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Squid / Bright Green Field

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Squidは、ブライトン出身のイギリスのポストパンクバンドで、現在はロンドンで活動中。本作はWarpレコードからリリースされたデビューアルバムです。Black Midi、Fontaines DC、Black Country New Roadなどを手掛けてきたDan Careyによってプロデュースされました。Neu!(ノイ)などのクラウトロックの影響も公言しており、ポストパンクとクラウトロック、ニューウェーブを融合したサウンド。ここのところUKのポストパンクがまた盛り上がっていますね。各種メディアで好評を得ています。それでは聞いていきましょう。

活動国:UK
ジャンル:ポストパンク、クラウトロック、ニューウェーブ
活動年:2016-現在
リリース:2021年5月7日
メンバー:
 Ollie Judge – lead vocals, drums (2016–present)
 Louis Borlase – guitar, bass guitar, vocals (2016–present)
 Arthur Leadbetter – keyboards, strings, percussion (2016–present)
 Laurie Nankivell – bass guitar, brass, percussion (2016–present)
 Anton Pearson – guitar, bass, vocals, percussion (2016–present)

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全体評価 ★★★★☆

ポストパンク、ニューウェーブにクラウトロックを混ぜた、という評判通りの音。クラウトロックといってもジャーマンテクノとか、「一定の(人力感がある)機械的なリズムとミニマルなフレーズの反復」であり、それがダンサブルな雰囲気も出している。ボーカルはパンク、ハードコア的なスクリームも駆使してけっこう激情型だし、ギターもかなりノイジーな場面はノイジーだが、静かなところでは静かでS/N(シグナルノイズ)比もしっかり制御されているので聞き苦しいほど激烈というわけでもない。デスメタルとかブラックメタル、ゴリゴリのハードコアやメタルコア的なエクストリーム感はなく、あくまで「ポストパンク」とかロックの範疇に収まっている。歌メロよりビートとテンションの高まりでドラマを紡いでいくタイプのバンド。一つ一つのフレーズはストレンジかつミニマルで、トーキングヘッズやデヴィッドバーンに一番通じるものを感じた。

1.Resolution Square 00:40 ★★★

奇妙な音、何か通信しているような、水中・SF的な効果音。どこか朦朧とした意識のような。

2.G.S.K. 03:10 ★★★★

SEを経てどこか宇宙人的なリズム。アジテーション的なボーカルが入ってくる。バックはスペースロック的な、空間的広がりを感じさせるシンセ音。管楽器のフレーズ、ブラスロック的なアタック。けっこうハードロック的。EL&Pの重厚な曲とか、プログレの荘厳さも感じる。途中、浮遊する音像に。アシッドハウス的な音空間。ダンスロックを通過したネオサイケデリア。電子音、クラウトロックと言われると確かにジャーマンテクノ感がある硬質な電子音のアルペジエーターがミニマルなフレーズを奏でる。そこにキングクリムゾン的なギターが乗る。

3.Narrator ft. Martha Skye Murphy 08:28 ★★★★☆

ファンキーなリズム、なんだろう、ちょっと(日本の)相対性理論的なバッキングでもある。ボーカルは全然違うが、ギターフレーズやベースの反復は通じるところがある。UKで言えば初期ポリスにも近いかも。トーキングヘッズとか。ニューウェーブ的なボーカル。このヒステリックな感じはデヴィッド・バーンかもな。確かにUKポストパンク、ニューウェーブの流れとクラウトロック、ジャーマンテクノ的な電子音と組み合わせている。同じボーカルフレーズが執拗に反復され、バックの音像がだんだんとテンションが上がっていく、浮遊するシンセ音が増えていき上昇していく。曲全体が上部に遷移しそうになるがベースがしっかり低音にへばりついている。フリージャズのような音像になるがベースとビートが地面をしっかり支えているので混沌に落ちていかない。この辺りの混沌の作り方はクラウトロック的。原初療法のようなプリミティブな叫び声をボーカルが上げる。コントロールされた雄たけびというより幼児的な叫び声。

