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NPSの導入準備#2_NPS導入は楽じゃない!

前回は第I 部を見ていきました。
ざっくりとした要約として

<NPSが誕生した背景>
「顧客満足度が重要」と経営トップや幹部は理解していながら、それを測る方法がなく、財務諸表による経営判断ばかりになっている
<NPSの利用価値>
「友人や同僚にその会社のことやプロダクトについて薦めますか」という究極の質問に集約し0~10で評価できるシンプルかつ強力なツール
「批判者を中立者へ」「中立者を推奨者へ」と変えるための日々の改善活動につながり、経営システムとして機能する

ということでした。

今回は第2部で、NPSを導入すると具体的に何が起こるのか、何が成功の秘訣で、何が障壁かについてみていきます。
文字数:約4,900

参考図書

第II部 結果を作り出す

第6章 NPSで成果を出すということ

<NPSを成功させるための3つの鍵>
①経営陣がNPSを通した顧客ロイヤルティの改善を重要な優先事項として受け止めている。また彼らが”経済的に取り組むべき理由”と”動機付けや士気の面で取り組むべき理由”の両方を理解している
②NPSの顧客フィードバックを組織全体の主要な意思決定プロセスに組込み、学びと改善のクローズドループを作っている
③企業文化の変化と成長に至る長期的な道のりとしてネット・プロモーターに取り組み、企業が収益を伴う持続可能な成長を実現するためにNPSに取り組まなければならないこと理解している

<参考事例>
事例①チャールズ・シュワブ
・会社の経営苦境に対して、顧客志向主義をNPSで実現
事例②アップル(リテール事業)
・2001年にアップル直営店の第1号店で「顧客と従業員の生活を豊かにする」をコンセプトにした空間・体験づくりの指標としてNPSを利用
事例③アセンション・ヘルス(カトリック系医療機関)
・「絶対的な患者満足」を掲げた経営戦略の実現にNPSを用いて「スタッフへの権限移譲と問題解決のための体制整備」「感情を込めた社交的で精神的なサポート」「リアルタイムでのクローズドループフィードバック」「人事制度の改善」の4つの柱に沿って改革を推進
事例④プログレッシブ・グループ・オブ・インシュアランス
・保険契約継続率はLTVの向上に最も効果的な指標であり、この向上のために「感じがよく親身」という定性的な考えをNPSとリンクさせ継続率向上を実現
その他の事例:ラックスペース、ヴァージン・メディア、ブリティッシュ・ガス・サービス、アメリカンエキスプレス

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P182〜209

第7章 経済性と動機付け

<ネット・プロモーター・システムの2つの柱>
①経済的に取り組むべき理由(=経済性)
顧客ロイヤルティに投資を行い、その投資収益率を計算できる
・顧客ロイヤルティが高まればより大きな収益がもたらされ、さらにロイヤリティ構築に投資できる(好循環)

②動機付けや士気の面で取り組むべき理由(=動機付け)
顧客のために正しいことをしたい、働く場所を素晴らしいものにしたいと思っている
・自分が相手の立場になってやってほしいと思うやり方で対応する

・どちらの柱も追及すればキリがないが、短期的に推奨者を量産することは意味がなく、会社の利益は急落する
従業員が自社に誇りを持てるような方法で顧客や同僚と接することが基本であり、それが組織全体でできた初めて本当にロイヤルティに値する

<2つの柱を補強する>
・NPSが適切に導入されていれば、経済性と動機付けは互いに補強し合い、ロイヤルティが高まり利益も高まる好循環が生まれる
NPSを正しく導入した企業は、批判者との会話から明らかになった問題の根本原因を解決することにまい進しなければならない(悪しき利益を蔓延させない)
業界全体が経済的にひっ迫してくると常に悪しき利益に走る傾向があるが、こうした顧客への不親切な行為は事態を悪化させる
・経営陣が本気で悪しき利益を排除しようとするまで、従業員のロイヤルティを獲得することはできない(=顧客ロイヤルティも幻想に終わる)

<従業員ロイヤルティの測定(eNPS)>
・まずロイヤルティの高い従業員を作らなければロイヤルティの高い顧客は作ることができない
企業を素晴らしい働き場所とするための主な要因は、顧客や同僚への対応の仕方に誇りを持てる状況に従業員を置くこと
eNPSは「働く場所としてこの企業を進める可能性は、0~10点で示すとしたら何点ですか」というシンプルな質問にする
eNPSは正直なフィードバックを促すために匿名で回答できるようにする必要がある
・eNPSは顧客NPSよりも低くなる傾向にある
・eNPSを絶対値で改善目標を設定することは誤りであり、競合他社や顧客NPSとの関係など相対的にとらえる

<NPSの始め方>
・NPSの未導入企業の最初の疑問は「どうやって始めればよいか」
・経営陣が本気でNPSに取り組んでいることを示すだけでなく、新しい指標導入による方向転換によってどれだけ持続する収益成長がもたらされるかを、従業員に理解させる

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P212〜238

第8章 顧客とのクローズド・ループを回す

・ネット・プロモーター・システムで優れた結果を出すためには、顧客フィードバックを毎日の通常業務に組込み、個々の顧客と話をして「クローズド・ループ」を作って適切に措置を取ること
・顧客接点の最前線でクローズド・ループによる学習プロセスを行う主な目的は、各従業員が個々の顧客のために問題を解決しやすくすること

