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Triptykon / Requiem

スイスのエクストリームメタルバンドTrypticonの2020年にリリースされたオーケストラとの共演作です。Trypticonはブラック/デス/スラッシュメタルの源流の一つに数えられるCELTIC FROSTのトム・G・フィッシャーを中心に2008年に結成されたグループで、この「Requiem」3部作は構想30年の大曲です。最初の「Rex Irae」はトムが22歳の時作曲し、CELTIC FROST時代のInto the Pandemonium(1987年)に収録。最後の「Winter」は2002年、トム38歳の時に書き上げられた曲で、CELTIC FROSTの作品『Monotheist』(2006年)に収録されています。今作のメインである「Grave Eternal」は2018年、54歳のときの曲で、これにて3部作が完成。オーケストラを迎えて完全再現したのがこのアルバムです。フィンランドのSwallow the Sunが喪った恋人へのレクイエムとしてリリースしたLumina Aureaに通じるものを感じました。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Rex Irae
オペラティックな女声ボーカルからスタート
絡み合う男声ボーカル
引きずるようなギター、ベース、ドラムにアンビエントでオーケストラが重なる
ボーカル2本が絡み合いながら曲が展開する
同じ雰囲気で蠢く、演劇的、オペラ的
ティンパニの音が耳を弾くが、オーケストラ要素はそこまで強くない、ギター音が増幅されているかな、ぐらい
ヘヴィなギターリフ、オケが存在感を増してくる
だんだんと大きなものが姿を現す感じ
管楽器隊が入ってきて、リズムが加速する
ギターソロに加えて弦楽器が入ってくる
緊張感を増す、ギターと楽団がユニゾンする
男声ボーカルが熱を帯びて戻ってくる
苦し気な声で男女の掛け合いが続き、弦楽器かシンセで浮いたフレーズが入り耳を惹く
ヘヴィなリフに戻るがオケが少し違うメロディを重ねてハーモニーがつくられる
★★★☆

2.Grave Eternal
間髪入れず次の曲へ、曲の区切りはどうもなさそう
引きずるような足取り、死者の足取りだろうか
何かが歩いているような、延々としたパート
だんだんとオーケストラが入ってきて、一筋の光がさすような演出
地上・あるいは地下と天上の対比か
同じテンポでゆっくりとリズムが続く、足を引きながら歩き続ける
ギターソロが入る
ギルモア期のピンクフロイドのような浮遊感のあるギターソロ
ただ、あそこまで空間的・音響的ではなくもっと手数も多くブルージーではある
幽玄な女声ボーカルが入ってきて、弦楽器隊が細かい振動を刻み始める
大気が揺れているかのよう
リズムは変わらず引きずりながら歩き続けている
女声ボーカルは歌い続けている、弦楽器がやや不協和音も混じりながら美しい和音を奏で始める
メロディーに風が吹き始めた、嵐の前触れのような
余韻を残すようなコーラスから、チェロやベースの大型弦楽器の低い音へ
コーダ
★★★★

3.Grave Eternal
曲が展開、曲が変わってから無音になり仕切り直し
鐘の音と小さな、訪ねるようなベース音が鳴り響く
弦楽器のソロ、取り残されたような
高音の女性コーラスが場面転換を告げるように鳴り響き、ドドンというドラム
シーンが切り替わった、リズムが続き、緊迫感のある弦楽器の響き
かすかな女性コーラスが弦楽器を弾き継ぐ
低音で、老人、何か老いたものが出すような男声ボーカルがコーラスで入ってくる
女声が重なり、何かを語りかけるように、警句のような歌声
リズムは刻まれ続けているがやや不穏さは減っている
弦楽器が飛び跳ねる、老いた何者かが纏っているかのように
ギターが入ってくる、フロイド的(アナザーブリックインザウォールとか)な、リバーブ強めでゆっくりと刻むギター
ドラムの音色は落ち着く、叩く力は弱め
弦楽器、ギター、声が前面に出てくる
ギターが止み、弦楽器とボーカルが前面に、少なくとも3つの別のメロディをオーケストラは奏でている
女声だけに変わり、幽玄な、どこか違う場所から響くような声
悲しみの声か、幽霊の声か
ティンパニ、コーダ
★★★★

