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Mental Cruelty / A Hill to Die Upon

Mental Crueltyは若手のドイツのバンド、おそらくメンバーはみな20代。とにかく激烈ながらしっかりとメロディもあり、デスメタルやブラックメタル、シンフォニックメタルやデスコアの各種手法を取り入れて、激烈性だけに特化するのではなくきちんと曲作り、音楽的なコンセプトを持って楽曲、アルバムを作り上げる力を持っています。激烈なメタルが好きな方にはおススメ。

出身国:ドイツ
ジャンル:Brutal Deathcore
活動期間:2014-現在

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1.Avgang 00:57 ★★★

少し歪んだ、調整が狂った音。クラシックギターの音と弦楽器が入ってくる。幽玄で中性的、隔世的なイントロ。

2.Ultima Hypocrita 04:31 ★★★★☆

ブラストビートがなだれ込んでくる。荘厳なキーボード、シューゲイズ、完全なるブラックメタル。ビートの勢いが凄い。オーロラのように煌めきながら変化していくキーボード音。激烈なタイトルコールから音像が一気にカオスに。がテラルボイスとグロウルを駆使しながら曲が突進していく。壮大なクワイアコーラスも入る、声の移り変わりが激しい。激化したBlind Guardianみたい。ブラストビートがかなり高圧。打ち込みだろうか。とにかくドラマティックで激烈。突如美しいギターソロが切り込んでくる、Morbid Angelのような。カオスの中に突然煌めく美旋律が舞い降りる。


3.Abadon 05:54 ★★★★☆

激走する開幕から急に静謐でアコースティックなパートへ。これはシンフォニックデスコアだな。この手数の多さは驚異的。ドラマーがメンバーでいるということは生ドラムなのか。すごいな。トリガーを使ってはいるのだろうが、激烈感。人間を超える感じではないが、激烈感というか圧を高めるのが上手い。途中でブレイクダウンが入る。ブレイクダウンに絡み合うガテラル、ピッグスクィールボイス。幽鬼や悪魔が飛び回り歌い上げているようだ。激烈一辺倒ではなくきちんとメロディ、コード展開感がある。この辺りはメロディックブラックメタルとでも言うべきか。ドイツのバンドなのでメロディに幽玄さ、北欧の吹雪舞う荒涼さは欠けるが、やはりドイツらしいかっちり感がある。メロディがきちんと完結する。何よりリズムの圧が整然として精密機械のようだ。

4.King ov Fire 03:49 ★★★★

ドラマティックかつ激走、Fleshgod Apocalypse的な展開の複雑さも感じるが、クラシカル要素は比較すると少な目でその分直接的なアグレッションを感じる。ボーカルが器用。単に激烈さだけを追求するのではなく、激烈な表現手法を各種用いながら音楽的な構築美、美醜のコンストラクトによる快楽を追求している。混沌の中に差し込む福音のようなキーボードとギターソロ。清涼な音。激走する音楽ドラマ。ただ、同手法の曲が続いているので少し新機軸も欲しくなってきたかな。このままアルバム全体このテンションで突っ切るのかもしれないが(それはそれで凄い)。


5.Eternal Eclipse 04:29 ★★★★☆

やや大仰なイントロ。少しタメがあり、じわじわとスタートする。壮大なスタートだが、ちょっと入ってくるリズムがいちいちブラスト。手数が多い。この曲はメロデス的なバッキング。途中から音が混沌化していきブラックメタルに。ただ、コードはどの曲でもしっかり展開していき、音のドラマ感は高い。すごいなぁ、これだけ音というか情報を重ねる、熱量を込めるとは。とにかく過剰。この曲は展開がかっちりしているな。後半、ボーカルパフォーマンスをじっくり堪能できる。

6.Death Worship 04:37 ★★★☆

激走、なだれ込むブラストビート。ほぼ前の曲から変化なく突き進む。これ全曲このテンションっぽいな。それはそれで凄いがそろそろ新展開も欲しくなってきた。すごい発明というか、声色の引き出しや音の組み合わせ方、ドラムの手数の入れ方と圧の高め方は独自性の域に達していると思うが、どの曲にも惜しげもなく得意技を投入しているとパターンが似てきてしまう。ブレイクダウンがややしつこく繰り返される。でもこれはいいアルバムだな、細い路地の奥にあったころのディスクユニオン御茶ノ水メタル館の雰囲気を少し思い出した。ブラックメタルがよくかかっていた(今の場所に移ってからもよくかかっているけれど)。

7.Fossenbrate 01:50 ★★★

ここで再びSEへ、LPもリリースしているのかな。いずれにせよA面、B面を意識した作り。ここで盤面が変わる。今度は1曲目よりやや長め、フクロウの声と水の流れる(川の)音がする。

8.A Hill to Die Upon 05:05 ★★★★

気を取り直して激走。同じパターンなのだが、一度静謐な小曲を挟んだことで緩急がついた。この曲は曲の中でも緩急がある。最初の突進のあと、ボーカルパートになるとリズムが鳴り止む。ブリッジで戻ってくる。この曲はBPM早め、手数がさらに増えてよりやけくそになってきた。「一度去ったと思ったらパワーアップして戻ってきた」といった感じ。ボーカルや他の楽器隊も負けじとヒステリックに叫ぶ。展開が激しい、時々タメがあって、また全力のブラストに戻る。1曲内の緩急だと今までで最高の曲かも。ここまで高速かつ激烈だと演奏難易もかなり高くなりそう。しかしこのボーカル凄い。


9.Extermination Campaign 04:21 ★★★★☆

遠くから近づいてくるようなイントロ、そこから激走へ。パターンは同じながら声色やコードの展開が違う、ややリズムもミドルテンポ(前の曲に比べれば)。少し落ち着いて曲が進行していく、ドラマティック。メロディが滑らか。ギターフレーズが入ってくるがこの曲では浮く感じはない。全体として一つの方向に向かっていくというか。善悪を併せのんだ一つの渦が大きなドラマにむかって流れていく、吸い込まれていくような曲。コードの流れが一致している。

10.The Left Hand Path 07:39 ★★★★☆

別のバンドになったかと思うようなキーボードの音。ただ、哀切な響きは通底している。これギターかな。エフェクトはかかっているが、つま弾く感じがある。轟音ギター、音の壁が入ってくる。ドラムも疾走しだすが軽快な感覚が強い。音像全体としては明るめというかシンフォニックでドラマティックな雰囲気。前の曲の雰囲気を引き継ぎながら、さらなる大団円、メロディとコード感が強まっている。空から差し込む光のようなクワイアコーラスに聞こえるキーボード。荘厳さ、クラシカルな度合いが増す。A面とB面できちんと雰囲気が違うな、アルバム全体の構成力もある。見事。

総合評価 ★★★★☆

ドラマティックで曲作りが上手い。前半、似た疾走曲のパターンが続いたが後半ではバリエーションが増えて、最後2曲は壮大さ、組曲感を感じる素晴らしい完成度。1曲1曲の緩急、ドラマの作り方が上手い上に、アルバム全体で一つの流れ、ドラマを作る力もある。聞く人を選ぶジャンルではあるがでスコアの中ではかなり聞きやすいというか、シンフォニックでメロディアス。激烈さがありつつドイツらしいかっちりしたクラシカルな作曲、構築、精密機械のような演奏能力を楽しめる。佳作。

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