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BUG ME TENDER Vol.22(GEZAN,ハナレグミ,擬態屋) / 2024/3/8@Zepp新宿

Zepp新宿にGEZANのイベントを観に行ってきました。初Zepp新宿。歌舞伎町、トー横奥に再開発された商業ビルの地下1階から4階をぶち抜いて作られており、天井が高い! 地下大墳墓といった趣きでなかなか良いハコです。Zeppシリーズだけあり音響や照明も高品質。

さて、今回はGEZANのボーカルであるマヒトゥザピーポー(以下マヒト)の初監督映画作品「I ai(アイアイ)」の封切前日記念ライブ。映画関連の話題が多いライブでした。この映画のことは知らず、GEZANは以前野音でワンマンを観て「また観たいな」の思って次のライブを調べたらたまたまこの日だった。なので対バンや映画への前知識なしでの参加です。

1組目は擬態屋。佐内正史×曽我部恵一のユニット。曽我部さんはサニーデイサービスのボーカルギターですが、佐内さんは知らなかった。調べたら音楽関連をいろいろ手掛けている写真家で、川本真琴とユニットを組んだりしているらしい。今回のイベントのテーマである「i ai」の撮影担当らしい。音楽的には佐内さんのポエトリーリーディングに曽我部さんがエレキギター(時々キーボード)でバッキングを作る、と言うもの。音楽ライブというよりインスタレーションアートというか、美術館で行われるパフォーマンスアートみたいな感じ。個人的には面白かったけどスタンディングで聴くものじゃないなぁ。椅子が欲しかった。多分寝てたけど(悪い意味ではなく心地良かったから)。

サニーデイサービスは昔から知っていたし音源も持っていたけど、曽我部さんをライブで見るのは初めて。エレキギター一本で世界観を作るのはさすが。一筆書き、即興性も感じるライブでした。最後に「今日、リハで作った曲やります」と新曲を披露したのでまさに即興性があるユニット。サニーデイサービスのライブも観てみたいな。


2組目はハナレグミ。バンドではなく弾き語り形式。Super Butter Dogのボーカルだった永積タカシさんのソロユニット。名前だけは知っていたけど、ライブは初。というかスーパーバタードッグ時代の「さよならcolor」ぐらいしか知らないかも。ただ、丁寧な曲を作るシンガーソングライターのイメージがありました。実際のライブはその印象通り。練られたコード進行、シンプルにいい曲、いい歌。ギターも流石弾き語りでやるだけあって安定感がありました。こんなに弾けたら楽しいだろうなぁ。

ただ、こちらもじっくり聴かせる系(後半は盛り上がる曲もあったけれど)。なかなかスタンディングは辛い。昔、フジロックでメインステージに山崎まさよしが出てきて立ちながら寝落ちしたことを思い出します。弾き語りでも長渕剛みたいに盛り上げまくる人もいるけど、バラード続くなら椅子と酒が欲しい。

「ギターで弾くの難しい曲なんですけど、失敗するミュージシャン観るのも面白いでしょ」みたいなことを言ってスタートした「MY夢中」。

コード難しそうでした。失敗してたけどきちんと形にして着地するのは流石。こういう「ハプニングを組み込んでライブできる」自由度は弾き語りスタイルならでは。弾いてる手元みてたけど、ufretとはだいぶ運指が違った気がする。


3組目、今日の目当てだったGEZANが登場。一曲目から呪術的な「誅犬」。この日、場内BGMもずっと人力テクノ的なアフロアメリカン音楽だったんですよね。そのビートが効いてる感じ、踊れる感じが今までの二組はほとんどなかった(ハナレグミは最後2曲ぐらいアッパーだったけど)のが、ここにきて爆発する感じ。これ、イベントの構成としてはやられました。ずっと轟音+アッパーだとこちら(の耳)も疲れてくるけれど、ここまで2時間近く静か&バラード的な感じだったので一気にボルテージが上がる。このあたり、意図していたかどうかわからないけれど映画的だなぁとも感じたり。けっこう前半退屈(≒起伏がない)な映画ってあるじゃないですか。インディーズとか北欧映画とか単館系。でも、その退屈な時間があるが故のカタルシスがあるわけで。これクラシック音楽にも言えますけどね。そういうのってなかなか家では味わいずらくて、長時間強制的に観客を確保できる映画館とかライブハウスとか、そういうところ故の体験。期せずして前二組からの対比でいきなりクライマックス感。

GEZANを観るのは2回目。前回は日比谷野音(→ライブレポ)で、トロンボーン+パーカッション+総勢15名のコーラス隊(Million Wish Collective)を含んだ編成だったのが、今回はメンバー4名だけ。前回は野外だしメンバーも多く祝祭的な感覚もありましたが、今回は4人だけで地下ライブハウスで違う世界観。予想より轟音でした。シンセを使って音をいじりまくる。ビートの効いたカオス。不協和音というよりシンセ音、ディストーションギターの音が渦を巻いていて、個人的に今までで一番爆音だったWrenchのライブ(→ライブレポ)を思い出したり。

あと、前回のライブではGEZANにjagataraやソウルフラワーユニオンみたいな「共同体で奏でる音楽」的なもの、ヒッピーカルチャーとの連続性を感じたんだけれど(反戦デモとか主催しているし)、今回4人だけのライブ見たらもっとハードコアなんだなと。ファンクより、レゲエの影響。大人数コーラスがじゃがたら感があっただけですね。そしてキャラの強いボーカル。小説とかも書いているし、町田康とか田口トモロヲとか、いや世代的に銀杏ボーイズか。とにかく他にない個性だけれど、引用元もワールドミュージックじゃないんだなと。まぁ、場内BGMからしてアフロ・アフリカン音楽にも接近したいんでしょうけれど、もともとの出自はもっとシンプルなロック。カッコよかった。

シンセの音の選び方、遊び方がうまいんですよね。バグパイプ入れてみたり。いろんな音遊びが上手い。ちょっと小室哲哉っぽい「人の声をぶった切る」感じを入れてみたり。そういえばビート的にはトランスなのかなぁ。人力トランスミュージック感もありました。体が揺れ出すんだけど、ロックのノリよりはもっとクラブ、ダンスのノリ。

本編最後は「i ai」についてのエピソードを語った曲。前奏部分は即興なのかな。感動的な瞬間でした。

そしてアンコールでは主演俳優が出てきてポエトリーリーディング(というか演劇)を行う。たぶん演奏していたのは映画のテーマソングだろうインスト曲。ロックライブでもあり、アート作品でもあった一夜でした。

Zepp新宿から地上に上がるとゴジラがいた

それでは良いミュージックライフを。

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