SETSUBUN 2045

2045年、人類は機械と肉体の細胞レベルでの融合を可能にした。

20年ほど前より科学者たちの間では
豆と人のシナジーが鬼を退かせる
何かしらの未知のエネルギーを産むのでは?
と推測されているが、
未だそのメカニズムは解明されていない。
しかし鬼に豆が効くのは変わらない事実だ。
見ろ、あの鬼どものザマを。
残るは赤と青のデカい数体だけだ。

科学の発展。
人類の叡知。
精神と身体。
機械との融合。

もはや機械なくしては
意識を維持出来ないほど
俺の体と深く絡み合い融合している。
機械もまた俺の生理的電気信号なくしては
ピクリとも動かない。

まだ俺の体と呼べるのか?
まだ俺は人間なのか?
今となってはもう分からないし
もうどうだっていい。
全てがどうでもいい。
この心の苦しみが
俺を人間たらしめんとするのであれば
俺はもう人間じゃなくていい。
苦しい。苦しい。
この苦しみが続くのなら
早く終わりにしたかった。
終わりにして彼女の元に行きたい。
もう一度あの優しく笑う顔に会いたい
名前を呼びたい、名前を呼んでほしい。

全部奪われてしまった。
鬼が俺から全てを奪っていった。

人体の限界を超えた速度を求めて
機械による強引な投擲は止まらず
皮膚の裂傷、出血、血管と神経の断裂、
指先から肩に至るまでの全ての関節の脱臼および数箇所の開放骨折および数十箇所の粉砕骨折を引き起こしていた。

それでも止められない、
否、俺は止めない。
志願したのだ。
痛みが何だ、腕の一本二本が何だ、
命がなんだというのだ。
どうでもいい。
命などもう惜しくない。
俺には鬼への憎しみ以外にはもう何もない。
この痛みは守れなかった自分への罰。
だから志願した。
鬼を殺すため。
自分を殺すため。

あああああああああああああっ!!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぶっ殺してやる
装填される豆。
歯車とピストンが激しく音を立てる。
熱と煙と血、潤滑油の灼ける臭い
目はもうよく見えない。
痛みも消えた。
あは、鬼どもの断末魔が聞こえるな。
あは、あははは、はは…

技術が…激しい痛みを伴…これ以上は……
オニを…きかいとくっついて……ごめん…にんげん、ああ…あ、あ、まぶしいな…
ああっ…ああっ!きてくれたまたあえた…ずつとあいたかったんだよ……あいしてる…
光。
喜悦。
天。


ピーーッッッ…ィィィ………
桃太郎號、信号停止。

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