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Greta Van Fleet / The Battle At Garden's Gate

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グレタ・ヴァン・フリートは、2012年に結成されたミシガン州フランケンムース出身のアメリカのロックバンドです。ジョシュ、ジェイク、サムのキスカ3兄弟がそれぞれボーカル、ギター、ベースを担当し、ドラムのダニーワーグナーを加えた4人組。デビューシングルは「Led Zeppelinの再来」と呼ばれ、ロバートプラント本人も「彼らはLed Zeppelinだ」と類似性を認めたほど。確かに、デビューEPを聞いてみると声質が似ています。本人たち曰く「Led Zeppelinは確かに好きだけれど、ほかのクラシックロックの影響も受けているし、ボーカルスタイルはロバートプラントに似せようとしたわけではなく自分のスタイルを探していたらこうなったんだ」とのこと。そもそも声質が奇跡的なまでに似ているのでしょう。

2010年代、ハードロックシーンに突然現れた超新星であり、USの売り上げで言えばハードロック系の新人バンドとしては破格。2015年から2020年でUSで売れているメタル系アーティストの特集記事を書いたとき、2018年でいきなり1位に躍り出ています。

名前は知っていましたがきちんと聞いていなかったバンドですが、現代のUSハードロックシーンを知る上で欠かせない存在のようです。2021年にセカンドアルバムが出ているので、聞いてみます。

活動国:US
ジャンル:ハードロック、ブルースロック、プログレッシブロック
活動年:2012-現在
リリース:2021年4月16日
メンバー:
 Josh Kiszka – lead vocals (2012–present)
 Jake Kiszka – guitars, backing vocals (2012–present)
 Sam Kiszka – bass guitar, keyboards, backing vocals (2012–present)
 Danny Wagner – drums, backing vocals (2013–present)

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総合評価 ★★★★☆

Led Zeppelinだけでなく、Rushの影響も色濃く感じた。というか、初期RushがZeppに近いとも言えるのだけれど、音程移動の激しさとか曲展開の目まぐるしさはRush的。あと、USのバンドらしくイーグルスやエアロスミスといったUSロック、アメリカンハードロックのテイストも感じる。個人的に一番このバンドらしさを感じて好きなのは6 Tears Of Rainかな。USロック。

さまざまなクラシックロックのレジェンドバンドたちのテイストやレガシーを取り入れつつ、曲作りは比較的コンパクトかつドラマティック。そのあたりは流石、今商業的にも成功しているバンド。クラシックロックへの入り口としても機能しそう。ただ、どっぷりクラシックロックを聴いている層(僕含め)に、過去の思い出を塗り替えるほどのインパクトがあるかというと残念ながらそこまではない。これからどこまで独自性を出していくだろうか。Rushだって最初はZeppelinフォロワーと言われていたがやがて唯一無二の音像にたどり着いたわけだし、今後が楽しみ。個人的にはUSハードロック、USロックの影響ももっと出していくと面白い気がした。

1 Heat Above 5:41 ★★★★☆

おお、これはLed ZeppelinというよりRushだ。70年代、大作主義だったころのRush。Farewell To Kingsあたりの頃の。ロバートプラントよりゲディリーに近い声。ただ、曲はコンパクトで70年代の魔法の薫りは薄く、モダンなフックがある。歌メロもコンパクトだし。ちょっとさわやかSSW系のメロディでもあるがバンドサウンドで、ギターの音がビンテージロックの音。それほど複雑なことを(この曲では)していないが、グルーヴの絡み合いがダイナミズムを生んでいる。個人的にはZeppよりRushに思い入れがあるのでこれは好き。

2 My Way, Soon 4:15 ★★★★☆

ギターリフ、これは多少ジミーペイジ的な感じ。クラシックロックの佇まいがあるギターリフ。あとボーカルはMott The Hoopleとか、ちょっとグラムロック感もある曲。

ガレージロックリバイバルではなく70sハードロックリバイバルか。リバイバルといっても模倣も再現も難しいジャンルで、独特の魔力のようなものがあるしキャラクターが重要。ボーカルはもちろん各楽器隊のキャラが立っていないと成り立たない。ギター、ボーカル、ベースそれぞれがけっこう癖が強いプレイをしている。流石兄弟。ドラムも突出はしていないが悪くない。そういえばJetなんてバンドもいたなぁ。

3 Broken Bells 5:50 ★★★★

バラード調でスタート。Zeppのバラード的。UKトラッドな感じがありつつハイトーンボーカルが舞う。弦楽器も入ってくる。ただ、USのバンドなのでUKのトラッドというよりはちょっとUSポップ感もあるメロディ。カントリー感はあまりない。なんだろう、メロディセンス的にはたとえばブルーノマーズ(1st)とかジェイムスブラントとか、ああいう爽やかSSW系ポップスとの共通項も感じる。それがクラシックロック、70年代ハードロックの音像に載っている。圧倒まではされないが心地よい。

