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Spirit Adrift ‎/ Enlightened In Eternity

Spirit Adriftは2015年結成、2016年デビューのUS,アリゾナ州フェニックスのドゥームメタルバンドです。ドゥームとカテゴライズされていますが音像的にはかなり正統派HMというか、重さと引きずる感じはあるもののけっこう勇壮でファンタジックです。ツインリードはちょっとメイデンっぽさもあったり。演奏は生々しく、たとえばツインリードソロだとバッキングが薄くなる、とか、あまり多重録音をせずライブ感を重視している感じがあります。この辺りは80年代メタルではなく今どきのメタルっぽいですね。どの曲もトラディショナルなメタルらしさがありながら若手バンドらしいフレッシュさもあり、聴いていて心地よいアルバムです。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Ride Into The Light 4:42
ギターの反復リフ、二本のギターが絡み合い遠くから近づいてくる
ドラムが入ってくる、ドラマティックな開幕
ドラムが止み、刻みのリフ、ヘヴィネスさが強調される
ミドルテンポに、ボーカルが入ってくる、パワーメタルタイプのボーカル
力強くミドルテンポ、BPM変わらずテンポが上がる
多少エピックなメロディだが派手なクワイアコーラスはなし、メロディも武骨な感じ
ゴツゴツした感じがする、ギターの刻みやドラムの音質もどちらかと言えば武骨
ボーカルはそこまで前面に出てこない、バンドサウンドの一部、歌メロ主体ではなくバンドサウンド全体のバランスが優先されている
途中でギターリフから展開する、ダミアン浜田時代の聖飢魔Ⅱをちょっと感じさせる展開
派手ではないがリフの展開に妙なキャッチーさがある
ボーカルは美声でも技巧派でもないが雰囲気はある、何かしら暗黒的というか
★★★★

2.Astral Levitation 6:12
ミドルテンポのリフからスタート、リフづくり上手い
テンポは遅めだがねちっこい感じは薄く、ハキハキしているので軽快さも感じる
ギターリフからのメロディが耳に残る、ドゥームなのだろうか、無暗とメロディアスではないがきちんとメロディがある
サバス的なのかなぁ、オジーのように特徴的な声ではないが、ギターはヘヴィかつメロディアス
ベースもけっこううねっているし、ドラムはそれほど激走はしないがしっかり装飾は入れてくる
途中から疾走へ、おお、これは熱い展開
それほど音が歪んでいないというかけっこうオーガニックでビンテージな音だがリバーブ少なめでモダンな音作り
この辺りは懐古主義だけでない現代のバンドのプロダクションを感じる
途中でメイデン的なツインリード、メイデンよりもう少し古い感じかなぁ、個人的には昨年のTanithにも近いものを感じる
70年代UKハードロックをルーツにしながら今らしさも加えているというか。
Tanithよりは現役感、若々しさは感じる
★★★★☆

3.Cosmic Conquest 5:32
ベースのグルーブ、ベースとドラムがリズムを作る
そこにギターが入ってくる、これはいい始まり方
これはサバス感がある、歌い方がちょっとオジー的
パラノイドぐらいのスピード感か
パワーコードからメロディに切り替わるところがだんだん快感になってくる、面白いリフ
ツインリードのメロディ
間奏から終曲かと思わせて更なる展開、コーラスが入ってくる
ミドルテンポでリフとボーカルが絡み合い終曲
★★★★☆

4.Screaming From Beyond 6:21
ブルージーなギターフレーズ、揺れるようなリフ
カウントからドラムが入ってくる
ハードロック的なリフ、リフがいい
ミドルテンポでノリが良い、ブギ的
ギターフレーズとボーカルが絡み合う、ギターがメロディを奏でるとき、ダブルギターが両方メロディを奏でるものだから音が薄くなる、バッキングのリフを足さずギターが二本だけのようだ、ライブっぽい、Tanithもこのアレンジだったな
こういうライブ感があるアレンジは生々しくていい
バンドサウンドの気持ちよさがダイレクトにパッケージングされている
こういう録音技術は2020年の技術を感じる、「ライブ感」を出すというのはなかなか難しい
実際には一発録りしているわけではないだろう、スタジオで練られている感じがするし各楽器は別々に録音しているだろう、リズム感がかなりかっちりしている
引きずるようなリフ、ひっかくような重さがあるが美しいメロディ
★★★★

5.Harmony Of The Spheres 4:05
疾走曲、印象ががらりと変わる、Aces High的なメロディあるギターリフでの疾走
ただ、曲構成はメイデンに近い部分もあるがあまりメイデン感はないなぁ
もちろん好きではあるのだろうが、もっと様々なルーツを感じる
耳が慣れてきたのか、ボーカルがくっきりと浮き出してくる
ギターとボーカルのバランスが絶妙
ボーカルはグロールというわけではないのできちんと歌メロがある
ただ、ものすごくポップだったりハイトーンで押してくるわけでもない
ギターリフと絡み合って魅力を発揮する感じ、そのあたりはオジー時代のサバスに構成は近い
変拍子、リフが切り替わりテンポも変わる
★★★★

6.Battle High 4:03
ミドルテンポ、リフが入ってくる
ブルージーなギターソロ、からボーカルが入る
ヘヴィブルース的な曲、かと思いきやテンポチェンジして手数が増える
暗黒的な雰囲気を少し出しつつコード展開はキレイな和音
心地よいメロディ、適度に哀愁があるが明るさがある
★★★★☆

7.Stronger Than Your Pain 4:02
なめらかなリフ、スローテンポからテンポチェンジして少し走り気味に
どこかの時期のメタリカのようでもある、いつだろう、メタルジャスティスか
歌メロもややメタリカっぽい
ところどころシンリジィ的なツインリードが入ってくるところは個性的
★★★★

8.Reunited In The Void 10:48
ノイズ、ギターのフィードバック音がフェードインしてくる
かなりヘヴィなリフ、サバスの1stのような
スロウなリズムでボーカルが入ってくる、リフとボーカルが絡み合う、展開がゆったりしている、呪術的
引きずるようなリフにだんだんと熱がこもるボーカル
どことなく中世的なメロディ、ルーツミュージック的な、古めかしい和音ということか
何か寓話的、物語的なものを感じさせる
同じ反復フレーズの繰り返し、かなり長い曲だがむしろ曲がさまざまに展開するのではなく執拗に反復する
かなり反復を繰り返した後、少しテンポアップする、同じリフ、モチーフだがスピードが上がる
ほぼ一つのパターンで乗り切った、むしろ新鮮
中尺の曲では複雑な展開をするが、アルバム最後の大曲で反復をするとは意表を付いてくる
酩酊感がある
★★★★

全体評価
★★★★☆
70年代ハードロックの薫りを感じる、完成された音像
懐かしさを感じさせつつ先人たちのレガシーを研究しているであろう曲作りや、今どきの整理された音作りで現代性を出している
また、曲のエッジの立ち方はメタル寄り、きちんとメタル耳に訴えるアグレッションがある
ただ、ギター音はザクザク感よりヴィンテージ感は強め
とはいえ、ところどころツービートで疾走したり、スラッシュ/デスメタルを通過した形跡がある
時代を変える名盤ではないが、王道をまっすぐ進化させようと格闘した良質な作品
全体的に心地よいが、突出した曲があればもう一皮むけそう

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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