![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64678642/rectangle_large_type_2_0f082d5bb143421eb11651d7aaae70cb.jpeg?width=800)
ゴードン・ラムゼイと英国人のしたたかさ?
皆さんゴードン・ラムゼイというシェフとレストランをご存じだろうか?
スコットランド出身、主にイギリスで活躍するシェフでミシュラン3つ星のロンドンの旗艦店のほかに多数のレストランを経営している。
日本では同じような経営や活躍をしていたジョエル・ロブションの方が知られているだろうが、あれと同じようなスター・シェフと思ってもらいたい。
先日とある先輩にこの旗艦店に連れて行ってもらった。美味しいものは勿論好きだが所詮はB級グルメどまり。3つ星レストランなんて数えるほどしか行ったことは無いしロンドンでは初めてだったので、些か楽しみに出かけた。
どうせ3つ星レストランに来たのだから一番良いコースを、ワインはお勧めペアリングにして何が出てくるか楽しみに、ということになり実際出てきた料理はなかなかだった。上記のとおり味を語る資格は無いので、美味しかったとしか言いようが無いのだが(美味しいなぁと呟いたら、先輩から3つ星だから当たり前だ。なんだその月並みな感想はと叱られた)、一番驚いたのは客層だった。
服装はSmart Dress Codeという一番困る指定で、ノータイで良いけどお洒落して来いよというアレである。今回は平日だったので私は最も無難にスーツを着ていった。まぁ、スーツ族は少ないだろうがボチボチいるだろうと思いきや、何とスーツ姿なのは私だけだった、、、
店内には、BTSとBlackPinkを混ぜてちょっとポンコツにしたような韓国人の4-5人組、ジャケットすら着ておらず、お洒落感皆無の普通のシャツ姿の英国人男性4人組、きれいな女性とずんぐりむっくりの冴えない服装の30歳代くらいの男性との英国人カップル、正体不明のアジア人カップルなどなど、3つ星っぽい客は英国老婦人(といっては失礼だが)のペア1組ぐらいである(勿論我々へたれジャパニーズもお忘れなく)。
ハッキリ言えば、カネはあるけど、、、の田舎者集団が大半だったのだ、、
加えて、その昔訪ねた3つ星レストランと比べテーブルの間隔も狭く(もちろんビストロみたいなことは無い)ともかくえらいカジュアルな感じなのである(勿論お値段はカジュアルではないが、、、)。
で、グルメで3つ星レストランを訪ね歩いている先輩に、これは酷くないですか?最近の3つ星レストランはこんなもんですか?と恐る恐る尋ねてみると「うん、確かにこんな雰囲気の3つ星は初めて。でもまぁそれを言えば、俺たちも田舎の観光客だし、ゴードン・ラムゼイがこれで良いと思ってるんだから、そのまま受け入れるべき。文句を言うのは筋違いで、嫌なら二度とこなければ良いだけの話」となかなか大人というか男らしい返事。
うむさすが卓見ですね、と返しつつも私の脳裏をよぎったのは、これはどこかで見た光景ということだった。
ロンドン中心部の狭い道には、どう考えてもフィットしないフェラーリやらベントレーやらレンジローバーが溢れかえり、地下駐車場なんて殆どないので、ヨーロッパで良く見る路上にズラッと並んで駐車しているあの光景に、フェラーリが普通に混じっていると思ってほしい。
野ざらしだから鳥糞やら樹液やらがポタポタ垂れて、そんな惨状のポルシェも普通に走っていて、ただ運転してるのは大抵30-50歳くらいの非英国人である。高級住宅街とされるメイフェアやチェルシー、ケンジントン界隈の超高級フラットは中東やらロシアやら中華系の金持ちで大半が占められていて、英国人なんて殆ど見かけない。
もっとも英国人の金持ちは市内には住まず、郊外の大きな屋敷に住むのが普通なので、見かけないのも当然と言えば当然なのだが、バッキンガム宮殿付近の一等地がそうした成金外国人にほぼ占拠されてるのはどうなんだろうと何となく思うのだが、英国人はどうやら違う感覚らしい。
鄧小平ではないが、白猫であれ黒猫であれカネを持ってくるのが良い猫なのだ(笑)
この辺りの割り切りが実に英国人らしいというか、サッチャー改革のウィンブルドン現象ではないが、要は英国で金を落としてくれれば何人であってもそれで良いではないか、どうせ高級マンションは持って帰れないし、という腹積もり。
そして、それらの成金外国人にお金を落としてもらうべく、雰囲気良い街並み、高級ホテル、3つ星レストラン、そして王室ブランド!を用意し、金持ちの心をくすぐる仕掛けは素晴らしく巧みである。
とは言え、プライドとか英国らしさというのは失われたのではないかと一抹の寂しさも感じる。教育で担保しているようにも見受けられるが(この話は別の機会にしたい)、ただ、何だが少しがっかりして複雑な気持ちになったゴードン・ラムゼイ訪問だった。
英国人らしいしたたかさと捉えるべきか、落魄の帝国というべきか。
え?紳士・淑女が集う大英帝国らしいレストランは残っているのかって?
勿論ですよ。
例えばWiltonsというレストラン。大半がスーツ・ドレス姿、紳士一人の客も散見され、雰囲気・値段とも超一流、かのチャーチルも常連だったという、素晴らしいシーフードレストランがある。
安心して欲しい、味も「伝統的」な英国らしいクオリティである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?