew Virrueta Vocals, Guitars
 Aaron Stechauner Drums (2014-present)
 Miles Baker Guitars (2014-present)

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1 - Pathkeeper ★★★★☆

意外とスラッシーなリフ、MegadethやAnnihilator的なテクニカルで刻むリフ。思ったより低音が軽めでデスコアではない。ボーカルが入ってくるがクリーントーン。メロディアスですね。聞きやすい音楽性。テクニカルの度合いは強くバッキングがずっと動き回っている。ベースも低音を支えるというよりは動き回っています。ヘヴィネスをあまり感じないのはレギュラーチューニングなのかな。ギターソロはややクラシカルというか、テクニックに任せた機械的なフレーズではなくかなりメロディアス。そうだなぁ、AX7やTrivium的な正統派HMのニュアンスも入った新世代メタルコアといった感じか。この曲はシャウトも控えめ。ボーカルパートには透明感があります。ジャケットとキャリアからもっとゴリゴリの音像を想定していましたが、けっこうメインストリームにも通用する音。


2 - Bound To Fall ★★★★

ややグロウル気味のボーカルでアグレッションが増してきますが、どこか音が軽い。やはりチューニングかなぁ。軽やかに飛び回る感じがします。テンポダウン。メタルコアの音像。先日から推しているパキスタンのTakatakにも近いものがありますが、こちらはUSのバンドなので洗練感が増しています(その分独特のアクはTakatakに比べれば薄目)。あと、やっぱりメロディセンスがカントリー寄り、ウェストコーストロック寄りというか。グロールなどの表現手法に装飾されていますが、ハーモニーで音節を伸ばす感じなど、US的な歌メロ。

3 - Moonlight ★★★★★

激走からのスタート、Trivium的ですね。ボーカルラインはUS的でもバックやギターフレーズがところどころ欧州HM的。リフのずらし方とか、不協和音感の出し方は西海岸の(スラッシュの流れを汲む)バンドだなぁという感じですが、そうした要素がまじりあっています。少しギターフレーズに欧州HMの薫りがするのが特徴か。あれ、考えてみるとこのバンド、ギター2名いますがベースがいないですね。ベースはサポートなのか。だから低音がやや薄目なのかもしれませんね。ベース自体は入っていますが音が薄い。途中、ブラストビートでツインリード、メロディアスブラック的な手法も。これはかっこいい。

4 - Dreamlands ★★★★☆

メロウな音像に切り替わる。バラード調。ピアノの音が舞う。ブラストビートが入ってきてダイナミクスが増します。ボーカルもグロールが強めに。緩急の幅が増していく。ギターフレーズはいかにもDjent的な、少し小節をはみ出しながら幅広い音域を動き回るアルペジオ。曲の終盤になるとドラムも手数が増してきてドラムソロのように自在に叩きまわっています。

5 - Drift ★★★★★

かなりDjentなリフ、グロールから入ってくるモダンな音像、アグレッション強めですがどこか優美さが残っている。ギターの音域と音色でしょう。ボーカルはクリーンとグロールを使い分けながら曲が進む。コーラスのメロディ展開が上手い、ギターと絶妙に絡み合う。おお、現代プログ・メタルの表現手法が次々と出てきて絡み合う、結晶のような曲。


6 - Search Party ★★★★☆

クリーンなアルペジオから、やや性急なリズムでスタート。ドラムも入ってきて急かされるようなテンポが続くがボーカルがやや落ち着いたトーンで入ってくる。面白いバンドですね。ドラムがドリルのように掘り下げる。緩急の幅が極端。ボーカルはずっとクリーントーン。ドラムの突進力が耳に残る曲。ギターフレーズも多層的に重なっていく。


7 - The Wishing Well ★★★★☆

ハードコア、メロコア的な音像。シンプルなビートで疾走。タイトだけれどつんのめる様な疾走感があります。ベースもかなり暴れている。コーラスパートにはコールアンドレスポンスもあり。この曲は低音がやや強めですね。ベース音が大きめなのとドロップチューニングなのかな。途中からテンポダウンしてメロディアスなギターフレーズとボーカルが絡み合う。曲展開はけっこう凝っていて、コーダで大団円的なコーラスに。この曲も5分程度(5:09)だけれど、コンパクトに収まりつつ展開がドラマティック。

8 - Idle Years ★★★★

パワーバラード的なスタート。ミドルテンポでリズムが迫ってくる。ギターも波打つような、Devin Townsend的な音の波。低音がだんだん強めになってきたように感じます。メロディアスなギターソロ。ややリズムが凝りすぎているきらいもあるけれど、各パートはきちんと尺が取られており適度な展開。


9 - Cheshire ★★★★

浮遊するようなアルペジオとボーカル。テンションがかかったメロディ。グランジオルタナを通過したポストロック的な音像だけれど歯切れは良い。ジャズ的な和音進行。後半に行くにつれてサイケデリックでスペースロックな音像に。ただ、歌メロはカントリー的というか、US的なハーモニー主体のメロディです。

10 - Baring Teeth ★★★★

シンプルな疾走からスタート、スラッシュ的な音像、ボーカルもグロールで入ってくる。また音が軽めになった。ベースの音が薄目。この低音が薄目の音はこのバンドの特色があって心地いい。打ち鳴らされるドラムのブラストが要所要所に入ってきてメカニカルな印象を与える。とはいえ全体的に音が聞きやすいんですよね。そこまで突き放す感じが無いというか、エッジは立ちつつ聞きやすい丸みもある。出音がトリートメントされている感じ。最近のプログメタル全般に言える音作りです。そのトリートメント度合いはさすが大手レーベルかつUSのバンドというクオリティ。S級までは行きませんがA級のプロダクション。

11 - Rio ★★★★☆

Duran Duranのカバー。いきなり電子音からスタート、これはボーナストラック感がはっきりしていて面白い、リズムも跳ねている。アンコールにふさわしい曲といった感じです。このバンドはまだいろいろな引き出しがありそうな期待感を持たせてくれますね。

総合評価 ★★★★☆

掘り出し物。テクニックと編曲能力は素晴らしい、後は歌メロがもう少し突き抜ければ名盤を生み出すS級バンドになれそうなポテンシャルを感じます。決して今の歌メロも悪いわけではないのだけれど、カントリー的でややフックに欠ける。10曲オリジナル曲がある中で、ボーカルラインのパターンが少ないように感じてしまいます。緻密に計算されて組み合わされた精巧な作品なので、突き抜けるポップさというか、そうした各種雑多な要素を抜けて輝いてくるパートが何か所かあると一気に化けそう。一曲一曲のクオリティは高く、ふっと聞いたら耳を惹かれる佳曲揃い。5は名曲のオーラ。

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