4.Grave Eternal
ティンパニとシンバルが続く、静かな中に何かがいる感じ
ベースがドローンで空間を埋める、かなり低音
ヘヴィでビックなドラムが入ってくる、やや抑え目なアタックながらリバーブは深い
管楽器が入ってくる、弦楽器が重なる、押しては引く、波のような管楽器と風のような弦楽器
ゆったりとしたフレーズを奏でていた弦楽器がやがてチリチリと細かく刻み、痙攣を始める
同じリズムの中で展開していく、痙攣がひどくならないうちにそれらは去り、ベースとドラムだけが残る
かすかにきしむような高音が入る、転換
★★★

5.Grave Eternal
女声コーラスと弦楽器か、差し込むように美しいハーモニーが続く
和音がドローン(同じ音を引き延ばして空間を埋める)音として続いている
ブライアンイーノのアンビエントのような音空間が続く
ゆっくり和音が展開し、ゆらめいている
ベース、チェロだろうか、少し震える低音だけが残りフェードアウト
★★☆

6.Grave Eternal
何かを掘削するような音、機械音のような、ディストーションギターだろうか
ティンパニとドラムが入る、機械音、あるいは何かが崩れる音だろうか
そうした低いノイズとリズムが続き、弦楽器と鐘の音が入ってくる
低音がリフを奏で始める、一定の、かなり遅いモチーフを反復する
鐘の音がところどころ差し込まれる、運命を告げられ、処刑のシーンだろうか
ギターが入ってくる、一つ一つの音の要素が自然で流れるように追加される
ベースとギターがかなり遅いフレーズだがユニゾンしている
反復リフの上に男声が乗る、2声か3声、年齢不詳だが若くはない印象だ
呪文のようなものを反復して唱える、リフは反復を続けている
それらがミニマムのように繰り返される
ベースとドラムだけが残る、少し展開はしている
一時期のギーザーバトラーのような、ドゥーム色の強いヘヴィなパート
管楽器が吹き入り終曲
★★★

7.Grave Eternal
いよいよ組曲の最終章へ
ヘヴィなギターリフとリズムからスタート、抒情的なギターフレーズが入ってくる
ギターフレーズが歌い続ける
ギターが去り、讃美歌のような女声コーラスが微かに入ってくる
聞こえるか聞こえないかぐらいの薄さだが確かにそこにある、だんだんと存在感を増してくる
鐘の音が入る
和音は救いを表すような壮大な、開放感のある和音
音色はドゥームでヘヴィだが、地上に天使が下りてくるような印象
抒情的なギターソロが始まる
クワイアコーラスは続いている、少し不協和音になりながら登っていく
女声ボーカルが入る、独唱、メロディを歌い上げる
バックは壮大な雰囲気のまま、リズムはビックだがアタックは弱め、全体として音の塊のような印象
ボーカルとクワイアが絡み合う、ヴァルハラから迎えに来たヴァルキュリア達の声なのだろうか
ボーカルが去り、クワイアと弦楽器が残る
ところどころ不協和音が入り、不穏さを含みながら天上へと去っていく
そのままフェードアウトかと思ったら突如激しい雷鳴のようなリズムが入る
雷鳴が打ち鳴らされ、低音だけが残って終わり
観客の拍手
★★★★

8.Winter
弦楽器の低音、和音から始まる、弦楽器のみ
和音が進行する、展開はかなりゆっくりしている
少しチリチリした、小刻みな音が一瞬入る
和音が上下の音に展開して和音に厚みが増す
高音のフレーズが増え、女声が入ってくる
羽衣のような、オーロラのような、きらめく光がゆらめいて展開していくようなモチーフ
少しリズムが動き出す、ゆったりと光の海に漕ぎ出すように
低めの管楽器がドローン音として響く
和音が展開し続ける
一瞬ハープをかき鳴らすような音がして、女声コーラス、クワイアが前面に出てくる
また静けさが戻り和音の展開が続く
開放感のある和音がだんだんと迫ってきて、合わせて打楽器が一瞬打ち鳴らされる
そのまま和音が存在感を増していき、終曲
拍手
★★★☆

全体評価
★★★★
素晴らしい世界観で、これをやり切ったのはすごい
この世界観は他の作品ではなかなか得難い
和音や音の展開に無理がなく、引き込まれる
ただ、聞くのにかなり集中力が必要だし、全体的に抑制されている
流してかけていても心地よいし、音選びと作曲能力は凄いと思うが
もう少し盛り上がるパートがあると良かった

リスニング環境
朝・家・ヘッドホン

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