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Arch Enemy“Deceivers Japan Tour” 2023.2.22@Zepp Divercity Tokyo

2月はライブが続きます。今回はArch Enemy(アーチエネミー)、通称アチエネのライブへ。このライブが一番発売日が速かったんですよね。チケットを取った後にメガデスが決まり、その次にレッチリが決まり、、、気が付くとライブウィークに。うれしい悲鳴。

今回の会場はZepp Diversity。東京はお台場にある大型ライブハウスです。少し時間があったので初めてレインボーブリッジを徒歩で渡ってみました。遊歩道があり徒歩でも渡れます。

遊歩道からの風景、手前がお台場(江戸時代の大砲の砲台)
奥はフジテレビ

Divercityに就くころには周りも暗くなりいい雰囲気に。入り待ちの行列ができており盛況です。

アチエネは1996年に結成されたスウェーデンのメロディックデスメタルバンドです。マイケルアモット(Gt)と弟のクリストファーアモット(Gt)のアモット兄弟、そしてマイケルアモットがCarcass(カーカス)加入以前に在籍していたCarnage(カーネイジ)でバンドメイトだったボーカルのヨハンリーヴァを中心に結成されました。当初は正式なバンドというよりプロジェクトという扱いでしたが、人気が出たためパーマネントなバンドとして活動を開始しました。

このバンドの最大の特徴は、「女性のデスボイスボーカル」であることです。初代ボーカリストのヨハンリーヴァは男性でしたが、二代目ボーカリストのアンジェラ・ゴソウはドイツ出身の女性で、デスボイス(グロウル)の女性ボーカリストの先駆けとしてメタルシーンに衝撃を与えました。

アンジェラ・ゴソウ

そして現在は3代目ボーカリストでカナダ出身のアリッサ・ホワイト・グラスが加入。メタル界のアイコンとして存在感を放っています。

アレッサをフューチャーしたライブ告知ポスター

今回、ライブを観て改めて思ったのですが、アチエネは北欧メタルだけでなくジャーマンメタルやUSメタル、UKメタルの要素も持っています。全体的には「モダンなメタル」の影響が感じられます。それはメンバーのバックグラウンドに起因しているでしょう。中心人物のマイケル・アモットは、UKのバンドであるカーカスに在籍していたことがあり、2代目ボーカリストのアンジェラ・ゴソウはドイツ出身です。現在のボーカリストのアレッサはカナダ人であり、現在のマイケル・アモットの相方ギタリストはUSのNevermoreで活躍したジェフ・ルーミスです。それぞれのバックグラウンドの違いから、90年代以降のメタルのサウンドを一つにまとめたような音楽になっています。曲によって表情が大きく異なるので、一本調子にならない点も魅力的です。

今回のライブで、オープニング前にステージに「Pure Fucking Metal」と書かれた幕がかかっていました。その言葉の通り、「メロディックデスメタル」と言いつつも、実際には「女性のデスボイス」という特徴が強すぎるため、楽曲のバリエーションは非常に幅広いです。初期の頃は、スウェーデンのメロディックデスメタルスタイルであるブラストビートの中に美しいメロディが飛び交うものでしたが、徐々にグルーヴを強調したニューメタルっぽい曲や、ジューダスプリーストやカイハンセン率いるGamma RayのようなUKメタルやドイツのパワーメタルに近いリフも登場しました。また、マイケル・アモットはドイツの泣きメロのギタリスト、マイケル・シェンカーと比較されることもあります。こうした音楽性をすべてまとめる言葉として、自分たちで「Pure (Fucking) Metal」と表現するのは格好いいです。特に、「Fucking」を加えるという点は、デスメタルシーン出身のハードコアなノリを感じさせますね。

この日はソールドアウトこそ出ていなかったものの体感としては8割ぐらい埋まっている感じ。スタンディングだとZepp Divercityは2,709人のキャパ。かつて近くに存在したZepp Tokyoとキャパは同じです。Zepp Tokyoで6人編成ハロウィン(Halloween United)を見たことがありますが、同じぐらいの熱気。アチエネはハロウィンと同じぐらい人気があるのか。まさにピュアメタラーの集い。

