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Accept ‎/ Too Mean To Die

ジャーマン・パワーメタルの雄、Acceptの2021年作。本来は2020年4月に来日していたはずだったのですが、2021年1月に延期になり、さらに再延期...。本来はそこで3rd「Balls To Wall」と4th「Metal Heart」再現ツアーの予定だったのですが、次の来日だと新譜中心のライブになるのでしょうか。

さて、今作は長年ベースとしてバンドを支えてきたピーター・バルテスが脱退して初のアルバム。これで残るオリジナルメンバーはGtのウルフ・ホフマンのみ。けっこうこれがサウンドに変化を与えていて、一言でいうとAccept色が薄れた。代わりにボーカルのマーク・トーニロの色なのかな、ちょっとUS色が強くなっています。なんというか、モダンで良質なメタルではありますが、Acceptらしい重厚感というか、戦車のようにじわじわと突進してくる、決して疾走ではなく「突進」感が薄れてしまっています。いいアルバムなのだけれど、「オリジネイターの凄味」みたいなものが希薄に。ベテランならではの練られた作曲センス、演奏技術、S級バンドの良質なプロダクションなどが揃った佳作ではあるのですが。曲のクオリティは下がっていないものの、バンドとしての勢い、音の迫力は一歩後退してしまった印象。ここでメンバーが安定し、迫力が戻ってくることを期待します。

2021リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Zombie Apocalypse 5:35
だいぶ生々しい音、打ち付けるようなギターサウンド、武骨
ただ、エッジは強すぎない、リバーブが少ないがややオールドスタイルな音作り
録音状態は最新のプロダクションで生々しいが、音作りそのものは極端にゆがんでいない
正確なリフ、ベースが変わったんだよな確か
リフとボーカルが絡み合う、リフが曲の骨格、かっちりしたリズム隊
ボーカルとコーラス、力強いメロディ
コーラスが展開する、唸り声のような、遠くから聞こえる声
ギターの音がいいね、ザクザク感がありつつハードロック的でもある
うねりを上げる、鎌首のようなサウンド
この曲はJudas Priestライクな感触がある、FirePowerに近い
歌い方といい、アップテンポだし
ただ、このカッチリ感はAcceptならではだな
ドラムの展開が激しめ、流れるようなメロディで完成度が高い、パーツがしっかり噛み合っている
★★★★

2.Too Mean to Die 4:21
タイトルトラック、ひっかくようなリフ
ボーカルとギターが絡み合う、こういう絡み合いをしっかり聞かせるバンドでは最高峰の一つ
Motorheadをクリアにしたらこうなるのかなぁ
かっちりした疾走感、整理されているから破天荒な迫力は薄いが、だんだん熱量が上がる
Judas Priest色が強いな、歌メロと歌い方に
★★★★

3.Overnight Sensation 4:24
またオーソドックスというか、変わったタイトルだな
Motorheadのアルバムにも合ったが
AC/DCになりたいのだろうか、もっとノリが違うけれど
そういえばAcceptのノリも独特だよなぁ、Scorpionsのような横ノリともまた違うし
ただ、本作はけっこう明るいノリというか、音が聴きやすい
この曲はポップさがあるな、歌メロだけならディスコ的、サウンドにその要素はほとんどないけれど
カリカチュア化された「メタル」感があるが、演奏力と完成度が無暗と高い
ただ、パーティー的な能天気さは薄いんだよなぁ
★★★☆

4.No Ones Master 4:10
メロディアスなリフ、おお、この曲はAccept節だな
ちょっとしたメロディ展開というか、そういうところに「らしさ」が出る
ちょっとクラシカルなフレーズが持ち味なのか
ツインリードも冴えている、間奏のメロディ展開も良い
リズムは一定、この「リズムが一定」という感じはけっこうAcceptの肝な気がする
あまり複雑な曲展開はないんだよな、同じリズム、グルーヴでぐいぐい来る、そのノリが良い
★★★★☆

