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Damian Hamada's Creatures / 大聖典『旧約魔界聖書』第一章・第二章

「DHC」の意味を変えてしまったダミアン浜田閣下による新バンド、ダミアンハマダズクリーチャーズ。初期聖飢魔Ⅱの音楽性と世界観を作り上げた閣下によるまさかの完全新作によるメジャーデビュー作です。メタル愛に満ち溢れるセンスあふれる楽曲が並びメタラー感涙の出来。若手の女声ボーカルで今どきのJ-Metalシーンのトレンドにも乗っているセンスもさすがです。正統派メタルが好きな方にはお勧め。また、初期聖飢魔Ⅱが好きな方は避けて通れない1枚。2020年愛聴盤の一枚。

ダミアン浜田って、メタル界における大瀧詠一というか、欧米のメタルをかなりマニアックに研究していろいろなモチーフを組み入れながら構築している印象があります。きめ細かいマニアによるマニアのための音楽。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

01.聖詠
パイプオルガン的な音とクワイア、いや、電子加工されたクワイアか
ポリフォニーで声が絡み合う、「いかにも」なオープニング
オーケストラ版のドラクエ交響曲というか
ただ、そこにもダミアン浜田陛下らしさは出てくる
なんというかわかりやすいおどろおどろしさというか
主メロとか曲の構造がはっきりしてるんだな
オープニング
★★★

02.Babel
リードトラックでMVも作られた曲、ツインリードのメロディアスなリフからバンドサウンドへ
ボーカルが入ってくる、改めて聴いても若々しくてよく伸びるいい声だ
高音でもあまり声が細くならない、これからカリスマ性をどこまで身に着けられるだろう
演奏は金属恵比寿、後藤マスヒロのドラム
バックの演奏もじっくりと芯が通っている、さすが
間奏、メロディアス
いわゆる70年代、80年代HR/HMへのオマージュなのだが、聖飢魔Ⅱらしさというか、ダミアン浜田らしさというものがある
初期Loudness(日本語の頃)にも近いのかなぁ、いわゆるジャパメタらしさというか
ジャパメタってやっぱり独自の様式美がある、メロディ展開とか、日本語であるが故なのか
★★★★

03.Heaven to Hell
アカペラコーラスからバンドが入ってくる
リズムが変化してリフも発展する
と思ったらミドルテンポに、この辺りのリズムチェンジ感はプログレ的
歌メロが日本的、丁寧に展開していく
ベースラインがキャッチー
なんだろうなぁ、一つ一つのメロディが分かりやすい、各楽器パートというか
ちょうど良い偶有性、整理されすぎていて退屈になるラインと一度に把握できるメロディ量のちょうど良いバランスというか
本当に「教典」的ではある、なんというかメタルの教科書的な感じがするんだよね
こうすればメタル感のあるリフですよ、ここでこうリズムを変えるとフックが出ますよ、ここでこうメロディを展開させるとつながりを作りつつ展開感が出ますよ、的な
教師という職業にあったから、ではなく、初期聖飢魔Ⅱからそう
なんというか、勉強になる感がある、わかりやすいというのをもっと分解するとそういうことかな
ピアノのアウトロ
★★★★

04.Running like a Tiger
こちらも分かりやすくコンパクトなツインギターのリフから
リフが展開する、ああ、リフとかメロディが比較的一つのメロディが短いんだよな
そういう短いメロディを組み合わせて長いメロディを作っていくというか
短いメロディの歯切れがいい、この「歯切れの良さ」というのはダミアン浜田の特長かもしれない
このボーカルも歯切れがいい、高音までスパンと延ばすがビブラートはあまりないなぁ
かといってボカロのような機械的な感じはなく、力強さはある、面白いね
ボーカルのルックスもいい、これでめちゃくちゃアイドル的だったらむしろKawaiiMetalとか嬢メタルとかに見られる可能性もあるがシナジーのキンバリーギスを彷彿させるカリスマ性あるルックスなのがいい
バックバンドは金属恵比寿だし、オーラがありますね
基本にあるのはリッチーブラックモア、レインボーなのかな、リフ構成とか
個人的には同じだからなぁ、リッチーブラックモアがやはり原点にあるので惹かれるのかも
最後、ボーカルが上がるところ、ああ、わかるわかる、やりたくなるよね笑
★★★★

