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SKÁLD / Vikings Memories

以前、こちらの記事でも紹介したSKÁLD、2020年リリースの2ndアルバムです。北欧伝統音楽をモダンポップスの手法も取り入れて洗練させた作品。中央アジア的な喉笛もあったり、さまざまな伝統音楽の影響を取り入れつつ基本はバイキング音楽。とはいえポップさに振った曲ではEnyaにも通じる音像もあったり。心地よい良盤です。

skáld(スカルド)は2018年デビューのフランスのグループです。作曲家/プロデューサーであるChristophe Voisin-Boisvinetが3人のボーカルを集めて結成、2019年にデビューアルバム「Vikings Chant」をリリース。ドイツで55位、フランスで33位にチャートインしました。スカルドとは北欧の初期の吟遊詩人のことで、彼らの世界観はスカルド詩人に倣っています。そのため、歌詞はノルウェー語、古代ノルウェー語です。

The HU meets Blackmore’s Night的な曲をどうぞ。この両バンドのファンなら気に入ると思います。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補


1 Fimbulvetr 3:17
遠くから櫓を漕いでくるようなリズム、波の音、反復する不思議な和音
打楽器と女声が入ってくる、呼応するように低い男声
二つの声が絡み合う、ゆっくりとしたトライバルなリズム
繰り返されるメロディ、女声の後に低音の男声
心地よい、暗黒感はないが儀式的、典礼的
船を漕ぎながら歌うのだろうか、あるいは篝火の周りを囲んで歌うのか
どこか焚火の温かさもある
ボーカルメロディは多重に立ち上がるか音作り自体はシンプル
風の音と共に去っていく
★★★★

2 Jörmungrund 3:35
風か、風雨、波の音
男声の声、掛け声、そのリズムにのって女声が入ってくる
船漕ぎ歌か、めぐるようなメロディ、ポリフォニー
声が絡み合い枝を伸ばす、木の幹が伸びていく、生命力を感じる
海、船は波を超えて進む、それは海なのか時の流れか
喉笛的な、倍音の声が出てくる、ホーメイの低音版というか、これは良い声
ポリフォニー、さまざまな声が絡み合う、自然界の縮図だろうか
美しいメロディの楽器の音も入ってくる
呪術的な響き、だんだんと声が大きくなってくる
テンポ、言葉数はそれほど多くないが豊饒
★★★★★

3 Grótti 2:53
トライバルなリズム、勢いよく鳴り響きメロディアスな伝統楽器によるリフ
低音の多重の男声と、それに呼応するように多重な女声が入ってくる
メロディが美しい、バイキングのメロディではあるのだが、バリエーションが多い
中央アジアあたりのメロディも少し感じる、ロシア、東欧由来だろうか
中央アジア、ウズベキスタンだったかな、HassakというバンドをYoutubeで知って気に入っているのだが音像が近い
リズムが力強い、パワーメタル的な構成と言えばそうも聞こえる
分類によってはフォークメタルにも分類されるようだがレーベルはDeccaのようだ
基本は伝統音楽に忠実だが迫力がある
★★★★

4 Norðrljós 3:21
少し遠くで響くようなリズム、懐かしいメロディ
歌が入ってくる、美しいメロディだ
これはスウェーデンだったか、フィンランドだったか
透明感がある、低い男声が効いている、大地の精霊か狼か
北欧神話、中世の世界。森の民
ブラックモアズナイトの世界をさらに森の奥に迷い込んだような
ワルツのリズムだが、宮廷のドレスアップされた踊りではなく篝火を囲んで踊る牧羊神の踊りだ
リズムはドラムはない、パーカッションだけ、今まですべての曲がそう
バスドラと鳴り物、それぞれ別の人が叩いているのだろう
プリミティブなリズムだが低音の迫力がある
★★★★☆

5 Sækonungar 3:19
力強いリズム、男声の掛け声が入ってくる
これは船ではなく田植え歌だろうか、バイキングとはいえ農耕文化もあったはずだ
少しミドルテンポ、人が足を踏み鳴らすような、あるいは船を漕ぐときのリズムも様々だから漁の歌なのかもしれないが
リズムがいろいろ出てくるがどこまで伝統に忠実なのだろう
メロディは過度な転調はなくオーソドックスなのだが陳腐な感じがない、確固たるルーツ、根を感じて力強い
自然に、水がしみこむように入ってくる
男声、打楽器の低音がエッジが聞いていて迫力がある、こういう音楽で低音の迫力があるのは貴重
★★★★