この日のセットリストは下記の通り。

1.Deceiver, Deceiver(Deceivers 2022)
2.The World Is Yours(Will to Power 2017)
3.Ravenous(Wages of Sin 2001)
4.War Eternal(War Eternal 2014)
5.In the Eye of the Storm(Deceivers 2022)
6.House of Mirrors(Deceivers 2022)
7.My Apocalypse(Doomsday Machine 2005)
8.The Watcher(Deceivers 2022)
9.The Eagle Flies Alone(Will to Power 2017)
10.Handshake With Hell(Deceivers 2022)
11.Sunset Over the Empire(Deceivers 2022)
12.Blood on Your Hands(Rise of the Tyrant 2007)
13.As the Pages Burn(War Eternal 2014)

Encore:
14.Enemy Within(Wages of Sin 2001)
15.Burning Angel(Wages of Sin 2001)
16.Snow Bound(Wages of Sin 2001)
17.Nemesis(Doomsday Machine 2005)

(Outro instrumental)
Fields of Desolation(Black Earth 1996)

アウトロを除いて全17曲。アルバムごとに観ると下記の通り。

Black Earth (1996) 0曲(アウトロで1曲)Vo:ヨハンリーヴァ
Stigmata (1998) 0曲 ヨハン
Burning Bridges (1999) 0曲 ヨハン
Wages of Sin (2001) 4曲 Vo:アンジェラゴソウ
Anthems of Rebellion (2003) 0曲 アンジェラ
Doomsday Machine (2005) 2曲 アンジェラ
Rise of the Tyrant (2007) 1曲 アンジェラ
Khaos Legions (2011) 0曲 アンジェラ
War Eternal (2014) 2曲 Vo:アリッサホワイトグラス
Will to Power (2017) 2曲 アリッサ
Deceivers (2022) 6曲 アリッサ

新譜リリースツアーということで新譜Deceiversからの曲が一番多いですね。男性ボーカル(ヨハン)時代の曲はアウトロで使われた以外はゼロ。ちょっと面白いのが2番目に多かったのがアンジェラゴソウ加入第一作であるWages To Sinからも4曲やっていること。「女性デスボイスによるピュアメタル」という現在のアチエネの原型を作り上げた記念碑的作品だからでしょうか。Wages To Sinって日本先行販売なんですよね。アチエネは最初日本から人気が出て、だんだんと欧州に人気が波及していった。最新作Deceiversはフィンランドやスイスで1位を取るなど欧州全域で人気バンドとなっています。興味のある方はチャートアクション(英語版wiki)をどうぞ。

先ほど「さまざまなパターンの曲がある」と書きましたが、それを支えるのはリズム隊。ドラムのDaniel ErlandssonとベースのSharlee D'Angeloも上手い。特にドラムは凄いですね。デスメタルってけっこうドラム主体の音楽だと思っています。80年代メタル~スラッシュメタルまではボーカルとギターが主役だったのがデスメタルとプログレメタルになるとドラムが肝になってくるというか、ビートのパターンが重要になってくる気がします。それがさらに先にいったのがグルーブメタルですね。今のUSメタル、たとえばDisturbedなんかはリズムに注目して聞くと変拍子でこそないもののリズムパターンが曲の中で目まぐるしく変わっておりダイナミズムを生み出していますが、それに通じるリズムパターンのバリエーションがアチエネにもありました。

たいていの北欧メロデスのバンド(In FlamesSoilworkDark Tranquillity他)がデスボイスだけでなくクリーントーンも多用するような方向で曲作りのバリエーションを増やしているのに対し、アチエネはいまだにほとんどクリーントーンが使われていません。アリッサはクリーントーンも歌える(アゴイスト時代の方が多用していた)のでときどきは入ってきますが、同世代のメロデスバンドに比べると頑なにデスボイスを守っている。歌メロでバリエーションが出しづらい分、曲調はバリエーションに富んでいます。ある意味「女性デスボイス」こそがアチエネのシグニチャーサウンドであり、それ以外は「90年代以降のメタルの王道」を果敢に模索し、変化し続けているバンドなんだなぁとライブを観て実感しました。

大団円のフィナーレ
外に出るとガンダムが見送り

まさしく「Pure Fucking Metal」が堪能できた夜。最高のライブでした。メタルって本当にいいものですね。

それでは良いミュージックライフを。


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