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Ensiferum / Thalassic

フィンランドのEnsiferum(エンシフェルム)1995年結成2001年デビューで本作は8作目。グロールとクリアトーンの使い分けが上手い。クリアボーカルはハイトーンでHelloweenみたいなんですよ。かといってグロールパートが迫力がないかというとこちらも本格的で、バイキング的なメロディとアグレッションが高く、Fintrollあたりにも通じる音像。これ、ボーカル一人なのかと思ったら皆ボーカル取るんですね、ギターボーカルがメインだけれどベースも歌うし、ハイトーンはキーボード担当か。一人で全部の声を出しているのかと思った。MVとかだと分かりづらいんですよ。キーボードは今作から参加、今作で大きく音楽性が進化したようですね。本格北欧メロデスとジャーマン的な正統派パワーメタルが同じ曲の中に融合されているというコロンブスの卵。きちんと正統派パワーメタルパートの完成度が高いのが新鮮。これは熱いです。いろいろな要素を感じつつ、全体としては「新しいメタル」を感じました。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。ぜひ二番までは聴いてください、別バンドみたいになるので。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Seafare's Dream
波の音からスタート、つぶやくような、うめくような声からアコースティックギターが入ってくる
バイキング的な音階、オーケストラが鳴る
航海への旅立ち、剣戟
海賊版大河ドラマのオープニング的なテーマに
とはいえオーケストラはやや控えめ、櫓を漕ぐリズム
だんだんとテンポが上がっていく、航海に乗り出していく
インストのオープニングテーマ
★★★

2.Rum,Women,Victory
続けてスタート、パワーメタル王道的な刻みリフからスタート、同じテンポでドラムが入る
ベースもユニゾン、からの疾走
民族的なフレーズ、バイキング・メタル、フォークメタル的なメロディをギターが奏でる
ボーカルが入ってくる、グロールスタイルだがゆがみはやや少な目
メインリフが戻ってくる、メロデスというかだみ声の疾走型バイキングメタル
サビが「酒(ラム)、女、勝利!」というはっちゃけっぷり
2ndヴァースではクリアにハイトーンで歌い上げる、パワーメタル感、ハロウィン的でもある
サビに入ると再びメロディアスなバックとグロール、ツインボーカルなのだろうか、同じ人なのかな
クリアトーンがこなれている、美しいハイトーン
さらに疾走感が増して間奏へ、民族的メロディを奏でる
バイキングパーティ、盛り上がったまま終曲
★★★★☆

3.Andromeda
前の曲に比べるとミドルテンポに、とはいえややアップテンポの曲か
バイキング的クサメロのギターリフにダミ声が乗る
泣きの度合いで言えば低いが、Amorphisの初期を少し思い出した
そういえばこのバンドもフィンランドのバンドだった気がする
またクリアトーンのボーカルが出てくる、同じ人かな
ハイトーンのレベルが高い、ちょっとマイケルキスクのような歌いまわし
ノリノリで、「Andromeda!」のコーラスは男臭い合唱
なんとなく口元に笑みが浮かんでしまう、マイナー調でそこそこ泣きのメロディではあるのだがユーモラス
間奏からもろハロウィン的なメロディアスなパートを経てグロールへ
この組み合わせと配分は面白い、メロディがいたるところに散りばめられているがグロールでアグレッションもある
ドラムはツーバス連打だがバタバタ感やうるささはあまりない、どちらかといえば軽快
★★★★☆

4.The Defence of the Sampo
最初は遠くの方でなっているかのようなギター音、それがクリアになって一気にメロディアスなリフに
今度は最初からパワーメタル的なメロディ、Hammerfall辺りのような、エピック的なメロディ
いや、ところどころ歌いまわしがHelloweenっぽいなぁ、マイケルキスクというよりはカイハンセンか
ブラインドガーディアンも彷彿させるが、やはり独自性というかメロディセンスは違う
民族的メロディがフィンランド的なのだろうか、ちょっとドイツとは違うんだよね
大げさなのだけれど自分に酔いしれているわけではないというか、客観的な娯楽性、プロデュース能力も感じる
流石世界的に知名度を得ているだけのことはある
後、オーケストラとか民族楽器とかいろいろな要素は入っているのだが一つ一つの要素が主張しすぎず溶け込んでいる
この曲もパワーメタルパートから間奏では伝統音楽的なパートに切り替わっているがけっこう自然に流れていく
音作りがあまりアグレッションが強めではなく、全体として控えめでマイルドなので聴きやすく、いろんな要素が混じりやすい
★★★☆

