見出し画像

Soilwork ‎/ A Whisp Of The Atlantic

愛聴盤に選んだ1枚。これは驚きました。ソイルワークって昔から知っていましたが前作あたりでだいぶ垢抜けた印象。とはいえここまで素晴らしいバンドとは。これもEPだし、ジャケットはそんなに手が凝ってないし、軽い気持ちで聴き始めたらノックアウト。盛り上がりが凄い。大仰ではないのだけれどメロディとかパートの組み合わせ方に独自性があって胸が熱くなります。グロールも使うバンドなのでちょっとそこに慣れは必要ですが、正統派メタラーには広くおススメしたいバンド。

1995年結成、1998年デビューのスウェーデンのSoilwork、初期はメロデス的ながらだんだんクリーントーンを取り入れてメタルコア的になりつつ、だんだんプログレ色も強めています。今作はフルアルバムというよりはEP扱い。メインは16分半の大曲。EPといいつつ40分近いので、A面が大曲1曲、B面はシングル曲を集めた、みたいな作りですね。大曲がメインですが、他の曲もむしろ「アルバムコンセプト」という縛りがないからか単曲として強い。初聴の印象は「このバンド、こんなに良かったっけ?」という印象。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.A Whisp Of The Atlantic 16:31
波の音、ピアノの音が入ってくる、やや不協和音
そこからクリーントーンのギター、アルペジオ、ピアノと絡み合う
和音がクリアになり美しいメロディを奏でる
ところどころやや和音が崩れる
ドラムイン、ボーカルも入ってくる、中音域でクリーントーン、ゆるやかでプログレ的な音像、抒情的
ギターが入ってくる、ノイズ成分が増す
刻み感が強くなりヘヴィネスが強調される、ボーカルもグロウル気味になるがメロディはある
クリアトーンに戻りメロディアスなパートへ
ピアノが入ってくる、美醜、儚い音とゆがんだ音が交じり合う
クリアトーン、グロウル、ギター、サウンドレイヤーの足し引きでかなり展開していく、ここまでは同じメロディモチーフ
場面が変わる、よりリズミカルなパートへ、ドラムが四つ打ち的な、ボーカルも歯切れよくグロールを吐き出す
ややバイキングメタル的な、蛮勇なパート
ギターがメロディを奏でる、そこから展開してボーカルがメロディアスに
ちょっとVAI的なフレーズがギターで入る、無国籍というか、不思議な響きだが心地よい
全体としては和音は美しい、キラキラしたキーボードの音もところどこに入ってくる
ツーバスが激走し、じっくりと盛り上がるボーカルメロディ、コーラス
そこから激走のグロール、ブラックメタル的なパートへ
また美しいコーラスへ、この美醜の切り替えは極端だが流れるようにつながる、これはこのバンドの個性
グロウルパートもギターやキーボードのメロディは豊富で、音もやや丸めなので残虐性もありつつ美しさは消えない
そこから静謐なパートへ、管楽器も入ってくる、サックスだろうか
美しいピアノの旋律、そこからギターが入ってきてアグレッションが強いヘヴィパートへ
リフはサバス的なドゥーミーな響きから美しいツインリード
色々な要素が絡み合う、歌メロはドゥーム
ドゥームからのファンタジックなメロディへ、クリーントーンとグロウルがまじりあう
メタルのさまざまな要素をうまく組み合わせている、作編曲が上手い
各楽器隊はそれほどテクニックでは押してこない、全体のうねりがあるし、曲展開はこれだけ複雑でありながら自然に流れていく
スクリームが入り、勇壮というか盛り上がる、パワーメタル的な音像に
こういうスクリームをするとは
と思ったらプログレ的な音世界に、変拍子が入りやや無調の、フュージョン的なギター、Flower Kings辺りの
もちろんもっとエッジは立っているが
さらに展開してアップテンポ、ツービート、スラッシュリズムに美麗なコーラスが乗る、美麗なコーラスは主旋律
なんだこれは、凄いな
間奏前のコーラスとグロールが交互に出てくるパート
さらに速度が上がり、グロールながらメロディ感が増す
クライマックスから音圧が減り、民俗的なメロディ、ボーカルが中音域でメロディを紡ぐ
曲の出だしにあったパートに戻る、幻想的で穏やかなパート
音が止む、終曲したかと思ったらSEのつながりからピアノが音を奏でだす、ジャジーな、(フュージョングループの)Fourplayのような落ち着いた雰囲気のパートに、なんだこの落差は
どういう描写なのだろう、思い出をジャズが流れる酒場で語った、みたいな設定なのか
最後、1分半ほどジャジーなパートが続いて終曲、なんだこれ、北欧ギャグなのか、、、クオリティは高いがこのパートは謎
演奏できうる限りのあらゆるジャンルをぶち込んでみる、という挑戦なのだろうか
いずれにせよいい曲、「プログレ」というくくりで今年ベストに近いかも
プログレ・メタルだとHakenのマシンメサイアほどの緊迫感、超絶技巧によるせめぎ合いはないが、純粋なプログレとして名曲
★★★★★