4.Boy Racers 07:34 ★★★★


前の曲から間髪入れずに続けて次の曲へ。またプログレ的な曲。ひねくれた反復リフを奏でる、極端ではないが変拍子が噛み合いマスロック的。どこかひっかかりがあるリズムで進んでいく。途中、リズムがやむ。見知らぬ砂漠の洞窟、あるいは遺跡を探索するような。不思議で静けさのある音像。砂漠感があるのはややエスニック、アラビックな旋律がかすかに出てくるからか。巨大なシンセの音の塊が上昇したり下降したりする。何かの圧が上がったり下がったりしているのだろうか。

5.Paddling 06:17 ★★★★☆

一度曲が切れて転換。チープなリズムボックスのようなビートに小刻みなベース音が入ってくる。XTC的、いや、ブリットポップ的というべきか、ひねくれたポップセンス。軽快なリズムとボーカル。トーキングヘッズ的だな、ヒステリックな焦燥感と、プリミティブな生命力の両方を感じるサウンドというか。走り続けるリズム。この一定の疾走感はクラフトワークなどのジャーマンテクノ、クラウトロックにも近い。アフリカンリズム、アフロビートではなくジャーマンのどっしりした、機械的なリズムに接近したのか。ボーカルはハードコア的に叫ぶ。テンションが高まる。

6.Documentary Filmmaker 04:55 ★★★★☆

管楽器、控えめに吹くブラスセクションがミニマルなフレーズを反復する。ギターフレーズも反復する。ライヒのようなミニマルミュージック。その楽器隊の上にボーカルが乗ってくる。語るようなボーカル。歌と語りの中間。ボーカルのテンションが上がる、同じフレーズを連呼しながらハードコア的なスクリームへ。RATM的な歯切れのよいアジテーション。バックにはずっと静謐な、UKジャズ的なブラスセクションのミニマルな反復フレーズが鳴り続けている。

7.2010 04:28 ★★★★

ハードコア、エクストリームな音像に、波状で押し寄せてくるノイズ。ただS/N比はよく、クリーントーンのところはノイズが消える。全体としては統制された音像。打ち付けられるノイズと、織りなすビート。

8.The Flyover 01:10 ★★★

ジャズ、オーケストラの調律のような、ブラスセクションの音合わせ。舞台転換。

9.Peel St. 04:52 ★★★★☆

ノイズの中から偶発的に生まれたようなリズムが反復されベーシックなビートを形作る。ドラムが補強して土台になる。ノイズが生み出すビート。ボーカルが力強く言葉を紡いでいく。かなりスクリーム型でノイズハードコア的な音像。ただ、音はクリアで統制が取れている。

10.Global Groove 05:07 ★★★☆

スロウでヘヴィなスタート。各楽器がそれぞれ一つの惑星で歌の周りを回転するような、ゆるい結合ながら一定の周期で活動することで全体として一つの秩序を保っている。夕暮れを思わせるブラスセクション。映画音楽的で、夕暮れに流れそうなフレーズ。マカロニウェスタン的なのだろうか。ゆったりとしたシーンの上でいくつかの声、無線通信なのか、ラジオなのか。電波越しのような声がやり取りしている。

11.Pamphlets 08:03 ★★★★☆

前の曲が完全に鳴り止んでスタート。プリミティブで力強いリズム。リズムの合間合間に声のようなものが聞こえる。クラウトロック的リズム。機械的で反復する。手作りの緻密な中型機械。ひとつひとつの楽器の音が歯車のように噛み合っていく。ヴォーカルが時間を進める。なんだか音が生々しい、少し他の曲よりヴォーカルが前面に出ているミックスのような気がする。といっても少しだけれど。反復するビート。リズムに組み込まれたノイズ。

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