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Oversense / EGOMANIA

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オーバーセンスは2012年結成のドイツのバンド、ボーカル、ダニー・メイアーとYouTubeで知名度を得た女性ギタリストのジャスミン「ジャシーJ」を中心としたバンドで、女性メタルボーカルの先駆者、DOROとのツアー経験もあり。現在売り出し中の新世代メタルバンドです。本作は2作目。印象的なジャケットの通り、現在のソーシャルメディアの狂気、顔のないファッションや美容のインフルエンサーに焦点を当てたアルバム。他にも進行中の世界的な政治的混乱、未来のための金曜日(グレタ・トゥーンベリの環境保全活動)など、世界情勢をテーマにしています。メロディアスで魅力的なモダンメタル。初めて見かけたバンドですが、ジャケットに惹かれて1曲目を聴いたら予想以上に良かったので通して聴いてみます。

活動国:ドイツ
ジャンル:Melodic Power Metal
活動年:2012年ー
リリース:2021年9月17日
メンバー:
 Patrick Lippert - Drums (2012-present)
 Danny Meyer - Vocals, Guitars, Keyboards (2012-present)
 Jasmin Pabst - Guitars (2017-present)
 Marco Volpert - Bass (2012-present)

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総合評価 ★★★★

惜しい。ボーカルはうまく表現力があり声も魅力的。ギターもセンスがある。演奏もうまくアレンジ力も高い。曲の出だしは「おっ」と思う曲が多い。だけれど歌メロが弱い。センスがないわけではないのだけれど、なんというか予想の範囲内というか、コーラスをフックを作ろうとしたあまりにかえって説得力がなくなっている。一番曲の中で盛り上がるはずのコーラスが盛り下がるという不思議な状態に。メロハー的なポップさとメタル的な激しさが融合している面白い音像なのだが、この路線で行くならもう少し歌メロの工夫がほしい。あるいは、楽器隊が魅力的なのでもっとインストの比重とか、ボーカルと楽器隊がせめぎあうような展開を増やすか。アレンジのセンスは良く、「かっこいい瞬間」はたくさんあるのだけれど。惜しい。ただ、新人(といってももうすぐ10年だが)バンドならではのフレッシュさがあり、気楽に聞けて心地よいメロディックメタルではある。ポテンシャルは感じるので次作に期待。

1. Toast To The Devil 04:58 ★★★★

だんだん迫ってくるようなSEとリフ、スタートすれば歯切れのよいハードロック的なスタイルだが重低音とエッジは強め。ドイツらしいカッチリ感あり。ボーカルは力強いミドルレンジの声。USハードロック的なヴァースから、欧州ポップス的なメロディアスなコーラスに展開していく。メロディック”パワー”メタルと分類されている通り、メロスピではない。どっしりとしたミドル感だが、曲の骨子はハードロック的でもある。バックヤードベイビーズとかにも近いな、メタル的なエッジが経ったメロディアスなハードロック。ドイツなのでもっとカッチリしている。

2. The Longing 04:50 ★★★★

クワイアコーラスからスタート、これはパワーメタル的。1曲目のハードロック感から変わり欧州の薫りが強まる。ツーバスが空間を埋めていく。歌メロが入るところではメロディックハードロック(メロハー)的に変わるのが面白い。ボーカルがメロハー的なんだな。メロスピ、疾走感ありきではなく、歌メロ、歌モノの曲として成り立つアレンジと曲構造になっている。アコギのパートが入ってきたり、曲構造もアイデアが豊富。

3. Be 04:35 ★★★★

ちょっとエッジが経っているメロディアスなメタル、ということでハーレムスキャーレムとかにも近いのかもなぁ。あそこまで作曲にひねりはないが。フロンティアレコードから出ていてもおかしくない感じ。ベースとアルペジオとボーカル、メイデン的な構成。女性ボーカルが入ってくる、ゲストだろうか。HermaSickという女性ボーカルがゲスト参加しているようだ。なんだか懐かしい感じ、90年代、00年代にあったポップメタルというか。最近だとビヨンドザブラックにも近いな。女性ボーカルだから連想するのだろう。

