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Haunt / Beautiful Distraction

欧州のバンドかと思ったらアメリカのバンド。AX7もこういう欧州メタル的な音像を取り入れてたし、こういう流れが来ているのでしょうか。2017年デビューということでかなり若手の様子。フレッシュでいいですね。自主制作アルバムの様子。2018年から2021年(今作)まで5枚もアルバムを出していてかなり多作。どんどん曲が出てくる多作型で天才肌のアーティストなのでしょうか。

2021年リリース。

1.Beautiful Distraction 4:07 ★★★★

独特な哀愁があるメロディ。スラッシュかと思ったら意外と哀愁ハードロック路線。とはいえちょっと音は荒々しくて疾走感がある。昔の(過度に商業化する前の)LAメタルみたいな感じか。ツインリードの絡みも良い。もしかして北欧なのかな。ハノイロックスとかワイルドハーツとかバックヤードべイビーズとかTherapy?とか、あのあたりのちょっとマイナーが混じるメロディ。

2.In Our Dreams 3:37 ★★★★☆

いかにもなリフ、Judas Priest的な。ボーカルはややゴシックというか、肺トーンでガンガン行くより雰囲気と味がある中音域といった色合い。2019年ベストアルバムにも選んだIDLE HANDS(そういえばバンド名変わってたな)の「MANA」もちょっと思い出す。ギターフレーズがかなりメロディアス。この辺りはNWOTHMの流れというか、RIOT CITYとかENFORCERとかあのあたりの空気感もある。メロディもいい感じ。

3.Fortune's Wheel 3:44 ★★★★

ギターフレーズがいい。ボーカルもちょっとヘタウマ的ですが、味があります。これはワイルドハーツ的。ちょっとこの曲は少し変わったスケールというか、ソロでは揺れるような音階を使っていて印象が違う。とはいえ、しっかりとフックがある歌メロを作れるのはさすが。プロダクションは悪いけれど楽曲の質は高い。キーボードとかギターとか、編曲のアイデアも豊富。

4.Face Of Danger 4:04 ★★★★☆

ツインリードのギターフレーズから。手作り感があっていい音。Tanithにもこんな感じありましたね。あれはベテランの味があって、こちらは初期衝動というかもっとフレッシュな感じがしますが。いやぁ、2021年にこういうアルバムが出てくるのは素晴らしいなぁ。最初1曲だけかと思ったらここまで曲のクオリティが下がらない。なんというかさわやかなメロハーとも違う哀愁があるんですよね。なんだろこのツインリードの感じ、THIN LIZZYとも違うし。やっぱりアメリカンなのかな、カラッとしてる。サクッと流れていく割にはけっこうキメフレーズも多いし。さりげなく凝ったことをしています。

5.Sea Of Dreams 4:07 ★★★★☆

始まりは今までと近いメロディアスなギターフレーズだったけれど、ボーカルが入るとちょっと雰囲気が違い疾走曲に。メロスピ的。ただ、ドラムがツーバスどこどこというよりは疾走ロックンロール感があるんですよね。スラッシュというか。高速ツービート感。メロスピというよりメロコアか。サビだけ一部メロスピ感があるけれど。

6.Keeping Watch 3:42 ★★★★☆

ちょっと違ったメロディ展開。いやぁ、どの曲もメロディがいい。すごいですね。プロダクションは悪いけれど、Misfitsとか、なんというかアンダーグラウンドの薫りがしつつ歌メロが良い。Ghostとかにも近い空気感なのかな。Metallicaの一側面も感じる。欧州メタル+ハードコア(メロコア)的な。ソロも潔くてかっこいい。ライブ観たいなあ、ライブハウスで。

7.Imaginary Borders 4:01 ★★★★☆

なんというか記憶を刺激してくるツインリードからスタート。とはいえ懐古だけでなく歌メロが入ってくるとモダンな感じがある。というかむしろ一周回ってこれが新しいのだろうか。完成度が高いなぁ。ちょっとスラッシーでメロコア的。刻みが多くてギターがメタリックなバッドリリジョンみたいな...。ツインリードのリフが絡み合い、そこにソロが乗ってくる。ベタながらツボを押さえた展開。次々と波状で技が繰り出されてくる。音と展開の密度が濃いです。ボーカルがヘタウマなのがまた味わい深い。かえって懸命さとか、青臭さが出ていて胸に来ます。

8.A Fool's Paradise 3:58 ★★★★

シンセの音からツインリードのギターフレーズに。ちょっと落ち着いたテンポではあるがそれでもそれなりに軽快に進んでいく。そういえばバラードがないな、どの曲もけっこう疾走していきます。快楽に特化した、ツボを押さえた曲作り。リフの絡み合いやボーカルメロディなど、かなり練り込まれた楽曲群に感じます。歌メロのセンスが誰かに似ているんだよなぁ、、、さっきからいろいろなバンドが出てきているのだけれど、本丸がまだ思い出せていないような...。グリーンデイとかのメロコア系? うーん。

9.Hearts On Fire 3:27 ★★★★

ちょっとメジャーキーで、ドタバタ感がある疾走曲。これは面白いな。スラッシュ的な。コーラスがめちゃくちゃ郷愁を誘う感じ。これはいいアルバムだなぁ。作り手が全熱量を封じ込めているのがよく伝わってきます。手作り感があるからダイレクトに。うますぎないギターがちょうどいい感じ。適度なピロピロというか、これぐらいでも十分曲の緩急はつくんですよね。

10.It's In My Hands 3:54 ★★★★

メロディアスなギターフレーズから。どの曲もフォーマットは似ているけれど、それぞれキャラクターが立っている。リフや和音の組み合わせ方がうまいです。ボーカルメロディも似た感じもありつつどの曲も他の曲とは違う個性がある。ちょっと「YouはShock」を連想するリフ。ボーカルはちょっとニューウェーブ感もある。それほど朗々と力強い感じじゃないんですよね。ちょっと鼻にかかっているというか。それがゴシックとかニューウェーブっぽさにつながる。Creeperとかにも近いかも。

総合評価 ★★★★

プロダクションは甘い、自主制作のクオリティ。だけれど、それを補って余りある曲の良さ。どの曲にもアイデアと全霊が込められていて聞いていて心地よい。Ghostの1stなんかにも近いかも。このバンド、前作が一部界隈で話題になっていてジャケットに見覚えがあったので聞いてみたのですが、掘り出し物ですね。80年代~90年代初頭のメタル好きに聞いてほしい1枚。

前作


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