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Archspire / Bleed the Future

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Archspireアーチスパイアは、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー出身のカナダのテクニカルデスメタルバンドです。2007年に別の名前(Defenestrated)で結成され、2009年に現在のバンド名に。超絶技巧を売りにするテクニカルデスメタルバンドで、前作はテクデス界隈で話題になりました。日本のエクストリームメタル系ブログ「あさってからでもいいかな」でも五つ星。そんな彼らの4年ぶり、4枚目のアルバムがリリース。テクニックとアグレッションの極北を目指した前作からどのような進化をたどっているでしょうか。先行リリースされたリードトラックを聴く範囲だと、テクニカルとアグレッションはそのままに楽曲としての魅力を高める正統進化している印象。早速アルバムの全体を聴いてみます。

活動国:カナダ
ジャンル:テクニカルデスメタル
活動年:2009-
リリース:2021年10月29日
メンバー:
 Oliver Rae Aleron (vocals)
 Spencer Prewett (drums)
 Dean Lamb (guitars)
 Tobi Morelli (guitars)
 Jared Smith (bass)

総合評価 ★★★★★

凄い。2021年バージョンの「Reign in Blood」というか、メタルという音楽で表現できるスピード、アグレッション、メロディの全要素を極限まで高め、融合させようという意思を感じる。テクニカルデス自体、超絶テクニックと攻撃性でメタルの中でも極北を目指すジャンルだけれど、その中でも「メロディアス」「聴きやすさ」という点で随一の作品。それでありながら、攻撃性、激烈性も失っていない。ひたすら激走するドラム。ネオクラシカルなギターフレーズの美しさ。飛び回る超絶ベース。そして高速活舌によるヒップホップのようなガテラルボイス。これはほかで得られない刺激。かなり極端な音像に尖っていながら、音楽的快楽、調整和音の美しさだとかいわゆる「メロディ、リズム、ハーモニー」の絡み合い、わかりやすい「音楽の快楽」も満たしている。超強烈でありながら間口の広さもあるという驚異の作品。流石に日頃まったくメタルを聴かない人には厳しいだろうが、ある程度スラッシュメタルを嗜む人や、モダンなメタルコアを好む人(だけれど極端なテクデスやブルデスは聞かない、というか区別がつかない)にも訴求できるのではないだろうか。

1.Drone Corpse Aviator 03:46 ★★★★★

遠くから迫ってくるような、ややプログな感じか、と思ったら激走。全然落ち着いていない、安定のクオリティ。とはいえ単に激走、テクニカルのためのテクニカルではなくメロディアスさ、曲構成はきちんと感じる。早いけれどきちんと人間が叩いている感じがある。クラシカルな音程が上下するフレーズ。激烈性はあるが暗黒感よりはアスリート的な肉体性、肉体の極限的な躍動感を感じる。途中から壮大な音響に。ギターハーモニーと包み込むような音響。壮大。これは凄い。スピーディー、アグレッション、メロディアスがそろっている。かなり大曲に思うが、4分ないぐらい。展開が異常に速いから長く感じる。

2.Golden Mouth of Ruin 04:05 ★★★★☆

アグレッションがあるが、前の曲よりはミドルテンポ、疾走感よりはもうちょっとどっしりしているが、足数、手数、口数は減っていない。言葉の歯切れが良い。吐き捨てるような言葉、高速ハードコアというか。ビートに対してかなりタイトで、ヒップホップ的なごろの良さ、活舌の良さによる快楽性がある。あと、基本的にボーカルメロディはない(吐き捨て)なのだが、コーラスというかユニゾン的なボーカルがあり、フックを作っている。ギターフレーズは結構ネオクラシカルというか、バイオリンでも弾けそうな優美なメロディを奏でている。そこからピッキングハーモニクスを混ぜた音が飛び跳ねるDjentジェント的なリフへ。曲展開が激しいので山あり谷ありのドラマが4分の中で展開される。いやぁ、情報量が多いですね。だけれど、曲としての輪郭はしっかりしている。

3.Abandon the Linear 04:35 ★★★★★

ドラムの手数は相変わらず、機械的な連打というか速度の限界に挑戦している感じがあるが、ギターは浮遊するような、アンビエント感もあるフレーズ。そこに早口のボーカル。ボーカルとドラムが激烈にビートを刻み、けっこうギターは優美だな。ベースはドラムに沿って激しく動き回ったり、ギターに合わせて空間を作ったりと活躍。このボーカルパフォーマンスは白眉。ゴリゴリとベースと絡み合う。テンションが劇的に高い。ギターはピロピロ速弾き一辺倒ではなくアンビエント的なフレーズも奏でるのでそこで緩急がついている。なんだろう、めちゃくちゃかっちりしたブラックメタル的な感じもある。しっちゃかめっちゃか。この曲は混沌が過ぎて悪魔的な感覚もある。いやぁ、超高速、超絶技巧プログメタルでもある。

