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Bab L'Bluz / Nayda!

Peter Gabriel主宰Real Worldレーベルから期待の新人。ワールドミュージックチャートで軒並み高評価なので聴いてみました。自国のルーツミュージックを掘り下げつつ60年代、70年代の初期ロックと組み合わせ、現代のセンスで料理しているのが新鮮。前知識なしで聴いてみて「音階がオリエンタルだけどトルコ程節回しが強くないし、北アフリカのバンドかな」と思ったら当たりました。伝統音楽の解釈や演奏がナチュラルで自分たちの中に染み付いたものをきちんと楽曲に昇華しています。やや日本人にもなじみがあるメロディラインが出てくるのも興味深い。北アフリカ~トルコ~中央アジア~日本は音楽でつながっています。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Gnawa Beat
盆踊り的な感じもする楽器のメロディで始まる
ペンタトニックの反復、祭囃子のようなリズム
自然体なボーカルが入ってくる
女声のメインボーカルとコーラスが交互に合いの手のように
この辺りの構成も祭囃子に近い
ギターが単音の盆踊り的リフを奏でる
ところどころテンポアップしてトレモロ的なリフになる
ギターのリズムが変わり、ボーカルが合唱に
不思議な感じだが心地よい
グナワとあるが、どこだろう、アフリカかオセアニアか、ちょっと忘れた
ただ、中央アジアとは違う音楽ながらどこか懐かしい、日本のルーツミュージックに通じている
★★★★☆

2.Ila Mata
Tinariwenのようなギター単音のエキゾチックな反復リフに深めの音のパーカッション
ゆっくりした、タブラのような響く音、金属感は薄いので木製の打楽器だろう
反復ギターリフの上にボーカルが乗る
ちょっとアラブ的なメロディー? やや馴染みがある
イエメンのアーティストでこういうメロディを聴いたような気がする
あのあたりの音階なのだろうか
それほど馴染みはないがルーツに根差している感じがする、心地よい音階
ボーカルが自然体でうまい
間奏部はギター、トルコのサイケロックバンド群のようにも聞こえる
ただ、メロディーの癖はアナドルロックほど強くない、ボーカルの音程移動やこぶし回しは少ない
ベースがけっこう遊んでいる
★★★☆

3.El Gamra
急に60年代UKロック的なリズムに、ストーンズとか
と思ったらギターフレーズはTinariwen的、2~3音を単音で反復するリフ
基本はペンタトニックだが、組み合わせ方がブルースとは違う
ボーカルの音程はときどき半音階か1/4音階が出てくる、この辺りがアラブ的
アフリカ音楽にもあるのかもしれないが、アフリカと言っても広いし
北アフリカの方は中央アジア音楽と同じ、アラブ・マグレブ音楽圏
そっちの方なのだろうか
ガレージロックっぽさもありつつドラムはパーカッションが複合的に混じっている
ボーカルとコーラスの掛け合い、合唱、この辺りはアフロビート的でもある
★★★★

4.Glibi
引っ掛かりのあるリズムとメロディ、親指ドラム的な
マリのママドゥ・ジャバテとか、ちょっと日本人とは違うリズムの拍
ところどころ60年代UKロックのテイストを感じる、ブルースロックというか
一瞬そうした西洋ロック的なクリシェが入るのが面白い、コーラスに行く前のブリッジとか
すぐアラブ・アフリカ世界の音階に戻っていく
ギターの音作りはガレージロック的だがフレーズは独特
クルアンビンみたいな
笛の音が入ってくる、横笛のような
尺八のような音も入ってくる
中央アジア~アフリカの管楽器、トランペットのような金属音はない
★★★☆

5.Oudelali
鳴り響くリズム、そういえばこういうリズムをどう表現したらよいのだろう
レゲエでもないし、ガムランを遅くした感じ?
よく聞く感じではあるのだが表現できる言葉を知らない
アフリカン・リズム
ベースがグルーヴを刻む
パーカッションの鳴り物が一定のリズムを刻んでいる
祭囃子のリズムと言えば同じかもしれないが、ベースの刻みが違う
ベースがテンポアップして空気を変えた後、また元に戻る
ボーカルが祝祭的に歌いながらフェードアウト
★★★☆