5.Run from the Crushing Tide
ツーバス連打、疾走スピードメタル
メロディはクサメロ、さらにコーラスがギターリフをなぞる、シンガロング
そこからグロールのボーカル、馬掛けリズム、メイデンのRun To The Hillsのリズムね
そこからhelloween的な歌メロのブリッジ、を経てバイキング的なコールアンドレスポンスなサビへ
こうしたミックス度合いが面白い、どこかユーモラスで人懐っこい
フィンランドに対する個人的なイメージかもしれないが、けっこう他のバンドからもそれは感じる
欧州の中でも北の辺境だからね、やはり独自
エアギター選手権とかもそうだが、ダサいんだかカッコいいんだが、感動するんだか滑稽なんだか、たぶん両方なんだろう
そういうエンタメというかユーモアのセンスが好まれる土地柄なイメージがある
この音楽もそうしたいろいろな要素のミックスで、得も言われぬ味わいがある
ベタベタなパワーメタルのメロディながら、どころどころ入ってくる奇声や民族メロディがド派手
笑えて来る
★★★★

6.For Sirens
ミドルテンポ、弦楽器隊がフォーメーション組んでリフを奏でそうなユニゾンリフ
グロールとメロディアスパートが絡み合う歌メロ、サビはグロールとリフのメロディ
オープニングで印象的な民族的、ルーツ的なメロディがギターリフで奏でられ、それがサビというか、曲の中の盛り上がりどころでグロールのバッキングで戻ってくる、というパターンが散見される
この曲のメロディはギターではなくバグパイプが入っているのかな
間奏では一度落ち着いてクリアなボーカル、からのメロディアスなツインリードへ
要素は多いもののテンポや展開はそこまで性急ではなく、身をゆだねる感じ
けっこうドラムはツーバス連打が多い
クリアにハイトーンを歌う時のボーカルの声はなかなかキャラクターがあっていい声をしている
★★★☆

7.One With the Sea
ややスローなテンポ、ヘヴィで荘厳なリフにオーケストラが重なる
歌い上げるボーカル、バラード調
クリアトーンで朗々と歌う、かなりハイトーンまで上り詰める
けっこうハイトーン出るんだなぁ、ロブハルフォードばりの金切り声まで
じっくりとしたバラード、最初のオープニングと同じリズム、船乗りが櫓を漕ぐリズム
最初のオープニングとつながっているのかな
じっくりとした展開とメロディ、フォークソング(伝承歌)のような、繰り返される反復メロディ
ところどころ入ってくる雄々しい男声コーラス
大げさだがドラマティック
★★★★

8.Midsummer Magic
軽快なアコギのカッティング、バグパイプ、アコーディオンか、焚火を囲んでのパーティ
ドラムが同じテンポで入ってきて疾走がスタート、パーティーソング
バイキング、ドワーフ、ホビット、トロール、ファンタジーの宴
ボーカルはクリアトーン、ドラムはテンポが速いが基本はアコースティックな音像
ディストーションギターも入っていてアグレッションを足しているがアコースティックの方が前に出ている
雄々しい雄たけびコーラスも入ってくる
間奏ではポルカ? コサック? 的な音楽が入ってくる
フィンランドはロシアにも面しているので音楽的には似たようなルーツもあるのだろう
疾走に戻ってグロールとツーバスだが、民族楽器というかアコースティックなメロディは続く
★★★★☆

9.Cold Northland
波の音にピアノのメロディが乗る、哀切なメロディ
とはいえそこまで重々しくなくサラッと流れていく
そこからスローなドラムが入ってくる、ヘヴィなリズム
流麗なツインリード、哀切と勇壮が混じったようなメロディ
曲が進みだす、進軍、全体が一丸となり、進軍ラッパが鳴る
なかなか大げさなスタート、管楽器まで入ってユニゾンで吹き鳴らす
ユニゾンの連打の合間にギターやオーケストラがメロディを慣らす、シンフォニック
グロールのボーカルが入ってくる、うめくような声
テンポアップしてアグレッション強めの音像に
歯切れの良い疾走リズムにグロール
からのメロディアスなハイトーン、パワーメタル、これはハロウィン的ではないな
独自性のある、裏声まで使うボーカルメロディ、新鮮な音階
グロールが入ってくる、何を物語っているのだろう
途中でナレーションが入る
サビ~金切り声ハイトーンシャウトからグロール、そして間奏へ
曲を貫通するメインメロディがギターによって奏でられる
見事な構築力、8分41秒という長尺曲だが飽きることなく聞かせきる
風と雨の音が残り、フェードアウトして去っていく
★★★★☆

全体評価
★★★★☆
娯楽性が高い、いろいろな要素がミックスされていて聞き飽きない
パワーメタルやスピードメタルはマンネリになりがちな音楽ジャンルだけれど、メロデス、パワーメタル、フォークメタルなど色々な要素をうまく組み合わせて最後までエンタメ性と緊張感を持続している
また、ミックスというか音のバランスも聴きやすい、アグレッションやヘヴィさもあるがどこかのパートが突出せず、バランスよく聞かせている
このバンドのオリジナリティは、そうした複数の要素をうまくまとめ上げる作曲・編曲能力と演奏力、そして客観的なプロデュース能力なのだろう
一つ一つの要素は既視感があるのだけれど、配合度合いで新鮮さがある
ただ、聞いていて楽しいものの、強烈に印象に残るオリジナリティはまだ足りないかなぁ

リスニング環境
夜・バー・イヤホン

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