4 Built By Nations 3:59 ★★★★

これまたZeppというか、ジミーペイジ的なギター、そこに絡み合うグルーヴ。ただ、イントロはZeppっぽくても歌メロが入ると雰囲気は変わる。声が似ているとは言っても流石に声が若い。あと、曲構成がもうちょっとコンパクト。よく言えばポップになってフックがあるし、悪く言えば得体のしれない魔力のようなものは弱い。それは時代を経て熟成されていくものかもしれないが。錬金術とか、あの当時はロックというものはもっと幻想があったしミュージシャンの生き方、ライフスタイルももっと夢幻のようなものだった。

5 Age Of Machine 6:53 ★★★★☆

つま弾くリフ、ブルースのリズム。ボーカルが入るとリズムが合わせてブレイクする。いかにもヘヴィブルースロック。こういうのはうまいな。USのバンドだからブルースやらせると本場感が出る(白人なので、アフリカ系アメリカ人がやるブルースとはまた違うが)。UKのバンドよりグルーブが自然体で大陸的(に感じる)。ちょっと荒涼とした砂漠、ストーナー感もある。ギターがアルペジオで音程移動しながら展開していくところはRushっぽいな。あと、ボーカルが高音の連続するのも初期Rushっぽいのかも。コーラスのメロディはUS、R&Bなどを通過した音。

6 Tears Of Rain 3:50 ★★★★☆

イーグルス、ホテルカリフォルニアっぽいスタート。そうか、イーグルスの影響もあるのか。ちょっとエスニックなフレーズも出てくる。この曲はあまりZepp感はないな。グルーヴが違うのだろう。アメリカンハードロックの音像。これはオリジナリティを感じる。ボーカルのシャウトもロバートプラントよりはスティーブンタイラー(エアロスミス)に近い。

7 Stardust Chords 4:57 ★★★★☆

お、イントロはあまり感じなかったがボーカルが入るとこの曲はZeppっぽいな。ビートの組み合わせ方とヴァースのコード進行がZepp的。Zeppはかなり特徴的なんだなぁ。キメが多用されるブルースロック。基本的にペンタトニックスケールだが弦楽器が入ってフレーズを強調する。ベースの暴れまわり方はややサイケ、ビートルズのCome Together感もある。いろいろなものを組み合わせている。ボーカルの音程が低いところから裏声まで上がったりするのはRush的。

8 Light My Love 4:32 ★★★★

アコースティックな雰囲気もあるロックバラード。三拍子のリズム。ややアーシーな祝祭感、フォークダンス的、カントリーウェディング的な曲。時々挟まれるピアノフレーズが効いている。ギターの音使いも拘りが強い。

9 Caravel 4:56 ★★★★

ギターサウンド、ジミヘン、あるいはレニクラ的なたたきつけるようなギターからスタート。ボーカルが入るとギターは少し後ろに下がる。クリーム的、というべきか。ブルースロックを基調としたハードロック。後半になるにつれて熱量が増してきているというか、聞いていて心地よい。このバンドのグルーヴがしっかり確立していて、アルバムを聞かせきる力がある。

10 The Barbarians 5:21 ★★★★

キメが多いブルース基調のハードロック。だんだん時間の感覚が分からなくなってくる。後半になるにつれてモダンな感覚とクラシックロックの感覚の境界が消えていく。ライブ気持ち良さそう。グルーヴ感、ビートがしっかりしている。

11 Trip The Light Fantastic 4:33 ★★★★

基本は変わらないがちょっとサイケ感がある。これ、リズム隊がかなりZeppを研究してる気がするなぁ。あとRush。サイケデリック感を出しているのはふわふわしたコーラスかな。サイケというか、YESっぽさもあるな。高音ボーカルがちょっとジョンアンダーソンっぽいから、声を割らずに透き通った歌い方でハーモニーと絡むとYES感もでる。ドラムもバタバタしてるし。

12 The Weight Of Dreams 8:52 ★★★★

アルペジオからスタートし、じわじわとバンドが入ってくる。ただ、天国への階段ほどタメてはおらず、最初からバンドサウンド。じっくりと展開していく。今までの曲はドラマティックではありつつもなんだかんだ5分以内に大半が収まっていて、それがモダンな感覚でもあったのだが、クラシックロックに比べると多少駆け足感もあった。これは本当に70年代的なじわじわとした展開。冗長とも言えるし、酩酊感が強いとも言える。4分45秒ぐらいで一度曲が終わる、かと思ったらまた戻ってくる。とはいえ激しい展開はなくそのまま続く。Zeppの「ただ長い曲」みたいな。たとえばTea For Oneとか。ブルースロック的な、インプロで引っ張っていく。こういう曲はライブでしっかりやり切ると盛り上がる。後半、4分近くギターソロで引っ張りアコギのアウトロで終わる。


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