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Pinhas & Sons פנחס ובניו / מדובר באלבום

Pinhas & Sonsはイスラエルのバンドで、洗練されたジャズ・フュージョン的な音像に伝統音楽の風味も加味させた心地よい音楽を奏でています。聴いていて心地よいのでしばらくドライブ中の定番ミュージックにしていました。いくつかフォローしているNoteでも見かけて聴いてみたバンド。さすがいろんな方がおススメしているだけあって洗練されて楽しい音楽。個人的にはスペインのミクスチャーバンド「ojos de brujo」を少し思い出したりしました。いろんな要素を取り入れながら祝祭感がある感じが近い。あとは抒情派プログレバンドのキャメルを彷彿させる曲もありました。

ピンハス・アンド・サンズは、リーダーでキーボード&ヴォーカルのオフェル・ピンハスを中心とする九人編成(パーカッション、ドラムス、ベース、ギター、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴォーカル)が軸。イスラエルで2016年にファースト・アルバムを出していますから、そのあたりから活動しているんでしょうか。2018年作では大勢のゲストを迎え、観客を入れてのスタジオ・ライヴ形式で収録した模様。
イスラエル・ジャズを調べ始めて一番最初に好きになったバンドだ。
ライブ映像なんかはビフォーコロナ時代の至高といってもいいと思う。
複雑な構成にもかかわらず聴きやすい楽曲と、ふくよかな歌声がとってもいい。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.פרלוד
穏やかな音像、Camelあたりのプログレを彷彿させる
ドラムパターンの手数は多いが音像としては幻想的
ジャズロックというよりは穏やかな音像
★★★☆

2.Bound
ゆったりと管楽器が入ってくる、サックスとトランペットかな
そこに弦楽器、パーカッションが絡む
けっこう穏やかなフュージョン
ボーカルが入ってくる、うーん、思ったより勢いは少ないなぁ
オホス・デ・ブルッソ(Ojos de Brujo)の方が勢いがあったような、、、まぁまだ二曲目だし
フルートが入ってくる、フルートかなこれ
鳥のさえずりのような
むしろ70年代プログレ的な音像が入っているのが魅力的かも
先ほど挙げたキャメルの他にイエスとか、ジェスロタルとか、あとそこにフュージョン的な構成
プログレ耳として聞くと心地よい
音の展開の厚み、メロディの流麗さ、各楽器のハーモニーや響きの美しさは一流
もっと超絶技巧がバリバリのタブラビートサイエンスみたいなのを想像していたが、けっこう美しい音像
★★★★

3.ליל סתיו
アカペラコーラス、リズム、合唱でスタート
イスラエルのバンドだよな、何語っていうのだろう
ヘブライ語かな
フルートが入ってくる、優美
穏やかな音世界
コード進行はけっこう西欧、ヨーロッパ的
メロディ展開には中東的なものが出てきた、揺れるメロディというか
ただ、和音感はかなり整理されている
ヌスラットファテアリカーンのスワンソングみたいな、伝統音楽要素があるけれどかなり西洋(12音階)の和音で整理されている
★★★★

4.עץ שנופל
幽玄なパーカッションの響きから
ピアノとギターが入ってくる、少しベースがルート音にテンションをかける
フルートが入ってくる、優雅な密林、生い茂った何かを感じる、都市かもしれない
いくつもの要素が絡み合った構造物、美しいメロディが重なり合う
女声ボーカルが歌メロを囀る
この曲はブラジル音楽(MPB)的な感じも少し受ける、メロディが流麗
独特のコード進行、メロディ感、Lola Marshも流れるようなメロディがあったなぁ、イスラエル的なメロディってこういうものなのだろうか
この曲はフレンチポップス感もちょっとあるなぁ、コード感が変わるところとか、ちょっと語尾が鼻に抜けるところとか
密度と深度が濃い良曲
★★★★☆

5.פשוט
ドラムとパーカッションの絡み合いから、ベースが入ってくる
探る、掘り下げるような
軽快なフルートと、これはギターかな、が入ってくる
ボーカルが入ってくる、深夜のスムーズなドライブにも合いそう
途中、リズムが変わり、ちょっと演劇的というかユーモラスなパートに
ベースが戻ってきてグルーブを戻す、ギターソロが入ってくる
ちょっとサンタナ的な感じもするソロ
フルートが戻ってくる、ボーカルが入ってくる
ボーカルラインやリズムとの絡み方はブラジル的だなあ、ちょっとテンポもサンバ的というか、ダンスの足のステップがサンバでも合いそう
★★★★☆

