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Tetrarch / Unstable

Tetrarch(テトラーシュ)は2007年結成、2017年デビューのアメリカ、LAのバンドでニューメタルの復権を果たしたと評されているようです。本作は2021年作の2枚目。

1.I’m Not Right 03:46 ★★★★

ノイズから今どき、というか、2000年代以降、2010年代のUSメタルのレガシーをしっかり受け継いだメロディアスなボーカル。ただ、メロディセンスは良い。リズムの歯切れがよく、アグレッションも強いがバックに流れるキーボードの音が優美さ、抱擁感を出して全体としてはバランスの良いプレゼンテーション。あと、コーラスはフックがあるもののつながりが自然でわざとらしさが無い。コーラスだけ大仰にメロディアスになる感じではなく、ヴァース、ブリッジの延長線上にある。ボーカルがあまり前面に出すぎていないのも良いかもしれない。それなりに随所でけっこう激しくグロールもしているがギターのエッジと混ざっている。

2.Negative Noise 04:07 ★★★★☆

緊迫感を出す高音で一定の音階がドローンのように続く、それを支えるリズミカルなリフ。リズム感がイキイキしている。全体が一丸となって波のように押し寄せる。ちょっと90年代のUKロックメタル、そうだなぁ、Therapy?とかを思い出す部分もある。確かアメリカのバンドなのだけれど。移民かな。うん、メロディセンスが90年代UK的なところがある、WildheartsとかTerrorvisionとか。音作りは今のUS的で容赦ない、機械的な感じだけれど。ところどころにピッキングハーモニクス、ジェント的な金切り音が入る。そこからギターソロは意外とギターヒーロー然としている。

3.Unstable 03:27 ★★★★

飛び回るシンセ音、からリズムがなだれ込んでくる。ボーカルが入ると落ち着きを取り戻し、整合性の取れたグルーヴィーでミドルテンポなパートへ。過度に大げさではないがメロディアス。ポップセンスがいいな。こういう系等のバンドをそこそこ聞いてきたが一番センスの良さを感じる。個人的にはメロディ展開がツボ。

4.You Never Listen 03:20 ★★★☆

前の曲と雰囲気が近いがメロディアスなスタート。メロディアスなパートとアグレッシブなパートのつながりが自然で上手い。この曲はけっこうボーカルもメロディアス。マイケミカルロマンスとかにも近いのかな。ただ、ボーカルはけっこう統制は取れていて、エモ、グランジ的な絶唱ではない。それなりにグロール、スクリームは駆使するが統制は取れている。

5.Sick of You 03:18 ★★★☆

ゴリゴリとしたリフだがどこかスペーシーな響きがあるのは上にのるシンセか。ややシューゲイザー的な、霞がかったような音像もある、ちょっとリバーブをかけてエッジをまろやかにしているせいか。この曲はいかにもメタルコア、ニューメタルといった曲。コーラスのメロディが自然につながっていく。Linkin ParkのMeteoraを思い出した。その後大量のフォロワーが出たが、ややスペーシーな感じ、シューゲイズというか酩酊感があるのが現代感か。あと、歌メロのセンスがいい。

6.Take a Look Inside 03:51 ★★★☆

反復するリフ、Metallicaのように執拗にリフを繰り返す。ボーカルが入ってくる。ラップのようなリズミカルなボーカル。からのメロディアスなパートへ。ややプログメタル的なメロディ。展開もけっこう変わっていく。グルーヴィーでヘヴィなパートに転換。かなりテンポ遅めのブレイク。この辺りのアグレッションはUSならではか。ジェント的でもある。

7.Stitch Me Up 03:32 ★★★★

ラジオノイズのかかったギター、からバンドが入ってきてグルグルと酩酊するようなリフ、グルーヴ・メタル。こういうリズムもNuメタルの特徴なのかな、ちょっとファンキーというか。コーラスが合いの手を入れる。シンガロングなコーラス。この曲は80年~90年代のアリーナロック感もあるメロディ。そこに2000年代以降のメタルの表現語法が加わっている。

8.Addicted 04:27 ★★★★

ミドルテンポで刻むリズム、少しだけ跳ねているが全体としてはけっこうどっしり進んでいく。メロディもじわじわ展開していく。アリスクーパー的というか、爬虫類的なボーカル展開。蛇が這い寄るようなじわじわと続くコーラス。ギターソロへ。ふと思ったが、スキッドロウがサブヒューマンレースで作りたかったのってこういう音像だったのかな。ヴァースが終わり、一瞬の空白の後再びコーラスへ。這うように進んでいく。

9.Pushed Down 02:49 ★★★☆

勢い良いドラムから列車のような、前進するリフ。ミドルテンポで曲が動き出す。緊迫感がある歯切れの良いボーカル。メロディもそれほど展開するわけではないが、少ない音程移動ながらフックがある。ギターソロ。ツインリード。そこからコーラスが再び鳴り響く。

10.Trust Me 04:20 ★★★

空間的な残響のある、静けさのある不穏な音空間、つぶやくような歌声。空気感を残したままバンドが音圧を上げる。ヘヴィでダークなバラード。ボーカルが節回しを強く聞かせる。ボーカルが爬虫類感を増しつつ執拗に迫ってくる。マリリンマンソン感。

全体評価 ★★★★

こうした系統、ニューメタル、メタルコアの中ではメロディセンスが良い。ちょっと90年代UKのバンド群に近いものを感じたり。メロコア的なのかもしれないが。ヘヴィなパートとメロディアスなパートが分離しておらず自然に流れていくし、ボーカルもグロールとメロディアスなパートの織り交ぜ方が自然。「キャッチ―なサビ」を主眼に他を作るというよりきちんと「1曲」としてドラマを作っている。似たように聞こえる曲もあるがそれなりバリエーションもあり、曲を聞かせるパターンも数パターンあってマンネリではない。面白いバンド。良質中身のわりにジャケットがあまり良くないなぁ。こういうジャケットがセンスが良いとされるのだろうか。そういえばBring Me The Horizonも初期のアルバムのジャケットはどうも良く分からない。

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