見出し画像

Pain Of Salvation ‎/ Panther

1984年結成(当時11歳)、1997年デビューのスウェーデン出身のプログレッシブメタルバンドです。メタル色はだいぶ薄めで現代プログレッシブ・ロック色が強い。スティーブン・ウィルソンとか、いわゆる「インサイド・アウト」レーベルの色が強い思索的な音作りです。もうちょっと激情というか、北欧メタルらしいアグレッシブな音像を期待していたので肩透かし。後半になるともっとレイドバックした感じが強まり、音も実験的になっていきます。8曲目、9曲目あたりに顕著。いろいろ挑戦的なアイデアも盛り込まれた作風。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Accelerator 05:31
変拍子と電子音、シンセのリフ
ベースが刻む、ポリリズム、加工されたボーカルが入ってくる
呻くような、どこか浮遊感がある、音数は少なめで余白がある
コード進行、テンポ、ボーカルの歌い方など緊迫感はある
音数が減りリズムがなくなり、ボーカルがメロディを続ける
水中でもがくような、変拍子感が強まる
リズムが戻ってくる、コーラス、小節を超えてボーカルフレーズが続く
絡み合うリズム、今のプログレメタル的なリズム、組み合わせ、Hakenにもこういう曲があったな
あまりテクニカルなプレイは出てこない、それよりは浮遊する音、音が飛び回る
音の雰囲気、音響そのものにこだわりがある感じ
ボーカルのメロディや歌い方はしっかりしていて歌モノとしての存在感はある
リズムは複雑というかわかりづらいが全体としては一定のアグレッションがあり構造も分かりやすい曲
ギターの音はほとんど出てこない、この後ろで響いているシンセのような音の塊はギターなのだろうか
シンセギターか
ディストーションが効いた、メタル的なギターサウンドはない
アグレッションはリズムとボーカルの攻撃性に依っている
★★★☆

2.Unfuture 06:46
ブルージーなアコースティックギターからスタート
そのまま引き摺るようなヘヴィなリフへ
音の塊的な響き、これがギターか、ザクザクとしたエッジよりは音の塊感が強い音作りのようだ
浮遊するような音でアルペジオが入る、ベースとギターが混然一体となる
ニューコア、BMTHにも近い感じを目指しているのかな
ささやくようなパート、音像はやや静けさが強い
ジャズドラムのような雰囲気もある叩き方
ボーカルの熱量と音程が上がっていき、クライマックスの後ヘヴィなリフへ
ただ、ギターの音がなんというか塊、音のうねり的なので、バッキング全体がドローン音のように聞こえる
コードの移動はあるのでドローンでもないのだが、、、メロディがボーカルメロディしかない
リズムと、あとはどんよりとした音の塊、90年代、グランジの出始めのころ「なんだか暗鬱でメロディがすくないなぁ」と思った感じの音像
もうちょっと複数のメロディが絡み合う方が好みなんだよなぁ、、、
後半、ディストーションというかギターの音が変わる
なるほど、音響的な変化で表情をつけているのか
うーん、ヘヴィなんだけどグルーヴ感もそこまで強くない、低音が強調されているがあまり低音も迫力がない
メロディそのものは緊迫感もあって悪くないのだけれど
★★★

3.Restless Boy 03:34
こちらも変拍子というか少し癖のあるリズム、そこにキーボードフレーズが乗る
加工された声、これLeprousと同じように「プログレメタル」の範疇ではないなぁ
James Blakeとかまで極端ではないが、なんというかメタル的な煽情性のあるボーカルと多少の攻撃性をリズムに残しつつ、音像そのものはゆらぐような、アンビエント的な
お、リズムが変わった、インダストリアルなユニゾンのビート、ナインインチネイルズ的な
と思ったら元に戻った、アルペジオが入る
攻撃性のあるパート、ビートが所々に出てくる、ただ、ウーン
メロディが弱い、リズムの心地よさで売るなら今一つ音響が良くない
★★☆

4.Wait 07:04
ピアノフレーズ、ピアノのアルペジオからスタート
長尺曲か、どういう展開で行くのだろう
ピアノにボーカルが乗る、ピアノとボーカルのメロディは少し反復のタイミングがずれる
ズレ感は外せないらしい
アルペジオにガットギターの響きが混じる、哀愁を感じるギターフレーズ、フラメンコ的なフレーズ
これは今までの曲の中では一番好みかも
リズムが入ってくる、やはり変拍子というかずれた感じはある
ピアノ、ギター、ボーカル、ドラムがそれぞれ絡み合う、ボーカルはゆったりと音程とテンションを上昇させていく
適度に退屈、心地よく耳障りな展開はないのでBGMに適している
★★★

5.Keen To A Fault 06:01
繰り返し、反復するメロディ、クラウトロック的(アシュランテンプルとか)
繰り返しだとマニュエルゴッチングを思い出すのは語彙が少ないかもな
マイクオールドフィールドでもいい、というかテクノでもよくありますよねOrbitalとか
この曲はかなりプログレに接近した音像、メタル色は薄く、ネオプログレ
つぶやくような声が入ってくる、これはキーボードとアコギの反復フレーズか
ベースの音がブリブリ言い始めた、イエス的
フレーズの反復はシンセのアルペジエーターかな
この曲の音作りはこなれている、ただ、アルバムのジャケットはSF的、映画的だけれど何かコンセプトアルバムなのかな
ブラックパンサーを連想してしまうのだが、関係ないのだろうか
★★★★

