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Bomba Estéreo / Deja

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ボンバ・エステレオは、2005年にSimón Mejía(シモン・メヒア)によってボゴタで設立されたコロンビアのバンドです。彼らの音楽は「エレクトロトロピカル」または「サイケデリッククンビア」と呼ばれています。もともとコロンビアのオルタナティブロックバンド、Charconautasのメンバーだったメヒアが2001年ごろに仲間のミュージシャンやビジュアルアーティストと組んだコラボプロジェクトAM707が前身。2005年ごろまでにAM707はメヒアのソロプロジェクトとなり、2005年にボンバ・エステレオに改名。ほぼソロ作品としての1stアルバム「Vol. 1(2006)」をリリースします。その後、1stアルバムでゲストボーカルとして参加した女性ボーカルのLi Saumet(リリアナ・ソウネ)をボーカルに迎え、他楽器もメンバーを迎えてフルバンドに発展、現在まで活動しています。ライブ活動を通じてファン層、活動範囲を拡大してきたライブバンドで2009年のSXSWへの出演を皮切りに各種フェスなどに出演し、2011年には米国のコーチェラフェスティバルとオースティンシティリミッツミュージックフェスティバルなどの有名大型フェスに加え、「ロックエンエスパニョール(スペイン語圏のロック)」の世界的な主要フェスティバルであるメキシコシティのロラパルーザチリや、バイブラティーノフェスティバルにも出演、ソニーミュージックとの契約を獲得します。

本作は6作目のアルバムでソニーミュージックからのリリース。名前は知っていたのですが聞くのは初めて。Allmusicの新譜でピックアップされていたので目に留まりました。それでは聞いていきましょう。

活動国:コロンビア
ジャンル:エレクトロ、クンビア、オルタナティヴダンス、サイケデリックポップ
活動年:2005-現在
メンバー:
 Simón Mejía - Ba/Programing
 Li Saumet - Vo
 ※上記2名が中心メンバーで他は流動的
 Andrés Zea
 Efrain Cuadrado
 Jose Castillo

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総合評価 ★★★★☆

どの曲も心地よく、ビートが体に沁みてくる感覚がある。ラテンポップスとして1流のメロディもあり、2,4,10などは一聴して耳を惹かれる。ダンスフロア仕様の曲もあり、踊れて浸れる1枚。ただ、後半になるにつれてちょっとテンションダウンしてしまい、アルバムを通して盛り上がる流れというよりは単曲の連続になってしまっているところが惜しい。1曲だけ抜き出せばどの曲も「おっ」と思うフックがあるのだけれど、並べて聞いたときにはだんだん聞き飽きてくるというか、心地よいのだけれど集中力は途切れてしまう点が惜しい。とはいえ、クンビアの独自のリズム感と、良質なラテンポップスのメロディ、丁寧に作られたエレクトロサウンドを味わえる良盤。

1 Agua ★★★☆

呪術的なアカペラハーモニーからパーカッションが入ってきて祝祭感が出てくる。鳥のさえずりが入り、解放感が増す。電子音が入ってきてボーカルがラップに変わる。オホスデブルッソ(Ojos de Brujo)っぽい。フラメンコとヒップホップを混ぜた「jipjop flamenkillo」とも呼ばれるバンド。2011年に解散してしまったがこうしてレガシーは受け継がれていくのだな。開放感のある波の音で終わる、イントロ的な曲。

2 Deja ★★★★★

蠢くベース。ああ、確かにベースとボーカルが核のバンドなんだな。ベースとビートがグルーヴを作り、歌謡曲的なギターが入る。メロディアスで反復するボーカルが入ってくる。ディスコ的、80年代的なチープなデジタル音が入る。どこか郷愁、哀愁があるのはフラメンコ由来か。抑制された熱量の中に哀しみが潜むダンス音楽。

3 Como Lo Pedi (Ft. Leonel García) ★★★★☆

哀愁のメロディ、切々と歌われるボーカルメロディ。つま弾かれるギター。ミニマルなフレーズを反復する。サンプリングされたようなフレーズ。デジタルドラムでトライバルなビートが入ってくる。勢いがあるボーカル。A-WAなどの女性コーラス、ポリフォニーにも近いエネルギーがある。が、もう少し音の密度は低く、引き算の美学的なものを感じる。ビートとボーカルが強く、他の音は和音を想起させる程度に引いている。最初「コロンビアのMIA」と言われたそうだが、確かにMIAにも近い。骨組みに解体していくような感覚(ただ、極端に前衛的ではないのできちんと輪郭、和音感はある。音も極端に少ないわけではない。音を”引く感覚がある”というレベル)。けだるげな男性ボーカルがゲストボーカル。ただ、ラテン的なエロディシズムはあまりない。男性のけだるさにはややセクシャルな感じがあるが、女性ボーカルは歯切れが良いし、ビートも勢いがある。

