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Wheel / Preserved in Time

ジャケットに惹かれて聞いてみたアルバム。Wheelってそこそこ知名度があるバンドがいた気がしますがロゴが違う。知名度がある方はフィンランドのプログメタルか。そちらは頭蓋骨から目玉が飛び出たアルバムを最近だしました(これ↓)。

このバンドとは同名の別バンドで、こちらはドイツはドルトムントで結成されたドゥームメタルバンド。2006年結成、2010年デビューでこちらは2021年リリースの3枚目。

1.At Night They Came Upon Us 06:48 ★★★★

迫ってくるノイズ、からのドゥーミーなリフ。人間椅子ほどドロっとしていないが低音でうねるリフがハーモニーを奏でる。ツインギターかな。ボーカルがちょっとお経的というか、中音域で朗々と歌う、演劇的な発声。ミドルレンジのキングダイアモンドというか。なかなか暗黒的。とはいえ、音はそこそこ丸みを帯びていて聞きやすい。コード進行もドマイナーではなくメジャー感もある。どこのバンドだろう。ドイツか。曲構成がなかなか展開していく、初期Judas Priest(運命の翼あたり)とか、ああいう70年代ハードロックを引きずった初期メタルの雰囲気を感じますが、NWOTHMの流れとはまた違う、うーん、あえて言えばやはりキングダイアモンドやマーシフルフェイト的要素もある、シアトリカルなドゥームメタルといったところ。この曲は曲展開も凝っていて面白い。

2.When The Shadow Takes You Over 06:17 ★★★★☆

スロウなリフ。途中からギターが分かれてちょっとツインリード感を出すのが面白い、この辺りのプリミティブ、無邪気ともいえるツインリード感が初期JPっぽいのかも。そういえばあんまりいう人いないけれど、初期JPと初期Queenってけっこう似てますよね。運命の翼や背徳の門にはQueenの1st、2ndと呼応したような曲が何曲か。英国的、英国HRの新世代の扉を模索する過程での暗黒期、アングラ期とでも呼べる時期の特徴的な音像なのかも。アングラ感が好きなんですよ。お、この曲はソロだとなかなか堂々とした音色で開放感のあるフレーズを弾いています。決して派手ではないけれど曲展開はしっかりしている。ああ、Ghost感も少しあるなぁ。ボーカルがトビアスフォージっぽくもある。ギターの音色は丸みがあって聞きやすくはあるけれどそこまでレトロという感じでもなく、ちょっとブライトでモダンといえばモダン。歌メロもなかなかしっかり展開していく。佳曲。ボーカルが上手いですね。最後、アコギを活かしたパートに展開して静かに終焉、お、コードが最後で展開した。

3.After All 05:43 ★★★★☆

うねるようなリフ、ノシノシと歩くようなテンポ。ギターが絡み合う。同じようなシンプルなリフを奏でつつツインリードでハモる、という。ボーカルは演劇的。ボーカルうまいなぁ。個性派かと思ったらけっこうちゃんと実力派です。めちゃくちゃすごい、というわけではないけれどしっかり上手い。ドラマティック。エピック・ドゥームメタルということなので、何か神話的なモチーフを歌っているのかな。シンプルなリフをハーモニーで展開させるのが上手い。ボーカルが誰かに似ているなぁと思ったらちょっとゲディ・リーっぽい瞬間もある。ああ、初期Rush感も少しあるかも。あまりZepp感はないけれど。これは掘り出し物。この曲は特にRushっぽいですね。歌い方だけでなく、さまざまなフレーズが後半になるにつれてだんだん重なり合っていくところとか。

4.She Left In Silence 06:04 ★★★☆

ミドルテンポで鎌首をもたげるようなリフ。とはいえ不協和音や不快感はない、ノイズではなくしっかりとしたハーモニー。途中からボーカルラインも展開し、リフと絡み合う。ミドルテンポで、勢い任せではなくじっくりと曲を展開させていくのは実力を感じます。テンポがゆっくりで酩酊感が出てくる。

5.Aeon Of Darkness 07:38 ★★★★

アコースティック感のあるイントロ、でもこれ、ドイツのバンドなんですね。欧州感はバリバリ感じるけれど、ドイツっぽさはあまり感じないなぁ。しっかり歌メロとかアレンジを詰めてるきめ細かい感じがあるといえばあるけれど。ドイツのバンドってやっぱり全体的にかっちりしてる印象なんですよね。演奏レベルもプロダクションも押しなべてレベルが高い。このバンドもプロダクションにレトロ感はあってもチープさや古臭さはあまり感じない。だいぶ声を震わせるボーカル、この曲は演劇的。コーラス、ボーカルハーモニーが重なっていく、凝ったハーモニーです。アレンジが練られているなぁ。ただ、テンポチェンジはほとんどない、その点はサバスとは違う。ずっとミドルテンポで押してくる。お、この曲はテンポは同じながらドラムパターンが変わるパートがあるな。

6.Hero Of The Weak 06:39 ★★★★

ドラムの独奏からドゥームで暗鬱ながらやや壮大なリフへ展開。そこからMetallicaをスローにしたようなリフへ。多重ボーカルが入ってくる。面白い音響効果。ボーカルが節回しを利かしています。演劇的な声にグロウルも合いの手で入る。これは挑戦的な曲なのかな。バンドのキャパシティを拡げていくという作業も大切。リズムがかなりかっちりしていて、全楽器隊が一丸となっている感じはします。これ、ベースとギターがちょっとズレるとか、そういう複雑なポリリズムが生まれるともっと面白いのかも。お、この曲はブリッジ~コーラスがRush的な展開。リフはぜんぜん面影がないけれど。ボーカルメロディがプログメタル的で面白いですね。ゲディ・リーというよりはジェフ・テイトを意識しているのかな。

7.Deadalus 08:54 ★★★☆

ヘヴィなリフから静謐なパートへ、ボーカルにスポットが当たる。ややフランジャーがかかったギターの音。なるほど、こういう感じでボーカルとギターが絡み合うのか。比較的楽器隊が引き気味。長尺曲だから最初のうちはタメているのでしょうか。ボーカルが曲を引っ張っていく。

総合評価 ★★★☆

ドゥーム的だがボーカルの説得力が高い。さすがドイツと感じる曲作りやプロダクションのクオリティの高さも好印象。ドゥームなリフをツインリードでハーモニーをつけてみたり、リフとボーカルメロディが絡み合ったり、こうした音楽の「心地よいポイント」をしっかり叩き込んでこようという気概を感じます。ちょっと娯楽性と客観性には欠けるけれど、情報量が多くてクリエイティブなアイディアをこれでもかと詰め込んだ感が伝わってくる佳作。最後の大曲が意外と印象に残らなかったのが惜しい。そこにキメ曲があれば印象が一段階上がりました。

ずいぶん昔に自分なりにドゥームを作ってみた曲を思い出しました。もっといいプロダクションで録音してみたいなぁ。

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