4. My Eden 04:07 ★★★★☆

お、日本のV系のような勢いのあるリフ。悪い意味ではなくカッコいい。ボーカルが入ってくると世界観が変わる。ハードロックテイストがあるボーカル。このボーカルスタイルがこのバッキングと絡み合うのが面白いな。サビで転調感はなく、まっすぐそのまま展開していく、リズムもカッチリしているのがドイツ的。北欧だとコーラスで転調感が入りそう。コーラスのメロディセンスはある。もう一皮むけそうだが、フックはしっかりあって退屈しない。途中、一部猛烈なブラスト。かなりメロスピとかテクニカルなこともできるのに控えめに演奏しているんだろうな。メタリックさやブルータルさを抑えてハードロックな音像を奏でている、ところどころ間奏などで妙に牙を剥いてくる。

5. Tear Me Down 04:56 ★★★☆

ミドルテンポで進むハードロック的な曲だがリフはヘヴィ。ボーカルのヴァースが入るところだと音がハードロック的になるが、間奏部になるとエッジが強まる。歌メロの方向性は違うがディノ・ジェルシックとジョージリンチが組んだダーティー・シャーリーも少し思い出す。このメロディアスだけれど無骨な感じはThe Almightyにも近いかもな。Crankの前。

6. Love 05:11 ★★★★☆

シングルカットされたリードトラック。ピアノの静かな響きからスタート。そこからギターリフが入ってくる。アマランス的なシンフォニックでコンパクトにまとまったリフ。ボーカルが入ると静けさを増す。このあたりの控えめになったときに音作り、全体的な音作りにはどこかドイツ的なファンタジックさ、ブラガとかああいうバンドに通じるものを感じる。お、サビで転調感があるな。これは北欧的な感じもするが、歌メロはちょっと違う。パワーウルフ的かも。いい曲。サビをかっちりしたリズムで連呼するのはインダストリアル感もあり、ラムシュタイン的でもある。あそこまで攻撃性はないが。

7. Faith 05:36 ★★★★☆

少しオリエンタル(和風と言えば和風、中華風かも)なオープニング。そこから疾走感というかブラストビートに。いかにもメロスピな始まり方から抑えたヴァースへ。これも女性ボーカルがゲストに来ている。ゲストはUlli Perhonenだそう。これはメロスピ感がある。Dragon Forceとかにも近いかも。オリエンタルというよりケルティックなのかな、コーラスは少しゲイリームーアのワイルドフロンティア感がある。

8. Rave In Hell 03:36 ★★★★☆

ディスコ的というか、ジャーマンポップ的(ジンギスカンとか)のちょっとコミカルな感じのリフ。フィンランドのLordiとかにも近い。パーティーメタル感がある。思わずノッてしまう魅力がある。アルバムの流れの中でちょっと違うビートだからかな、ほかの曲との対比で違って聞こえる。

9. Antisocial 04:59 ★★★★

また雰囲気を変えてスピーディなリフ、かっちりしたアンサンブルで迫ってくる疾走メタル曲。ボーカルが入ってくるところでは一度ギターが引いてしっかりボーカルに焦点を当てるのがいい。バンド全体が有機的にコミュニケーションしている感じがある。パフォーマンス、編曲ともにいいのだけれどコーラスの歌メロがあと一歩。あと少しでキメ曲感があるのだが惜しい。コーラスが凡庸で並みの曲になってしまっている。

10. Memories 04:45 ★★★☆

パワーバラード。歌いだし、曲の始まりは魅力的ながらコーラスが弱め。これはメロディセンスの好みにもよるだろう。曲としては魅力的な瞬間も多く、全体的な音像としてはカッコいいのだがサビに説得力が少ない。

11. Extinction 07:03 ★★★★

ややダークなピアノから、ボーカルが入ってくる。低音域でメロディが展開する。ボーカルの表現力は高い。このままバラードで行くのかと思ったら突然疾走に、ツインリードがメロディを奏でて疾走していく。この展開は恰好良い。間奏は魅力的。歌メロが弱い。後半、クワイアが入ってくる。アレンジセンスもいいのだけれどなぁ。7分という長尺な曲ながら聞かせきる力はある。

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