6.מחול הטירוף
ノってきた、そういえば昔JAZZAMOR(ジャザモール)ってユニットがいたなぁ、Lazy Sunday Afternoonの日本盤を友人がリリースしたからよく覚えている
メロディの洗練具合は近いものがある
演奏技術や各楽器隊のアイデア量はこちらの方が格段に上だけれど
ボーカルの感じと歌メロの展開で少し思い出した
★★★★

7.דברים שאני שוכח להגיד בהופעות
かなりザッパ的な、語りと音楽が一致した寸劇のような曲
★★★

8.תמונה
女声ボーカルとピアノ、シャンソン的な、シャンゼリーゼなリズム
なんだかところどころフランス語っぽいんだよなぁ、鼻にかかる語尾というか
こういう言葉なんだろうか、ヘブライ語聞いたことがあまりないのだけれど
美しい小曲
★★★☆

9.שני שושנים
鼻にかかった声、歌い方が変わる、かなり中東的、北アフリカ的
こぶしが効いている、ゲストボーカルだろうか
パーカッションが入ってくる、かなりアラビック
イスラエル、から想起される音像がようやく出てきた
とはいえ洗練されていて諄さがある程度緩和されている
ピアノの穏やかなフレーズが出てくる
★★★★☆

10.לילה קר
フラメンコギターからスタート
男女のボーカルの掛け合い、緊張感がある
後半になるにつれて盛り上がり感が増してきた
前半は穏やかな抒情というか、演奏のダイナミズムはあるのだけれど美しさ、流麗さが前面に出てきたが前曲とこの曲は熱量が前面に出ている
★★★★☆

11.למה
ファンタジックなイントロ、映画音楽のような
そこから雰囲気が変わり、演劇かミュージカルのような音像に
のしのし歩くリズム、女声ボーカルが入ってくる、やや中東的なフレーズ
いや、バルカン音楽、ジプシー的というべきか
トルコは西洋と東洋がぶつかる場所だが、イスラエルも近いのかもしれない
オリエンタルメタルもイスラエルのOrphande LandとトルコのPentgramが影響を与え合っているし
地理的にも文化的にも(政治的にも)近いのかもしれないなぁ
トルコも脱イスラム政策を採っていたし、ロック音楽(より広く言えば欧米音楽)はイスラム世界ではあまり好まれないからね
穏やかな音像ながら熱はある、後半のほうがジャムっぽい
男女ボーカルの絡み合い、ボーカルと楽器のせめぎ合いなどがクローズアップされる
ただ、中東的な即興性やこぶし回しはあまり前面に出てこない
★★★★

12.כן זה חסר סיכוי
やや泣きのメロディのギター、と思ったらプログレ的なコード進行に
やはりキャメル的だなぁ
なんというか抒情的でスムーズに流れていくけれどコードは凝っているみたいな
南米的なリズムに変わる、サンバのリズム
ボーカルも上下移動が速く囀るような、鳥の声のような軽やかに舞い踊るメロディ
何かブラジルに縁があるのかな、多国籍バンドなんだろうか
単にボサノヴァ好きなのかな
ここまで血肉として取り入れるには何らかのルーツがありそうだけれど
ラストの曲、最後の饗宴感がある、これスタジオライブらしいから最後の曲、ラスト曲ということで盛り上がっているのか
スタジオライブと考えると確かに、後半熱を帯びてくるのが納得感がある
新曲をスタジオライブで録った、のかな、なんかそんなアルバムだったような
まだ2ndアルバムのはずだし
★★★★☆

全体評価
★★★★☆
とても洗練されている、これはスムーズだしいろいろな音楽のファンに訴求する
個人的にはもう少し中東色、北アフリカ色というかアクが強い方が好みだけれど、聞く場所や時を選ばない良盤
サラッと流せるけれど聞きどころも多いという、なかなかありそうでない音楽
一番影響を感じたのはプログレかなぁ、カンタベリーとか、一番はキャメル
テクニカル、という評もあったけれどそこまでテクニックは前面には出てこない、音楽としてのアンサンブルに集中している
リズム感とか凄いけどね、フュージョン的なキメとか、ところどころ出てくる装飾フレーズとかはさりげないがセンスとテクニックがある
ただ、楽器隊の鬼気迫るせめぎ合いみたいなものはほとんどない、全体としては最初は穏やかで、だんだん祝祭感、セレブレーション感が増していく
ああ、キャメルと言ったけれどイタリアのPFMにも近いかもな、セレブレーションだけに(PFMの代表曲の名前がセレブレーションで、祝祭感溢れる曲)
9曲目とかはイスラエルならではだけれど、個人的にはプログレとの共通項を一番感じた

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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