2.The Nothingness And The Devil 5:36
吹っ切れたように分かりやすいリフと勢いのあるグロールのボーカル
疾走感がある
途中からコードの感じが変わり、揺らぐような、ゆがんだ展開に
煽情性のある、盛り上がるリフに、コーラスから戻ってくる
これ、リフが戻ってきた時が一番盛り上がるような構造になってるな
暗黒感とノリの良さがある曲、シンプルだがかっこいいし、時々変なコード進行が出てくる
ここでずらす? ここでメジャーコード? みたいな
この奇妙さはこのバンドの特異性のひとつ、昔からこういう変な、肩透かしのような瞬間がある
ボーカルがグロール気味なのだがメロディ感もある、いいボーカル
途中からプログレ的な音像に、うーん、テクニックで押さないタイプのプログレもいいなぁ
反復キーボード、幽玄な世界観で終曲
★★★★☆

3.Feverish 5:56
キーボードリフ、というかスペーシーなキーボードフレーズから
それにギターが絡み合う
からのブラスト、おお、こう疾走してくるか、前の曲とまたがらりと表情が違う
勢いよくグロウル、メロデスというよりはパワーメタル的な音像、テンポやリフ構造や
そこから展開するメロディ、美しい、北欧万歳!
いや、このアルバムいいな、コーラス、パワーメタル的な盛り上がるメロディだが、バックで必要以上にブラスト
リフはパワーメタルなんだけど、そこにガチめのデス・ブラック的な語法が混じるというか
面白い、パワーメタルというのは類型化しやすくて「どこかで聴いたような曲」になりがちだが、各種表現技法、フローるや高速ブラストの組み合わせで雰囲気を変えている
コーラスもハードコア、パンク的な合唱が入るし、これはライブで盛り上がりそう
そこからキーボード、ディスコ的なキーボードが入る、今の北欧のはやりだな
リズムはぜんぜんディスコ調ではないけれど
そこからまさかのブラストへ
いやぁ、ブラストが早すぎて笑ってしまう、これテンポあってるのか?
もちろん超速のドラマーはもっといて、速度だけなら極端に早くないのだが、曲の世界観に対して過剰に早い
なぜそこでそんなに一生懸命叩きまくるんだ、と、ドラマーの全力のボケなんじゃないかと思うような極端さ
「なんでやねん!」と言いたくなる
また幽玄な弦楽器のパートが入り終辱、こういう展開もマジなんだかギャグなんだか
いや、カッコいい、カッコいいんだけど、切り替わりが極端
あと、今までの3曲全部「曲の最後に何か違う世界観のパート」が入ってるな、これはどういう効果を狙ってるんだろう
★★★★☆

4.Desperado 3:44
かっこいいリフ、パワーメタル的なリフからスタート
スラッシーなリズム、適度な疾走感
グロールが入ってくる、これはスラッシュマナー、ただ、けっこうメロディアスで和音は不協和音感は少ない
そのあたりがパワーメタル感、コーラスはクリアボーカルに戻りフックがあるメロディを歌う
やはりジャーマンメタルとはメロディセンスが違う、スウェーデン、北欧のバンドだけある
間奏で音が引っ込み、ギターリフが回る
そこからブラストビートで戻ってくる、痙攣のようなギターソロ
メロディアスなパートに戻る、パワーメタル的なキメで終曲
お、この曲は最後がすっきり終わった
パワーメタル的な佳曲
★★★★

5.Death Diviner 5:06
リズムパターンが変わる、うねるようなリフ、けっこう音程移動が多い
蛇が鎌首を持ち上げるような、うねるようなリフ
音階には中東感はない、スムーズでクリアな音、明瞭な和音
なんだろう、ペンタトニックな音運びといえばそうかな
ブルース感はなく、北欧感が強い
コーラスは美しく、ノクターナルライトとか、あのあたりのパワーメタル的な音像だな
この曲はリズムもメロディも勇壮でミドルテンポ
お、グロールが出てきた、だんだん後半になるにつれてパワーメタル、正統派メタル色が強くなってきている
コーラスの途中で少し転調が入ったり、一本調子で流れていかない、こういうメロディが上手い
転調して舞台を変える、みたいな構成が北欧は多いよね
コーラスの終わり、リフとかヴァースに戻るときに場面が変わる感じがするというか
そこから激走パートへ、パワーメタルの枠を超えてデス・ブラックの音像
そのあたりはもともとの持ち味、コーラスが盛り上がる、バックの音は音数が増えてシューゲイザー的な音の塊に
ふたたびリフが戻ってくる、ボーカルは多重コーラス
最後はアルペジオで静かに終曲、これは余韻として合っている
★★★★☆

全体評価
★★★★★
まさかの出来栄え、2020年ベスト候補
曲数、長さ的にEP扱いなのかもしれないが、とはいえ約37分、十分長尺、ここまで力が入っている作品とは
ジャケットもそんなに力が入っている感じでもないし、とりあえず聞いてみようと聞き始めたら引き込まれた
最初の曲から16分半、最初は比較的地味というかゆっくり始まっていったがめくるめく展開でだんだんと世界に引き込まれていく
1曲目に全力を注いだのだろうなと思ったら、その後の曲も「おまけ」ではなくどれもしっかりドラマがあってむしろ良曲
去年もフルアルバムを出したばかりなのにクリエイティビティが凄いな
昔から知ってはいたがこんなにいいバンドだったとは
一聴して耳を惹く強烈なテクニックはないが、メロディセンスや作編曲スキルが高い
ベテランながら、落ち着きすぎずアグレッションも強いし、曲作りに新鮮さがある
いろいろな要素の組み合わせではあるものの、キャリアあるベテランだけに「借り物」感がなく、独自性を感じる
いやぁ、北欧って本当に素晴らしいですね

リスニング環境
家・夜・ヘッドホン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?