6 Þistill Mistill Kistill 3:05
打ち鳴らすリズム、男声コーラスが掛け声をかける
掛け声とともにリズムが停止する、狩りだろうか
息をひそめ、近寄るような、とはいえ抒情的
戦闘、戦争まで混沌感はない
秩序がある勇壮さ
呪文のような響きは曲のタイトルか
「Þistill Þistill Mistill Mistill Kistill」と言っているのか
どういう意味なのだろう、耳に残る
★★★☆

7 Sólarljóð 3:14
女声アカペラからスタート、優美なメロディ
ハープのような音とドローン音、弦楽器だろうか、が入ってくる
吟遊詩人の歌のような
あるいは天女の詩か
★★★☆

8 Víðförla 3:40
ふたたび喉笛が出てくる、旅立ちか、勇壮なリズムが出てくる
先ほどの曲は一休みだったのか、たしかにいいアクセントになった
また新たな旅の始まりを感じる
笛の音、踊るような、弾むような、収穫祭だろうか
明るいフレーズの笛の音が入ってくる
足を上げて踊る、ポルカ? ワルツ? 何のリズムだ
町人の踊り、牧夫の踊り、村娘の踊り、手を出して互いを誘う
そのシーンから遠くに飛ぶようなコード、過去と現在か、やや俯瞰でみるような
物語性を感じる、ただの踊り場ではなく、そこから少し離れる展開がある
祭りの喧噪と、その少し外側を行き来する
★★★★

9 Hafgerðingar 3:11
何かが迫ってくるような、やや荘厳な、宮殿での王の登場のような
舞台が変わった、演劇性がある
行進するような、死の足音のような
そこまで暗黒的ではないが、迫りくるものを感じる
中世的な音楽観だが、あまりファンタジックなイメージよりもっと生活に根付いた音楽な気がする
その生活は中世的なものなのだが、人の本質はそれほど変わっていないだろう
現代的ではないかもしれないが、身近な生活の感情を全体的に歌っているような気がする
ファンタジックさより日常、息づいている音楽という感じがする
★★★★

10 Í dansinum 2:45
変わった感じがするコード進行、フレーズごとにコードが入れ替わる
今度は男声が主、クリアトーンでどこか穏やかな声
女声がハーモニーで入る、言葉のリズム、節回しが呪文的で面白い
何語だか分からないのでまったく意味が分からない、響きが効きなれないのもあるが、節回しや単語を一定の音節ではっきり区切るのが呪文的
フィドルのフレーズが前面に出てくる
★★★★

11 Nýr 3:58
はずむピアノ、ボーカルが入ってくる
オペラのような、民謡のような独特な響き、コードが進行していく
美しいメロディ、リズムが入ってくる、特に低音が効いていて力強い
独特なメロディ、今までの曲と少し毛色が違う気がする
少しアジア的、中国的な琴のような音、ハープなのだろうが、音程がアジア寄り
歌メロも少し無国籍というか、懐かしいのだけれどどこか新鮮さがある
Enyaにも似ているな、アイスランドだったか、スウェーデンだったか
メロディが少しモダンになった、ということかな
浮遊するような、語りが入る間奏、雲間を漂うような
終曲
★★★★

全体評価
★★★★☆
1stも高品質だったが更に成長した2nd
伝統楽器、伝統音楽のフォーマットに則しながら現代の音楽としても魅力的
音作りがハキハキしていて低音の迫力があるのもいいし、曲も比較的コンパクトにまとめられつつきちんとドラマがある
派手な演奏技巧に頼るより、きちんとメロディで曲が進行していくのも良い
ポリフォニー的な魅力、低音ボーカル、男声の喉笛的な音が入ったり、さまざまな声が入ってくるのは面白い
そういえば途中で気が付いたEnyaにも通じるところがある
シンセ感はなく、生楽器による音色だが、曲そのものは通底する部分があるのだろう
架空としてのファンタジーではなく、実際に中世に根付き、息づいている日常の音楽を感じた
後半やや息切れするのが残念だが、美しいアルバム

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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