5.The Undertaker 5:38
アルペジオとギターメロディ、メタリカのバラードみたいなスタート
とはいえメロディセンスはクラシカル、ウルフホフマン色が出ている
そこからベースの刻み、安定したドラムに
おや、ディスコみたいな曲だな、一定のリズムにメロディアスなボーカル
あるいはホラー的というか、Powerwolfとか
雄たけびコーラス、こういう「展開しないボーカルライン」と「コードの展開」でサビを盛り上げる手法が本当に上手い
メロデス的でもある、メロデスの源流ってもしかしたらAcceptなのかな
ボーカルが一定のメロディ(あまり音程が変化しない)で、コードパターン、ギターの方が変化して開放感がある、みたいなのはこのバンドの持ち味だよな
間奏、かっちり一定の小節ですべての楽器が着地する、こういう「着地感」はドイツらしくて好ましい
カラスの鳴き声で終わり、カッコいいな
UDO在籍時のような曲、だんだん「らしさ」が出てきた
★★★★☆

6.Sucks to Be You 4:05
Acceptらしい質感、確かに、最初の数曲はモダンでいい曲だが「らしさ」は薄かった
なんというかAcceptにオリジネイターとしての空気感がある、London Leatherboysとか
でも、ロンドン関係ないんだけどなぁ、ベルリンレザーボーイズでよかったんじゃなかろうか
かっちりした勢いのある塊、だんだん気持ちよさが勝ってくる
このかっちりしたリズムの酩酊感はこのバンドの特性
★★★★

7.Symphony of Pain 4:39
メロディアスなイントロから、メロディアスなリフ
やはり欧州メタル、ウルフホフマンとマイケルシェンカーって共通点がある気がするな
カッチリしたリズム、爆撃機のようなドラム
この曲ではドラムがかなり手数が多い
ギターのメロディが全体に流れている、クラシックの曲がモチーフで出てくる
★★★★☆

8.The Best Is Yet to Come 4:47
つづいてゆったりとしたバラード
やや初期RAIBOW的な展開
じっくりと展開していく、ブルージーというか
ロニーとは違う、ソウルフルでかすれた歌い方
だいぶボーカルパターンが変わったな、従来のAccept的な曲もあるが、メロディアスさが増している
歌うギターソロ、歌い上げるボーカル
熱量が高い
★★★★

9.How Do We Sleep 5:41
分散するリズム、ギターが入ってくる
70年代、80年代を彷彿させるギターサウンドながら生々しい2010年代のサウンド
オールドスクール、オーソドックスなメタルのスタイルで押してくる
Acceptらしさ、という点では物足りなさもあるな、その分メロディの幅は広い
耳を強制的に奪われるまではいかないが心地よく流れていく、物足りなさと取るか成熟・洗練と取るか
ケルティックなメロディが出てくる
エッジが利いたサウンドながら聴きやすさがあるアルバム
★★★★

10.Not My Problem 4:22
おお、なんというかAcceptらしさはないが疾走感があるな
面白い、ボーカルの色だろうか、アメリカンハードロックに欧州的、ドイツ的なかっちりした感じが混じっている
そこにウルフホフマンのクラシカルな音像が乗ってくる
モトリーとか、ヘアメタルの感じもあるな、ちょっとはみ出すノリ
それをかなりかっちりとやるのが面白い
ウルフホフマンっぽい歌メロなのだけれど、どこかカラッとしている感じが面白い
★★★★

11.Samson and Delilah 4:31
なぜこの曲名、カバーなのか?
同じ音程、リフで攻めていくが軽やかというか、開放感がある
アラビックなメロディ、とはいえなんというかクラシックを通ったアラビックな感じがするな
トルコ行進曲のような
これインストか
かっちりしたリズムで終曲
★★★☆

総合評価
★★★★
聴きやすい、いいメロディも多く、いい曲が多い
ただ、なんとなくだがAcceptらしさは薄いなぁ、やけにオープンで開放感がある
これだけの大御所なのだからもっと重厚な作品でも良いと思うのだけれど、キャリアを感じない軽やかさがある
聴きやすく心地よいので何度も聴けるが、圧倒されるようなグルーヴや迫力はない
なぜだろう、いい曲は多いのだけれどなぁ
「いい曲」は多いのだが、バンドというのは不思議なものだ
ピーターバルテスの存在感なのだろうか、やはり何かが喪われた気はする
その代わり今作はフレッシュな感じもある、前述した通り曲のクオリティは高い
とはいえ、パワーメタル好きなら聞くべきアルバム、オリジネイターのオーラがある

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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