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Junoon / Parvaaz

昨日に続き、パキスタン特集で取り上げた「Junoon」の1999年リリース作。すでにインドでもデビューし、中央アジア全域でトップスターとしての名声を得て、期待の中でリリースされた作品です。その期待に見事にこたえる非英語圏ロックの名盤。パキスタン政府を批判し、激しく対立していた時期のアルバムです。

パキスタンを代表するバンドと言えばJUNOON(جنون‎)。ギタリストのSalman Ahmad(サルマン・アフマド)※1を中心に1990年にラホールで結成され、1991年デビュー。最初の数年はヒットに恵まれず苦労したようですが、1997年、4枚目のアルバム「Azadi」で国外進出を果たしインドでも発売。それ以降、世界的な人気を得るようになっていきます。現在までに全世界で3000万枚のアルバムを売り上げる南アジア最大のバンドであり、NYタイムズには「パキスタンのU2」と紹介されました。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

.1999リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1 Bulleya
聞きやすいが哀愁のメロディ、ギターはカッティング主体
1stはハードロック色が強かったが、こちらではちょっとサンタナ、ラテンロック色も感じる
パーカッションがそう感じさせるのか
心地よくて良い曲
★★★★

2 Pyar Bina
タブラか、少し深い、反響音の多いパーカッション
ポリリズム、そこにギターが絡みついてくる
ギターのリズムもポリリズムを加える
ボーカルはサラッとした歌い方、新しいロック
RushのPrestあたり、Roll The Bonesあたりで取り入れたアフリカビートをより自然な形で出している印象
南アフリカポップス的な響き、なんといったかな、キングサニーアデとか
アフロビートではなくこういうジャンルの呼び方があった気がするが、、
爽やかな音像、心地よいが陳腐さはない
音はかなりチープなのだけれど、、、やはり生演奏だからか
うーん、南アフリカというよりやはりパキスタン、カッワーリーなのかな
反復するリズム、戻ってくるコード、力強いボーカル
ボーカルが上手い
ギターが反復して同じフレーズを続ける、これはアフロビートっぽい
ただ、リズムが整理されているからアフロビートのような混沌感は少ない
★★★★

3 Sanwal
パーカッションの連打、サザンの勝手にシンドバッド的なリズム
そこに少し哀愁がある、乾いたギターリフというか反復アルペジオが乗る
このバンドは面白い、かなり中央アジアではビッグなバンドらしい
タイのCarabao的な「ホンモノ」感が凄い
一つ一つ音に凄味とか威圧感はないのだが、隙がなく心地よい
これは1999年リリースなのかな、こういう音源にすぐアクセスできるとは凄い時代だ
節回しが大げさではなく、かとおいってメロディは12音階、西洋音階にとどまらない展開を見せる
この曲のギターはけっこう弾いているがメタル的というよりフュージョン的
この辺りの洗練された音楽性がパキスタンの特色なのかも
心地よさにフォーカスしたのだろう
あるいは、お国柄的にあまり激烈な音楽性だと問題があったのか(イスラム教圏)
★★★★

4 Mitti
落ち着いたリズム、瞑想するような
サイケ感がナチュラルにある、そもそも北インドとかパキスタンの音楽は法悦を求める側面もあるからなぁ
音楽の機能として酩酊が組み込まれている印象がある
それがどこか音像の穏やかさにつながっているのかもしれない
あと、パキスタン国内の音楽シーンが小さいのかも
だから外に出ていかざるを得ないのかもしれない
この曲は古典音楽の色が強い
透明感、明るい光、蓮の花、そういったイメージを浮かべる曲
★★★

5 Ghoom
かなり瞑想的な曲
少し展開はあるがゆったりしている、とはいえ単和音で引っ張る感じでもない
きちんとメロディはロックの曲としてコード進行ともども展開する
ヌスラットファテアリカーンのスワンソング(西洋のアーティストとのコラボライブ盤)をもっとバンドサウンドにして進化させたような
その分、音数は減っているけれど
途中から世界観が深まる、やや伝統音楽職が強まる
これだけミニマムな構成で音世界を作りあげるのは大したものだ
カッワーリーは多くの歌唱者がかかわる、パーカッションも大人数だ
バンドのオーケストレーションを活かしている
★★★★☆

6 Sajna
ギターのカッティングにボーカルが絡む
なんだろう、ギターポップ的な? ジプシーミュージックのようにも感じる
リズムを強靭にすると南アフリカポップス的になるのか、パキスタンミュージックは
跳ねるリズム、面白い
メタル感は皆無ながらロック、ポップ、ワールドミュージックの文脈で名盤
ソロはサンタナ感がある
なんだろうなぁ、高音の気品というか、歌心というか
ボーカルもいい味を出している、説得力がある
★★★★☆

7 Rondé Naina
かなりアラブ音階、歌いまわしが民謡的
ボーカルライン、歌い方が伝統音楽の影響が強い
ボーカルが上手いな、ヌスラットのような熱を感じる
ヌスラットのような天まで突き抜ける圧倒感には一歩劣るものの、バンドサウンドの熱量がそれを補う
★★★★

8 AB To Jaag
また雰囲気が変わる、後半のリズムは多彩
とはいえ、無暗と音数を増やしすぎず、基本的なバンド構成
ただ、ドラムとパーカッションはいるな、ビッグバンドまではいかないが、ドラムと別にパーカッションはいる
節回しが心地よい
★★★★

9 Aleph
アルペジオから、少し落ちついた雰囲気
なんだろう、A.Rラフマンのソロにも近い
自然、水のような、溶け込むような心地よさ
とはいえ退屈なわけではない
★★★★

10 Bulleya (Reprised)
ふたたび一曲目のメロディに、心地よく流れていく
もう少し落ちついたアレンジというか、ドローン音がなり、酩酊感が強調されている
飲み会の始まりと終わりの差というか
力が抜けて酩酊感が増している
★★★☆

全体評価
★★★★☆
名盤のオーラがある
リリースされた1999年という時代性をプロダクションで一部感じはするものの、古臭さはない
メロディの説得力、リズムのシンプルさ、音楽の力強さが心を打つ
今聴くと多少シンプルに過ぎる感じもあるが、スピーカーで大音量で聴いたり、ドライブには向く
ヘッドホンで集中して聴くとだいぶ音数は少なく、2020年の「いろいろな音楽を経てたどり着いた情報量」に比べるとやや薄く感じるが、そもそも伝統音楽の歴史は数百年単位であり、数十年のトレンドで左右されないルーツの力強さ、心地よさがある
人が何を心地よいと感じるか、どういう反復や音色で酩酊するかはそう変わらない
そうした音の神秘への理解が深い音楽
とはいえ、若々しいロックなエネルギーもあり、メディテーションミュージックやBGM、アンビエントにとどまっていない
名盤

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン


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