05.三枚の照魔鏡
あふれるギターアルペジオからのボーカル、ボーカルメロディは歌謡曲的というか
ハードロックと歌謡曲の融合がジャパニーズメタルという発明だったのかもしれない
まぁ、このアレンジありきのメロディなので(リフト絡み合う)、歌謡曲の中でもそういう「楽器フレーズと絡み合うことで魅力的なメロディ」の一群だけれど
そういうのあるじゃないですか、プレイバックPt2とか。
おおー、ノッてるねぇ、バンドが乗ってきた
(あれ、なんかヘッドホンの音がクリアになった。。。これは音源とは関係ないな、接触かな)
歯切れがいい、細かいブレイクとユニゾンが入り、そこと各楽器のポリフォニーパートが切り替わるというか
絡み合いとユニゾンがけっこう細かく、分かりやすく出てくるのもこの人の特長かも
★★★★☆

06.Lady into Devil
ギターリフ、なんだろう、キャッチーなリフなんだよなぁ
いまどき「キャッチーなリフ」ってなかなか感じないんだけど、リフだけで「弾いてみたい」と思う魅力がある
それはシンプルだからだろうなぁ、極端にテクニカルではない
まぁ、一言で言えばリッチーブラックモア的
だんだんこの声、サウンドになじんできた、やはり曲のクオリティは高い
メタル愛とアイデア(いや、悪魔だからメタル憎か)が詰まっている
間奏とかボーカルとか、さまざまなパーツが絡み合っていく、この絡み合って熱を帯びていく、一つの形が作り出されていく感覚がいい
「女が悪魔に受胎する瞬間」とか、なかなかな歌詞ですね
たまらん
終わると思わせて再度走り出す、おおー、この曲はいいね
★★★★★

07.Sacrifice of Love~主よ、人の欲望の悲しみよ
スターゲイザー系のミドルテンポでヘヴィなリフ、クワイアが入ってくる
分かりやすいファンタジー感、まぁ、「悪魔」だし、そもそも分かりやすいんだよね
一つ一つは分かりやすいのに、全体としてみると要素過剰、というのが聖飢魔Ⅱであり、日本的だなぁと思う
なんというかどんどん細部にこだわっていくというか、日本製品のイメージと同じ
やはりメタルというのはグローバルな市場がある音楽だから、その中で各国の市場の色というのがある
ドイツはかっちりしている(小節ごとにメロディが完結し、曖昧なコードで終わることも少ない)
フィンランドは転調感が多い
UKは湿り気がある(コード進行はややサイケちょっとリバーブがかっているのもあるな)
USはカラッとしている(バンドが多いのでUSらしさを言語化するのはけっこう大変だけれど、なんとなく共通するものがある)
それと同じで日本の特長を言うなら、きめ細かさなのかもしれない、アレンジの細部とか
やはりダミアン浜田の曲もそういう細かいところの完成度が高いなぁ
大きいところは割とざっくりしているんだけど、細かく聞いて行っても細部まで考えられているというか。建築的とでもいうのか、部屋の四隅がきちんと合っていてタイルもずれていませんよ、みたいな
この人(悪魔)は大枠のざっくりしたところを作るセンスもいいのだけれど
★★★★

