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Employed To Serve / Conquering

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エンプロイドトゥサーブ(ETS)は2012年にUKで結成されたハードコア、メタルコアバンドで、女性ボーカルを擁する4人組。本作は4作目の作品となります。メディア評価が高いバンドでKerrangが100点。本作は最初にどこで触れたのか忘れましたが、TIDALのレコメンド新譜で出てきてちょっと聞いてみたらよい感じだったのでアルバムリストに入れておいた気がします。まだあまり本作のレビューは出ていませんが、前作はけっこう日本語のレビューも出ていますね。Marunouchi Muzic Magazineでも力作のインタビューとレビューあり。主要メンバーはカップルなのか。Spiritboxもそうでしたが、カップルでバンドやってる例ってけっこう多いですね。別れたらArch Enemyみたいにメンバーチェンジするのだろうか。でもまぁ、お互いに音楽やっていたら一緒にやりたくなりますよね。

そうだ、思い出した。1曲目を流して聞いたら女性ボーカルのパフォーマンスが凄かったのでアルバムを通して聞こうと思ってリストに入れていたのだった。早速聞いていきます。

活動国:UK
ジャンル:メタリックハードコア、マスコア
活動年:2012-
リリース:2021年9月17日
メンバー:
 Justine Jones  Vocals
 Jamie Venning  Bass
 Sammy Urwin  Guitar, Back Vocals
 Robbie Back  Drums
 Richard Jacobs  Guitar

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総合評価 ★★★★

面白いバンド。ちょっとハードロック要素とか、メタルの要素を取り入れつつハードコアやブラックメタル、ブラッケンドハードコア的な要素も入っている。さまざまな要素を入れながらメインにあるのはハードコア。ただ、本作はちょっと全体的な流れが作り切れていないというか、だんだんテンションが上がっていくような感覚が薄い。ちょっと曲調が一本調子なのかなぁ。あるいはボーカルが一本調子なのか。さまざまな引き出しがあることは分かるので、もっとバリエーションがあってもよかった、というか全然できた気がする。面白い曲はあるけれどアルバム全体として高揚感とか、巻き込まれる感覚が薄かった。単曲で聴くと1,2,7,8,10とかカッコいい。

1.Universal Chokehold 05:24 ★★★★☆

メロウなギターのフレーズが繰り返され、チェロの音が入ってくる。静謐なスタート。ギターフレーズはそのままでバンドが入ってきて音圧が上がる。ドラムの手数が多く、疾走感がある。かなりメタリックな疾走感。音作りもカッチリしていてザクザク感がある。ボーカルが入ってくる、おお、迫力がある。ハードコアスタイル。ボーカルが入るとハードコア感が増す。ただ、バンドはかなり整合性を持っていてカッチリしている。ややメロディアスな感じもあるコーラスに展開する。コーラスはメロデス感もあるが、基本的にはハードコア。疾走感、やけくそな感じがある。ただ、ギターソロもあり、曲構造的にはメタル。曲も5分以上あるし。ブレイクダウンパートも出てくる。Code Orangeとかに比べてもメタル色が強いというかビートがもっとどっしりしているかも。

2.Exist 03:21 ★★★★☆

ミドルテンポでややハードロック、KISSとかLordi(フィンランド)みたいな、ダミ声のミドルテンポハードロック的な感じもある。かなり激烈性は増しているが。ボーカルスタイルはハードコア。ただ、ギターはかなりメロディアス。メロディックハードコア的な。純粋なメタルのバンドに比べるともうちょっと音が荒々しく、生々しい、フレッシュな感じ。ハードコアな感じは残っている。絶叫になるがコーラスがシンガロングなフレーズを奏でる。ライブで盛り上がりそうな曲。2020年の冬から作られた、ということでコロナ禍の中で作られたアルバム。

3.Twist The Blade 03:57 ★★★★

強烈な刻み、飛び跳ねるリフ。分断されるリズム。ファンクというかハードコア色が強い。男性ボーカルからスタート。メインボーカルが入ってくる。跳ねるリズム。モッシュが生まれそうなリズム。後半、メロディアスなボーカルが入ってくる、男性ボーカルがクリアトーンでメロディアスなパートを担当する。後半は曲構成にメタリックな感触が増す。

