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Wolf Alice / Blue Weekend

先日配信されたグラストンベリーでもトップバッターを飾ったWolf Alice、4年ぶりの3rdアルバム。2021年リリース。マーキュリー賞を獲得した前作「Visions of a Life(2018)」に次ぐアルバムです。

出身国:UK
ジャンル:Alternative rock、indie rock、dream pop
活動期間:2010年(2013年デビュー)ー現在
メンバー:
 Ellie Rowsell – lead vocals, guitar, keyboards, synthesizers (2010–present)
 Joff Oddie – guitar, violin, synthesizers, vocals (2010–present)
 Theo Ellis – bass, synthesizers, vocals (2012–present)
 Joel Amey – drums, synthesizers, vocals (2012–present)

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1 The Beach 02:35 ★★★☆

ノックするような連続音からそのままミュートされたギターコードへ変わっていく。始まりを告げる曲。囀るようなボーカルが入ってくる。朝の光のように差し込んでくる。抑えるような、控えめなスタートながらだんだんとダイナミクスが上がっていく。

2 Delicious Things 05:04 ★★★★

オープニングたる前曲に次いでスタート。かなり夢見るような、サイケでFlaming Lipsのような夢見るような音。ボーカルが入ると少し音の輪郭が定まる。散歩するようなリズム。歌い方は囁くような歌い方から夢見るような歌い方まで。静謐で穏やかな感情ながらなんとなくブルーで夢見る心地。ガールズロックバンドの王道を行くような曲。ノスタルジック。

3 Lipstick on the Glass 04:08 ★★★★☆

曲間を空けずに次の曲へ。アコギのコード。そこにエレキギターのフレーズが入ってくる。RushのRoll The Bonesのリフに似ている(コードのアルペジオなだけだが)。いかにもUKロックなメロディ。トラッドの影響も感じる高低差の激しいボーカルメロディ。だが、コード進行はオーソドックスな感じで進んでいく。MGMTあたりにも通じる、開放感があるけれどどこか淡い、ブルーな情感。

4 Smile 03:17 ★★★☆

情景が変わる。ややデジタルロック的な質感、ダイナミクスが増してきた。デジタルなベース音が飛び回る。ゆらめく陽炎のようなコーラス。夏の日差しを思わせる。朝の目覚めからスタートしたとしたら、今は昼間、真昼間か。

5 Safe From Heartbreak (If You Never Fall in Love) 02:32 ★★★☆

アコースティックな音像へ。ただ、リバーブは少な目で日差しを感じる。ドリーミーな感じもあるが、1曲目、2曲目に比べるとくっきりした感じがある。歌い方は賛美歌的というか、コーラスも分厚く、声を荒げるでもなく、美しいハーモニー。

6 How Can I Make It OK? 04:47 ★★★★★

再びドリーム感が増してきた。弾むようなシンセポップ。これはこの前のグラストンベリーでやっていたのかな、聞き覚えがある。ややEnyaやDeep Forestあたりも連想する、ボーカルの多重録音による神秘的な音世界。2番のヴァースに入ると声に肉体感が増す。ドラムの音も勢いが増してくる。ただ、バッキングはかなり王道のポップロックというか、クラシックロックのような音作り。たとえばキャロルキングとか、カーペンターズとか。歌い方はもっと自由に羽ばたいている。ギターの音も重なってきた。だんだんとバンドとしてのエンジンがかかっていく。ブリットポップを感じさせる曲。

7 Play the Greatest Hits 02:28 ★★★★

急にパンキッシュな音像に。ボーカルだけはややキッチュ。飛び跳ねるようなパーティー感。ガレージかライブハウスで演奏しているバンドのよう。

8 Feeling Myself 04:44 ★★★★

一息ついて、黄昏る音像。ハーモニーで歌がスタート。初期Bjorkのような、キュートでポップでブルーな音像。少し奇妙な感じだけれど90年代的。揺れる穏やかな波のようなリズム。夕暮れの静かな海岸。

9 The Last Man on Earth 04:21 ★★★★☆

ピアノのコード、ボーカルが入ってくる。ピアノ弾き語りの音像からスタート。UKロック、ブリティッシュロックの王道的なバラード。たとえばエルトンジョンあたりを連想する。途中からバンドが入ってくる。ゆらめくような音像。コード進行は王道、メロディはしっかりと展開していくが浮遊感があるのはピンクフロイド的でもある。音が少しづつ重なってくる展開はボヘミアンラプソディ的(あそこまで各パートが極端ではない)。

10 No Hard Feelings 02:35 ★★★☆

ぽつんと取り残されたような、内省的な音像。とはいえ力強さはある、生命力や鼓動を感じるベース音。夜明け前に呟くような小曲。

11 The Beach II 03:40 ★★★☆

追憶、終わりを感じさせる。後夜祭。

総合評価 ★★★★

心地よく完成度が高い、ただ、目新しさはあまりない。90年代的というか、すでに使われた手法、さまざまなシーンが出てくるけれど、じゃあ具体的にどれか、と言われると組み合わせ方は新しい。ボーカルの個性もあるだろう。最近だとFleet FoxのShoreには近いものを感じる。アルバム全体の流れをしっかり感じさせつつ自然で、メロディも魅力的なのはロジャーウォーターズ後期のピンクフロイド的でもある(AnimalsやThe Wallとか)。王道で分かりやすいのだけれど聞いていくと情景が浮かぶ、的な。ふっと口ずさみそうなメロディが詰め込まれている。マーキュリープライズを取ったときに前作を聞いたのだが、だいぶ先祖返りした印象(ここ数年はヒップホップ系に受賞作が寄っていた)を受けたのだけれど、同じ印象。アルバムの完成度は高く、こういう音像が好きなら中身がしっかり詰まった名盤。

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