4 Soledad ★★★★☆

ラテンポップス。歌いだしのメロディからして掴みが強い。良いメロディ。いかにもフラメンコ、スペインポップス由来のメロディだけれど、極端に情熱的ではなく情熱が抑制されている。それは歌い方もそうだし、音に隙間が合ってデジタルビートだからだろう。冷静さを出している。ちょっとニューエイジ、アンビエント的な音も入ってくるし、冷静さと情熱が混在していて平熱のままで少しづつテンションが上がっていく感じ。こういうのはライブだと盛り上がる。Soledadとは”孤独”という意味。

5 Se Acabó ★★★★★

テクノ、トランス的なデジタルビート。その上につま弾かれるギターのフレーズ、クンビアのリズムか。トライバルなクンビアビート。抑制のきいたビートと熱量のあるボーカル。哀愁のメロディ。豊穣なビートとメロディが酩酊感をもたらす。これはこのバンドのサウンド特性をよく表している。

6 Conexión Total (Ft. Yemi Alade) ★★★★

エレクトリックなトロピカルなサウンドの上に歯切れのよいラップボーカルが乗る。いかにもラテンポップス。最近のラテン的なビート、レゲトン的。そういえばクンビア、サルサ、レゲトン、メレンゲの違いがきちんと分からないな。こういうのを最近のラテンポップスでよく聞くが、これはクンビアのリズムかな。よく聞いているとなんとなく違う感じは受ける。

7 Tamborero ★★★★☆

どこか物寂しいデジタル、シンセリードからボーカルが入ってくる。ニグロアメリカン的な歌唱。ビートはクンビアだな。これはベタ。ズンタタズッタン、ズンタタズッタン、とリズムが続く。ボーカルは男声合唱が主体。ダンサブルでフロア仕様の曲。ビートが強めで、ビートに対する装飾音としてその他が機能している。ラテントランス。思わず体が揺れる。

8 Lento ★★★★

民謡的なシンセフレーズから。ちょっとエスニックなメロディ、ボリウッド感が歌いだしにはあるな。ちょっとアンビエントで控えめなトラックの上にメロディアスなボーカルが踊る、というパターンは最近のボリウッドにも多い。同じフレーズを反復するコーラスもそう。言葉の壁を越えて音として耳に残る。前曲と基本リズムは同じ、ズンタタズッタン、ズンタタズッタン、と続くがこちらは控えめ。これがクンビアの基本リズムか。

9 Tierra ★★★★

控えめなクンビアリズム、その上に言葉数が多いボーカルが入ってくる。Tierraとは”地球”という意味のスペイン語。そういわれるとシンセの音が自然の呼び声のようにも聞こえる。もののけ姫のコダマの音のような、どこか丸みがあるシンセ音が響く。木琴的というか。デジタルなのだけれどいくつかの南米伝統楽器を想起する音。曲調は抑えめでクールな質感。火照った体を冷ますような。

10 Amor Amor ★★★★☆

抑えめのビートだがやや前の曲に比べるとビートが強い。ギターのミニマルなフレーズの反復。何気ない曲だけど店だったりラジオで流れていたら耳が惹かれる曲。音にフックがある。体が動いてしまうビート。

11 Profundo ★★★★

こちらはヒップホップ色が強い。クンビアヒップホップ。ラテンアメリカ音楽は豊穣だ。聴いていて心地よいし、それぞれ個性がある。このアルバムは聞いているとビートが体に沁みてくる感覚がある。それほど押しが強くないのだが、適度に刺激的で体に沁みこんでいく、栄養素のような。Profundoとは”深い”という意味。

12 Ahora ★★★★

鳥のさえずりとナレーション。ナレーションにハーモニーが入り、トロピカルなリズムが入ってくる。このアンビエントで探るような人懐っこいシンセ音が特徴だな。これでダンスミュージックを奏でる、抑制された、ずけずけと踏み込んでこず適度な距離感を感じさせる音作り。波の音と共に去っていく。

13 Mamo Manuel Nieves (Sierra Nevada de Santa Marta) ★★☆

波の音、鳥の声、男性ナレーション。このアルバムは自然をテーマにしているのだろうか。海の音、鳥の声は全体を通じて入っている。ナレーションで語るだけの曲。

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