6.Fur 01:34
ギターだがエフェクトがかかっていてハープというかアフリカの楽器のように聞こえる
なんて言ったっけ、ビジュアルは出てくるのだが
アフリカンハープ、ママドゥ・ジャバテとかが著名な奏者の
まぁ、音色がそうなだけで音程は西洋音程
民俗的な響きがする、4~6と音がレイドバックしてるな
インタールード
★★★

7.Panther 04:11
SF的な音が戻ってきた、浮遊する電子音
加工されたリズムが鳴る、ボーカルが入ってくる、ヒップホップ的な世界
ベテランだと思うけどもともとこういう音だったのか、もうちょっとわかりやすいプログレメタルだった気がするが、、、
あなり音像が変わったのだろうか、このアルバムからなのか、じわじわ変化してきたのか
これは先行MVも出ていた曲
こういう路線では一番フックはある
ギターの音もきちんと聞こえるが、だいぶ切り刻まれている
この曲はメロディが耳に残る、単純にメロディがいいんだな
★★★☆

8.Species 05:18
アコギの音、考え事に浸る、シタール的な音階
ささやくようなボーカルが入ってくる、後半はけっこうプログレ感があるというかいろいろな音像に拡張していく
穏やかに曲が続く、低音にドローン音がある
ややインド的、ビートルズが解釈したインド、というか、西洋的なインドだが
歌いまわしなどはぜんぜんインド感はない
ただ、酩酊するような音階
じわじわとボーカルの熱量が上がっていく
ギターが入ってきてミドルテンポでヘヴィなパートへ
70年代ロック的な音像と言えば言えるかも、Zeppとか
ボーカルは超絶シャウトはなくじっくりと上がっていく
★★★☆

9.Icon 13:30
13分半の大曲か、どんな聞かせ方をするのだろう
波の音に重なるピアノ、弦楽器が入ってくる、ベースも入る
ピアノは抒情的なマイナー調のメロディ、少し優雅なメロディ
初めて北欧感を感じた
と思ったらノイズが入ってくる、ホワイトノイズ、少しづつそれが音程を形作る
ギターも入ってきてユニゾンする
リズムも入ってくる、打ち鳴らされるリズム
ドゥーム的な、重めな音像、そのままリフになるがノイズから引き継がれた音階はなり続けている
スロウでヘヴィなリフ、何かノシノシと大きなものが歩いていくような
リフが去り、ノイズ音階が残ったところにボーカルが入ってくる
ゆるやかな北欧プログレといった音像、ちょっと聞いている途中ながらあまりにイメージと違う音像なので調べてみたら、2010年ぐらいからこの音像らしい、70年代プログレに回帰気味というか
あと、中心人物が2002年から2004年までフラワーキングスに参加していたそうな、知らなかった、、、
確かにこの曲はフラワーキングスにも通じる感じはあるかも
ただ、各楽器隊、たとえばギターとキーボードとベースのハーモニーが絡み合うみたいな感じが少ない
そのあたりはモダンというか、90年代のグランジオルタナというか、、、
むしろJames Blakeとか今の音像を意識してはいるのだろうけれど
お、ギターソロ、かなりメロディを弾いている、この曲は普通のロックバラードだなぁ
メロディ自体は良い、ただ、このアルバム全体としてどういう音楽性なんだろう、ちょっとよくわからない
レイドバック、王道ロックというには実験的な音も多いし
なんというか、ジョンフルシアンテのソロ作みたいな「好きにやってみました」感はあるんだけど
それはメインバンドがある人がソロで探求するからああなるのであって、単に興味の赴くままに「いいと思おう曲」をやった感がするのはどうなのだろう
それなりにキャリアも知名度もあるバンドなのだけれど、、、すでにこの路線で成功しているのだろうか
少なくとも音源には「メタル」要素はない、メタルじゃないなら何か、と言われると難しい
いろいろな要素が中途半端に感じてしまうが、ひとつ抜けていて流石と思うのはメロディセンスとボーカル力かな
この2つがあるから、良い曲は良い、この曲はメロディは良い
最後、なんだかよくわからないパート、不協和音的なパートを引っ張るのはどうかと思うが、、、
★★★☆

全体評価
★★★
まさかの低評価、うーん、スウェーデンのプログレメタルでそこそこ知名度もあるから期待していたのだけれど
先行MVをいくつかみて「よくわからない音像だなぁ」とは思っていたんだよね、残念
別にメタルじゃないならそれでいいのだけれど焦点が定まっていないというか
音がどんよりとしていて、どこを聴きどころにすればいいのか分からない
4~5あたりの反復フレーズはドイツの70年代プログレや80年代、90年代のテクノ的で面白かった
うーん、全体として実験的、インサイドアウトかぁ、スティーブンウィルソンとかにも近い流れなのかな
残念ながら聞きどころが分からなかった

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?