見出し画像

カスタマーサクセスとは#1-2

前回の#1-1ではリテンションモデルの概要を把握しました。
今回はこのリテンションモデルがなぜ登場し、ここまで注目され出したのか、について学習していきます。(かなり読み応えありで、久しぶりの4,000文字越えです)

参考図書

1-2 リテンションモデルへのシフトが不可避な理由
~リテンションモデル登場の裏にある大波の全容~

・CDの売り切りモデルからAmazon musicのようなサブスクモデルに変わり、ユーザーの音楽の楽しみ方が大きく変化した
・その裏でサービス提供者(プロバイダー)にも大きな2つの変化が起きた。
①ハードとしての「モノづくり」が不要になった
②ソフトによる「コトづくり」コストが劇的に安くなった

・プロバイダーは『How:どうつくり、どう供給するか』を考え実行するための多額の予算や専門スキルをもつリソースがほぼ不要になった
Howに費やす時間を『What:どんなサービスが』『Why:なぜ今必要か』に回す事ができるようになった
・リテンションモデルはクラウドの登場だけが理由ではない
・本当の理由はデジタル技術革新がトリガーとなり、数多くの要因が絡みあう押し返せない大波のようなトレンドが存在する

引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034  P34、35参照

<所感>
なかなか衝撃的な出だしです。要はこれまでのビジネスモデルが完全に破壊し、すでに新しいビジネスモデルが台頭していると言うことです。
ユーザー目線で見ても普段の生活に直結しているためその変化のスピードは体感していると思います。
クラウドは「データ分析」「AI」「IoT」の民主化などとと言われ、これまで選ばれし者(=資本力のある企業)しか導入出来なかったインフラをすぐに構築できます。これによっていわゆる『スモールスタート』が出来る様になった事がもっと大きいと思います。
従来、やるなら大きな投資で大きなリスクを背負う経営判断プロセスもスキップでき圧倒的にスピードも向上します。
なお、これ以降のセクションのベースとなる参考図は近日中にアップします。(これがないとちょっと難しいかもしれませんが…自作に時間が必要)

①のループ『世の中の値付けは標準が成果ベースへシフト』

・第1のループは『限界費用ゼロ社会へのシフト』というプロバイダー側からのトレンドから始まる
・インターネットの普及と革新的IoTプラットフォームが登場し、コミュニケーション・エネルギーの輸送コスト劇的に低下し、権力は中央集権から大多数へ分散化
製造はマスプロダクション(小品種多量)から、パーソナルファブリケーション(多品種少量)へ変化するなど、従来の資本主義が終わりを迎える
・ほぼ無料の財・サービスが広く普及する協業型コモンズが台頭し、価値の拠り所は関係性や信頼・善意へとシフト
→私的金銭的利益から協働共有利益が追求されるようになる
・デジタル技術革新は、利用者の消費行動・思考にも影響し、消費市場が成熟し物質的に満たされた人々の関心は経験へ向かう
・さらにSNSにより、「他の人は何をしているのか、自分は何を伝えたいのか」へ注目か集まる
・結論として
+これまで以上に成果を吟味する
+お金や時間を自分が大切と思う体験・目的に使おうとする
『所有<利用、成果重視の価値観』が強まる

・これらの延長線上に新しい価値形態『シェアリング経済、コミュニティ価値』が登場する
・例として日本生まれの「note」は見知らぬ人と人がつながってコミュニティが生まれ何かを共有する、その共有される体験そのものに価値がある(コンテンツがコミュニティ形成のきっかけに過ぎない)
・第1のループではデジタル技術がトリガーとなりプロバイダーのコスト構造が変わるトレンドと利用者の価値観が変わるトレンドが融合
・経済取引の価値の源泉がモノの所有から体験や成果ベースへシフトする
・第1のループでもう一つ重要なことが『ミレニアム世代(1981年〜1995年生まれ)の影響』

引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034  P40~46参照

<①の所感>
かなりつらつらと書きましたが、この流れは図だけでは難しくむしろ読み込まないと分かりません。これ以降もつらつらと書きますがほんとに重要です。
「モノからコトへ」と言うキーワードは最近おまじないの如く耳にします。
でもそれがなぜか?となると理路整然とした説明をできる人は少ないと思います。もちろん私もです!!
この本はそれをこれでもか、とわかりやすく整理してます。