4.Sun Up To Sun Down 03:30 ★★★☆

ダウンテンポ、引きずるようなブレイクダウン。グルーヴィーでヘヴィなリズム。だんだん後半に向けてテンポアップしていく。

5.The Mistake 03:49 ★★★★

疾走曲。アップテンポでスタートする。途中からブラストビートに変わりブラックメタル的に。ところどころブラックメタル、メロデス的な激烈性が出てくるのは面白い。ややゴシックな雰囲気も出てくるし。ブラッケンドハードコア、みたいな括りになるのだろうか。ブラッケンドハードコアってブラックメタルっぽいハードコアのことだよね。えーと、やけくそ気味なブラストビートに、ゴシックというか北欧の森を思わせるオーケストレーション(シンセ)の荘厳なメロディが乗る、みたいなものがハードコアパートの中に差し込まれる音楽性。

6.We Don't Need You 04:58 ★★★★

マーチング的なリズムからスタート。そのまま刻みリフに入ってくる。ボーカルは確かに激烈だが、ちょっと一本調子かもなぁ。お、テンポがチェンジしてややハードロック的な、ミドルテンポのリフが出てきた。メタリックなリフ。シンガロングな「We Don’t Need You」の合唱。波のように寄せては返すリフ。基本がハードコアマナーの曲。テンションが高くてカッコいい。途中からマスコア的、拍子が変わりながら組み合わさって、幾何学的な模様のようになる(だからマス=数学コアと呼ばれる)。

7.Set In Stone 04:29 ★★★★☆

前の曲から間髪入れず、疾走パートへ。前曲の最後にマスコア的に音の隙間を出していたから、この疾走にたいして緩急がついていて加速感がある。ボーカルも少し悲鳴とスクリームが混ざったような、ブラックメタル(クレイドルオブフィルスあたり)を連想させる声色を使い分ける。ちょっとシンセのフレーズも入ってくる。基本的にかなり激烈だがちょっとダークな雰囲気もあって耳を惹かれる曲。途中、男性と女性ボーカルが絡み合うところは北欧メロデス、いや、メロディアスブラックメタル的。書いていて思ったけれど北欧メロデスとブラックメタルの境目って曖昧だよね。もちろん、それぞれ極端なものを見れば違うんだけれど、中間ぐらいにいるバンドは多そう。このバンドもどこか一つに極端に降っている、というよりは、ハードコアとかブラックメタルとか北欧メロデス(というよりクレイドルオブフィルスなのかな、UKのバンドだし)、一部ゴシックな感じなどが入り混じっている。

8.Mark Of The Grave 04:23 ★★★★

けっこう展開する、プログメタル的なリフ。ただ、ヘヴィネスとグルーヴィーさが強調されている、低音強めなのでプログメタルとは音作りが違うが。男性ボーカルが入ってくる。男性ボーカルはクリアで、グルーヴィーなパート担当、なのかな。ハードロック的、ミドルテンポのリフ。ところどころにこういう「横ノリ」な、アリーナロック的ハードロックリフが出てくるのがこのバンドの面白さかも。ギターソロへ。ブルースベースのハードロックを基盤として、そこにハードコアテイストで強く味付けをした感じの曲。MVを作ってある曲2曲(2.と8.)ともこういう曲だから、これが持ち味なのかな。確かにユニークな音像かも。この2曲、だと、2.Exitの方がフックがあるかな。

9.World Ender 04:40 ★★★☆

ザクザクとした刻みリフ、激烈な感じ。Lamb Of Godもこういうテイストあるよね。ミドルテンポ、ヘヴィでじっくりくるリフの壁の上に絶叫ボーカルが乗る。お経的な、ドローンで低音が一定のルート音を刻みながらその上にボーカルが乗る、ストーナー的な要素もある曲。

10.Conquering 05:05 ★★★★☆

前曲との対比で、やや派手さのある音程移動が激しいリフから。ピッキングハーモニクスも織り交ぜられ、最近のメタリックハードコアっぽさ(Code Orangeとか)も強い。そこから刻みリフへ。お、女性ボーカルがクリーントーンと絶叫をシームレスに混ぜている。こういう歌い方は凄いな。ライブでやると制御難しそうだけれど。The AlmightyのCrankを思い出す感じの曲。古いか。でも、あれ名盤だったと思うんだよね。一定のリズムで攻めてくる、リズムとリフの壁が心地よい曲。なんというか、こういうのも一つの「UKらしさ」というか、何か流れがある気がする。そういえばスウェーデン(だったかな)のMary Beats Janeというバンドもなんかこんな感じだったような。1st(名盤だった気がする)がサブスクにないので聞きなおせないんだよね。どこかにCDもあるはずだけれど。テンポと展開が速いので、5分の曲だがけっこうな大曲に聞こえる。

11.Stand Alone 04:43 ★★★☆

メタリックなリフ。スラッシーなリフとも言える。ところからのブレイクダウンパートへ。今までの流れを引き継ぐ曲。

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