01.Angel of Darkness
ここから第二章へ
アコギのアルペジオとコーラス、バンドが入ってくる
これはリードトラックでMVにもなってたな
民謡的なメロディ、そうそう、歌謡曲と言ったが、民謡的でもある
まぁ、そこはけっこうシームレスなのかもね、日本的なメロディというか
なお、民謡も西洋音楽だからね、明治~大正に作られた曲が多い、西洋音楽を日本人なりに解釈した、というか
だから、イギリスのロックにちか、あれもアメリカの黒人音楽(ブルース)をイギリス人が解釈して生まれたものだから
絵で言えば、日本の浮世絵をヨーロッパの画家が解釈したのが印象派だし
そういう「異文化を自分たちで解釈する」ことで新しいものが生まれることは多い
伝統的なもの、血肉となっているものに対して新しい刺激を得て客観性を得られるのかな
従来の型から異なる視点を持って脱却を図り、そこから一つ新しい型が生まれていく
とはいえ、価値観とか好みがすべて変わることはないからね、結局作っている人の審美眼とか基準を培ったものは伝統的な環境だから
なので、ハイブリッドのものが生まれる
日本のメタル、というのもそういうもので、70年代HRを日本人、歌謡曲・民謡土壌の人たちが解釈したわけだ
GSもそうだけれどね、エレキブームからのビートルズを代表とするブリティッシュインベンションを解釈して生まれたもの
だいぶ話がそれた、曲が展開している、歌メロが美麗になっている
この曲もさまざまな要素、アイデアが詰まっているなぁ
プログレ感もある、プログレもジャパニーズプログレというジャンルがあり同じような、、、
おっと、終曲
★★★★☆、

02.Deepest Red
リフから、西部劇のようなリズム
えーと、筋少のサボテンのバントラインのリズム、、、といっても通じないか
まぁ聞いてくれた方が早い
これは歌謡曲的なメロディが強いなぁ、そこに西部劇的なリズム、なんだろう、メイデンにもあるよね
ダンダカダンダカダンダカダンダカ、進軍的
ラントゥザヒルズもこれか、あの曲ほどアップテンポではないけれど
あれクライブバーの特長なのかもなぁ、ニコはあまり多用しない気がする
歌メロ主体、ボーカルが前面に出てくる曲
とはいえ、楽器隊と絡み合う魅力は健在
クワイアによる大げさなリフ、ユニゾンでの終曲
西洋音楽を対象化してみているというのを書いたが、だからカリカチュアされた、ディフォルメされているんだよな
★★★★

03.新月のメヌエット
ワルツ調、なんだか「殺意楽しんでいる」とか言ってるな
ホラー的な、物騒な歌詞だ、なんというか見世物感、エンタメ感があるよねこの人の歌詞
人間椅子の鈴木さんもそうだけど、残虐なシーンなんだけどあまりおどろおどろしさはないというか
鬼滅の刃みたいな感じかな、グロテスクなシーンが多いけど「怖がらせよう」として描いてはいないじゃない
70年代HRと荘厳なクラシックを要素として抽出して、「分かりやすく」しているのが特徴なのかも
もちろん、血肉にはなっていないわけ、生まれた環境が違うし専門教育を受けていないから、それを自分なりに解釈して「こんな感じ」で表現する
その「こんな感じ」は当然解像度が荒くなるので、ディフォルメされて分かりやすくなる
その感覚がいいんだろうな、ディフォルメで持ってくるところが「ああ、あるある!」的なところ
ダミアン浜田陛下のハードロックや西洋クラシック音楽への視点が良いのだろう
「ああ、あるある! こういうフレーズ気持ちいいの分かる!」といったところか
大瀧詠一はポップスを研究していたが、あれに近いよね、いろいろなHRを研究している感じが強い
この曲は歌謡曲テイストが強いが間奏はハードロック、70年代メタル色強め
こういうメロディラインはあまり他の国からは出てこない印象だなぁ、特にメタル系だと
いや、イタリアとか北欧にはあるかもな、うーん
お、場面が変わったギター一本のアルペジオで終曲
★★★★

04.女神と死神
そのままギターのアルペジオからスタート、コーラスが入ってくる
ギターリフが入ってくる、短いフレーズの反復、かっこいい
ボーカルメロディが入ってくる、歌謡曲的、これも一つのミクスチャー
私が越境メタル、各国のメタルが好きなのはミクスチャー感があるからだ
サビはやや洋楽的だな、ハイトーンを伸ばすタイプ、メイデン(ブルース・ディッキンソン)が歌いそう
コーラスでのベースの刻みがスティーブハリスっぽいからそう感じるのかな
この人の作るギターフレーズは「歌って」るよなぁ
なんというか人の声っぽいんだよね、人も歌えるフレーズということもあるのだろうけれど
★★★★