4.Bleed the Future 03:48 ★★★★★

変わらず突き進む、ちょっとブルルン、ブルルンと、ケルベロスか地獄の馬が嘶くような響き。どうしても極北を目指すと似たような音像になるし、実際曲ごとの輪郭はそこまでない、というか、似たような音像が続くのだが、このドラムとボーカルの歯切れの良さが本能的に心地よい。テンションが下がらず聞いていられる。お、途中から展開した。短い曲で終わったかと思ったら少しテンポダウンし、そして大きくテンポダウンしてアルペジオによる静寂のパートへ。またそこから激走へ。いちいちこういう緩急が大仰で効果的。くっきりしていてわかりやすい。そこからメロディアスなソロへ。面白い響きだなぁ。ブルルン、ブルルン、という響きが耳に残る。

5.Drain of Incarnation 04:19 ★★★★★

アルペジオへ、超絶テクの中でギターが控えめ、メロディアスな比重が多いのがこのバンドの特徴だな。しかもメロディセンスが秀でている。そこから激烈なボーカルが入ってくる。ドラムとボーカルが激烈性を発揮し、オブリガード、装飾のピロピロ速弾きフレーズが差し込まれる。いやぁ、このサウンドはテンションが高い。ここまでスピード、アグレッション、メロディがそろっている音像はなかなか聞けない。途中からかき鳴らし、ブラックメタル的かき鳴らしとガテラルボイスへ。ただ、ガテラルの怒号よりは歯切れのよいフレーズを叩きつけてくる、吐き捨てている時間の方が長いが。うん、前作もよかった記憶があるが、今作はよりメロディの煽情性が上がっているな。かといって攻撃性が衰えていない。凄い。

6.Acrid Canon 04:08 ★★★★☆

お、ちょっとミドルテンポというかプログ色が強まった、手数は多いもののBPM的にはミドルテンポで浮遊感が大きい。大作的な感じ。ここから組曲的に繋がっていくのだろうか。Blood IncantationやRing Of Saturnを彷彿させるややスペーシーでフィクショナル、プログ的な響きがある。激走一辺倒ではなくインテレクチュアルな感じ。もちろん、今までの曲もすべて知的だったのだけれど、少しテンポを落として落ち着いたことでその色合いが強まった。ただ、テンポはさておき手数は多いな。足数も。途中からだんだんテンションが上がってきてほかの曲とそれほど変わらないテンションになってきた。最初一瞬気を抜かせただけか。ただ、この曲はしっかりとした構築性というか、ミドルテンポな分ドラマティックさがある。お、抒情的なソロが入ってくる。こういうソロは欧州HMの王道的なんだよなぁ。モービッドエンジェルとかも激烈性の中に突如、正統派HMなソロやリフが入ってきて印象に残ったが、そういう手法をうまく生かしている。

7.Reverie on the Onyx 03:46 ★★★★☆

最初アルペジオから、静か目にスタート。と思ったらボーカルが入ったら激走へ。前の曲よりも激烈性が増す。ややグルーヴィーな感じ、断片的なリズムでもあるがだんだん隙間が埋まってきて激烈性で埋め尽くしていく。かと思ったらまたメロディアスなリフ、上下するクラシカルなスィープ、あらゆる手法を用いて狂乱の宴が繰り広げられる。この早口ボーカルは凄いな。伝家の宝刀的な。ハイパーボーカリスト。今までの手法が総動員されている。これ、どういう頭で演奏しているんだろう。

8.A.U.M. 03:03 ★★★★★

ナレーションというか会話(寸劇?)からスタート。最後2曲で曲が少し短くなってきた。流石に疾走して駆け抜けるにはパターンが似てくるというか、集中力が弱まってくるが、そこで曲が短くしてより疾走感を増す、凝縮するという手か。この曲も同じようなパターンに感じるが緩急のつき方がよりダイナミックに。クラウトロック的なミニマルなフレーズの反復も出てくる。プログレ的な音像、だけれどベースが上下に超高速パッセージで飛び回る。ギターソロ、そしてドラムの連打。各楽器が舞い踊る中にボーカルが高速活舌ガテラルで入ってくる。ドラマティック。ネオクラシカルなフレーズが装飾で入り、嵐のように曲が終わる。

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