6.Waydelel
軽快なリズム、アラブ的な笛の音が耳に残るメロディのリフを弾く
スキャットが入ってくる、女声と男声のかけあい
リズムはロック、これはクラブとかでも流れるリズムだ
Vampire Weekendにもこんな感じのリズムがあった気がする
ボーカルにはロック的語法はあまり感じない、自然体で歌っている
こぶし回しが多少あるがトルコほどではない、ライとか、あのあたりなのだろうか
そういえばモロッコのクラブミュージックも独特の質感があった、砂漠の中を進む隊商のようなリズム
笛の音が響く、蛇使いのようだがそこまで複雑でエキゾチックではない
基本はペンタトニックをなぞっているのでブルースハープ的でもある
ドラムも音色はロック的だがリズムパターンがアフリカン
ボーカルが自由に舞い踊り、キーボードが合いの手を入れる
キーボードではなく笛の音だろうか
★★★★

7.Africa Manayo
軽快なリズム、ベースがグルーヴを刻む
パーカッションが強め、ちょっとガムラン的な響きが後ろの方でする、竹をたたいているのだろうか
笛の音が舞い踊り、ボーカルに華を添える
女声メインボーカルと女性コーラス(合唱)と一部男声ボーカル
男声は楽器隊の誰かなのだろうか
笛の音が適所適所で入ってくる
やはり日本の祭囃子的な繰り返し、ベースのグルーヴは違う
じゃがたらのOttoさんがやりたかったのはこういう音楽だったのだろうか
独独の太いキーボードの音が出てくる、フェラ・クティがソロで弾き倒していたような音
アフロビートからの影響も感じる
★★★★☆

8.Yemma
アラビックで幽玄な世界観から
スローで引っ掛かるようなリズムに、妖艶な女声ボーカルが乗る
シタールのような、やや緩んだ弦楽器の音がする
ドローン的な音が続き、女声の節回しが続く
インド音楽的、即興的にも感じる、構成はほぼ同じ
インド古典音楽やカッワーリーほど強い節回しではないが、ドローン音がありその上でボーカルが即興的に続く
コーラスが合いの手を入れる
ただ、リズムはロック的で安定している、タブラの連打のようなものはない
酩酊感あり
★★★☆

9.El Watane
アフリカ色強め、とはいえ音はロックバンドのフォーマットを感じる
ドラム、ベース、ギター、ボーカル
ボーカルは女声と男声
パーカッションもある、だんだん前に出てくる
アフロビート的なリズム、いろいろな打楽器が混じりあっている
弦楽器が出てきて民族色が増す
ロックバンドフォーマットに戻り男声ボーカル主体
途中からパーカッションや弦楽器、なんだろうこれは二胡のようなシンプルな音階
そしてコーラスパートへ
欧州と中近東とアフリカの音楽がクロッシングしている感じ
ギターの単音リフと弦楽器がユニゾン、ドラムとパーカッションが残り終曲
★★★★

10.Bab L'Bluz
バンド名のタイトルトラック
スローロックバラードのリズム、60年代のロックテイスト、ハーモニー
歌いまわしはエキゾチック
ベースは音色、弾き方はロック的だがフレーズはボーカルをなぞる
リズムはドラムに加えてパーカッションも強め、アフロビート
コーラスが入ってくる
ギターはロック、あるいはサーフインスト(エレキ)的な音色
複合的なリズムが絡み合う、バンド名ということはバンドのコンセプト的な曲なのかもしれない
ギターソロに入る前は完全にロック、ギターソロもロック的
欧米ロック・アフリカ・中近東のリズム・音階が融合している
あまり欧州ルーツミュージックの影響は感じない、欧米ロックは黒人音楽が米国で変形し
それが英国でロック化して米国に逆輸入されたものだからルーツは近いのかもしれない
★★★★

全体評価
★★★★☆
掘り出しモノ、いいバンド
聴いていて楽しいし熱量もある
いろいろな音楽圏の影響を感じるが、自然に昇華している
日本人にもなじみがある感じなのはルーツが近いのだろうか
心を動かされる音楽

リスニング環境
昼・家・スピーカー

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