②のループ『経済取引の選択権が利用者へシフト』

・第2のループは『カスタマーのスマート化』と言う利用者側のトレンドから始まる
・スマホの浸透により、個人の情報武装が飛躍的に進んだ
・スマホの登場により、情報のモビリティが飛躍的に向上した
スマホの登場と合わせて通信システムが4Gに変わり大量の情報を不満のないスピードで取得できるようになった
→便利なアプリや情報サービスが次々に登場
・スマホ×4Gでプロバイダーが握っていた情報が利用者に開放された
・利用者のトレンド『カスタマーのスマート化』は結果的にプロバイダー側のトレンド『ソフトウェア武装した反乱者のバリューチェーン破壊』を誘発する
・商流・物流の破壊の中でも「D2C(Direct to Customer)」が代表的。既存の小売店・卸店やどのチャネルを一気に中抜きするメーカー直販モデルのこと
・既存商流を介さずに急成長するD2Cが現れた最大の要因はSNSで利用者へ直接情報を伝えられるようになったこと、また小ロットから安価に発注できる中国やインドの製造機の存在が大きい
・価値構造のシフトにより利用者はますます情報を取りに行く
・このような避けられない潮流のなかで、プロバイダーが握っていた経済取引の既得権が利用者へシフトする「カスタマー・イズ・キング(最大権力を持つ王様)」の時代に突入する

引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034  P46~51参照

<②の所感>
少し複雑な記載が続きましたが、
+利用者目線では「情報収集のコストが劇的に下がり」
+プロバイダー目線では「届けたい情報を、届けたいユーザーに、ダイレクトに届ける仕組みが出来た」

と言うことです。無駄な商流は伝言ゲームとなり、情報の欠落やスピードの低下につながります。
いわゆる従来の商社の様な立ち位置で、情報正しく早く伝える人をエバンジェリストと言ったりしてます。またエバンジェリストは魅力をただ伝えたいと言う超自発的な面も従来とは全く異なりますね。

③のループ『競合プロダクト価値が中毒になるレベルへシフト』

・『ソフトウェアのあらゆる産業侵略』という業界全体のトレンド
・この業界トレンドは、『データ入力/継続的働きかけの日常化』を加熱させる
バリューチェーンやプロダクト自体にソフトウェアが浸透した事で、以前は入手不能だった「プロダクト買われ方・使われ方」に関する情報を客観詳細データとして入力できるようになった
プロバイダーは利用者のデータを取得し、分析に基づき個別化した働きかけを継続的にする事で利用者との絆を強める。そのためにデータ争奪戦が競合間で熾烈になる
デジタル技術が進化すると、プロダクトでできる事が増大し複雑化する。一方人間が技術を利用する能力には限界があり、その差をいかに解消するか=利用者が利用でき・利用し続けたいと思うための工夫・手間が重要となる。これを『利用ギャップの増幅(手間の必須化)』
・こうした手間が必須になることからも『データ入力/継続的働きかけの日常化』トレンドが必然的に加速化され、『勝者オンリーワン化の爆速化』につながる
勝者となった『ソフトウェア武装した反乱者のバリューチェーン破壊』は威力を増し、破壊されたバリューチェーンはソフトウェアに置き換わる
・第3のループが回る事で競合のプロダクト価値は中毒になるレベルへシフトする

引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034  P51~55参照

<③の所感>
利用ギャップの削減。かなりカスタマーサクセスに重要なキーワードが出てきました。
まだ第1章ですが能動的なユーザーへの提案が必要な理由がかなり散りばめられています。面白い。
ちなみに勝者オンリーワンの構図はWTA(Winner Takes All)と言うワードでも良く聞きます。主にGAFAMに代表されるプラットファーマーに用いられていますが、リテンションモデル全体にも適用できそうです。

④競合のゴールがカスタマーのLTV最大化へシフト

・第4のループは第3のループから派生する「勝者」となった企業が利用者の利用データ取得拡充に向けて『ソフトウェア事業→ソフトウェア+ハードウェア事業』へとシフトするトレンド
GAFAが圧倒的な優位性を築いているのは「嗜好」データ項目であり、他の健康などの領域ではデータ争奪戦が繰り広げられている
新しいデータを取得するには、ソフトウェア会社でもハードウェアやリアルな世界へ進出する事が必要
・プロバイダーがデータを拡充するほど、『時価エコノミー(ワクワク感の重視)』に拍車がかかる
実際に生み出した価値の大きさでなく「将来生み出しそうな価値への期待の大きさ」が重視される
「未来を変えてくれる期待感(ワクワク感)」の高い所により多くのお金が集まる時代になった
・未来の価値への比重を高めているのが『モノ言う株主の影響』。いわゆる新型アクティビストは従来のファンドと以下の2点で異なる
①直接的な攻撃はせず、経営陣との面談や意見書の提出を求めるなど、あくまで友好的な態度で長期的な企業価値向上を迫る
②他の株主の賛同を得やすく保有株数が少ないのに大きな発言権を持っている
・こうした第4のループが回る中で、競合のゴールがカスタマーのライフタイムバリュー(LTV)最大化へシフトする
利用者はより優れたプロダクトに生活や仕事環境が改善することへの期待感から自分の詳細データをプロバイダーが持つことを許し、プロバイダーはそれを基に利用者から将来を期待される存在であり続けなければならない

引用:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」 ISBN 978-4-86276-268-9 C0034  P56~61参照

<④の所感>
全体通してかなり重要です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの対比を理解し、一つ二つ事例を見るだけでは分からない、これらトレンドの源流。
ほんと良い学習になりました。
じっくりしっかり読込み、アウトプットしていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?