<NPSをコアプロセスに組込む>
事例:ロジクール
・製品リリース前の意思決定プロセスにおいて、25名の顧客に使ってもらいNPSを測定し、一定値を超えないとリリースできないようにしている
・エンジニアが顧客フィードバックをすぐに確認でき、製品の改善活動にNPSを組み込んでいる

<顧客コミュニティ>
・組織全体の重要な意思決定プロセスにNPSを組み込むための重要なツールに顧客コミュニティ、つまりその企業の製品やサービスについて定期的にフィードバックを提供するグループがある

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P240〜269

第9章 長期的な変革に備える

・改革の成功のためには努力の見返りとネット・プロモーターへのコミットメントの両方が必要であり、最初から注意深くNPSに取り組んでいけば、その努力に見合うだけの価値を最大限に得ることができる

<NPS導入と運用までの長い道のりに備えるための必要な事柄>
STEP1:成功に向けた適材適所
・顧客志向の企業文化を作るための取り組みに相応しいバックグラウンドとスキル・経験を持ったリーダーを選ぶことから始まる
・ネット・プロモーター・システムの採用におけるリーダー選出の3つのガイドライン
A)適切なスキル、経験、個人的な資質、エネルギーが必要
B)どこで最大の変革を起こさなければならないかを考え、それに応じて取り組みを組織化する
C)変革リーダーはCEOまたは重要な事業部門の役員クラス直属とし、最優先事項であるというメッセージを組織に送る

STEP2:組織の壁を越えて取り組む
・NPSは常に財務部門の賛同と積極的な支援が必要
・機能別に構成された組織は何が正しいのかについて異なる目標や見解を持っている可能性があるが、そうした組織の壁を越えてNPSを用いることが新しい可能性を切り拓いていく
NPSはそのシンプルさほど単純な評価基準ではなく、ビジネスのやり方そのものであることをリーダーが認識して取り組む

STEP3:顧客を中心に組織を再編する
・NPSに取り組むには、最前線のチームを小さな単位にして責任をより明確にするか、すべての顧客体験を効果的に取り扱える機能横断チームを作る必要がある

STEP4:NPSと報酬の連動に慎重を期する
・NPSと現場の従業員のボーナスを拙速に連動させることで問題が生じることもある
問題1:顧客体験の向上には従業員が正しい教訓を学び適切な行動をとるようにさせるツールとしてよりも、スコアを上げることが目的になりがち
問題2:測定プロセスを開発し正しい測定基準を設定することが難しいため、策定に大きなプレッシャーがかかる
問題3:報酬と連動させると間違いなく不正やごまかしを誘発する
・これらの問題を肝に銘じて慎重(数年単位で)に報酬連動を実施しなければスコアがすべてで改善のための素直なフィードバックなどどうでもよくなってしまう

STEP5:IT部門から十分な支援を受ける(大企業の場合)
・ネット・プロモーター・システムの特徴の一つに、中小企業でも導入でき役に立つ
・しかし大企業では会社専用のソフトウェアが稼働しており、幅広い業務システムにNPSを組み込むには巨額のIT投資とIT支援が必要となる

STEP6:企業文化を変革する
・ネット・プロモーター・システムは企業文化の変革であり、非常に大変であるが決してあきらめてはいけない

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P272〜305

第10章 ネット・プロモーターの最前線

・何百年と時間をかけて開発された管理会計、何十年と実践されてきた品質管理と異なり、ネット・プロモーターはまだ黎明期
・今後待ち受ける機会や困難が想定しやすくなるようにどのような課題が残されているかを確認していく
①eNPS(従業員NPS)
・顧客NPSの取り組みと緊密にフィットする形で、eNPSが従業員ロイヤルティを改善するための新たなアプローチの必要性を認識する企業が増えていくと予想される

②内外からの抵抗
・eNPSを導入すれば、既存の社員満足度調査を提供している会社から否定的な反応が起こる
・顧客NPSについても同じように既存の顧客満足度調査機関から抵抗がある

③本当のリスク
・批判者は解決できる欠点の特定を手伝ってくれるので最高の盟友であると言える
・本当のリスクはNPSへの理解度が浅く、NPSを実践していると思い込むこと

④信頼できる数字
・回答率にも着目し、どうすれば回答率を上げる事ができるかとアプローチ改善も行う
・収集方法も一貫性を持ち、結果と顧客行動に矛盾がないことも追跡調査する

⑤経済性を理解する
・特定の顧客ロイヤルティの改善(推薦者を増やし、批判者を減らす)ことの価値を自信を持って定量化できる企業は少数

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P308〜335


参考:③本当のリスクを診断する質問集

<所感>

第I部、第II部ともにかなり豊富な事例が掲載されています。
私の要約は事例も読んだうえで、個人的に大事と思った部分だけを抽出しているので、「NPSを今後導入したい」「NPSの導入はしているがどうもうまく機能していない」という人は是非手に取ってみてください。

第II部はかなり詳細に導入手順と各ポイントでの注意点について細かく丁寧に記載してくれていました。

NPSは単なる満足度の指標でなく、それを使って
クローズド・ループを作って、日々の改善活動につなげるシステムである

というのが、この本の中で最後まで一貫したメッセージだと思いました。

第II部で重要だと感じた点は

①ロイヤルティの高い従業員を作らなければ
ロイヤルティの高い顧客は作ることができない
②ネット・プロモーター・システムは企業文化の変革であり、
非常に大変であるが決してあきらめてはいけない

の2点です。
近々導入予定ですが、この2点は肝に銘じて取り組むようにします。

マガジン作りました!


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