05.魔皇女降臨~Birth of Death, Death of Birth
ミドルテンポでリフがスタート、メロディアスなギターが切り込んでくる
レインボー、スコーピオンズ、サバス、等々
さまざまな要素を感じさせつつかっちりとメロディとフレーズが完結していく
お、テンポアップしてメイデン感が
そういう「○○らしさ」を感じさせつつ、全体として見れば「聖飢魔Ⅱっぽい」=ダミアン浜田陛下の世界になっている。
インスト曲、おおー、ハモンドオルガン(の音色)のソロが入ってきた
(やる気があるときの)ディープパープル的な、いや、このコンパクトさはレインボーか
ちなみにたぶんKISSらしさもあるのだろうけれど、KISSあんまり聞いていないから私には分からない
なんだろうなぁ、特にインストだとゲーム音楽感も出てきてもいいはずだがそれはあまり感じない
多分、ルーツとか影響は違うんだけど、やはりきちんとメタル感とか芯があるのは演奏力と作曲力なんだろう
ゲームミュージックを下に見ているわけではなく、ゲームミュージックって「ゲームの範疇から他の音楽ジャンルを取り込んだ」という印象を受けるんだよね、実際にはBGMという制約があるからだろうけれど、音ゲーは別だけど
そういうのとはやはり根本的に目指す機能が違うんだろう
★★★★

06.Which Do You Like?
アップテンポの曲、ボーカルは歌謡曲、というかアニソン的な分かりやすさかな
アニソンといっても80年代、サイレントヴォイスとかダンバインとぶとかあのあたりね
ハードロックボーカリストが歌ってるからほとんとハードロックなんだけどさ
リズムがヘヴィなパートと疾走パートが交互に出てくる
この曲はバンドも勢いがいいなぁ、展開が凝っている
ボーカルフレーズにギターの装飾フレーズが絡みついてくる
「カタルシスに溺れさせる」ふむ
声はけっこう前面に出ているが言葉はそこまで前面に出てきていない
勢いよく疾走しつつユニゾンやブレイクが入る、こういうストップアンドゴーでテンションを上げるのは匠の技、流石地獄の大魔王
リッチーブラックモア的なリフ、レインボー的というか
ツーバス、ハイトーンシャウトで完結
こういうのに弱いなぁ
★★★★★

全体評価
★★★★★
期待を裏切らない、期待を上回る出来なんじゃないでしょうか
NWOTHM(TはTraditional)の流れの中においても曲のクオリティが高い方だと思う
何より、ジャパニーズメタルならではの日本的メロディとHR/HMのミクスチャー感覚があるのは特異性
陰陽座とかMary's Bloodとかunlucky morpheusとかにも近いのかな、そのあたりまではあまりチェックしていないから分からないけれど
やはりダミアン浜田だから聞いてみよう、というのはあるなぁ、出典が共感しやすいから
歌メロは90年代、00年代のジャパニーズメタル、まぁ一部アニソンと表裏一体な部分もあるのだけれど、そういう時代も通過してきた感じはする、聖飢魔Ⅱのデビュー当時と比べるとね(照魔鏡は未聴なのでダミアン浜田陛下の曲体験としては初期聖飢魔Ⅱ→DHCなわけ)
ちょっと距離があるというか、冷静にメタルを分析して再構築したようなマニアの視点も感じる、これは昔から
大瀧詠一、ナイアガラを聴くとポップスをめちゃくちゃ研究してる、マニアックな感じがするけれど、ダミアン浜田はメタルマニアだと思う、まぁ、NWOTHMの人たちはみんなそういうマニアなんだけど、マニアによるマニアのための音楽
現代で活躍するバンドである以上、現代性も取り入れているわけだが(それが00年代のアニソンの影響も感じる歌メロに出ているのだろう)
いいものを聴かせていただきました、帰還(再臨?)おめでとうございます
次があるのかはわかりませんが、じっくりと作曲していただいてまた次の聖典を布教いただきたい

ヒアリング環境
朝・家・ヘッドホン

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