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アコンカグア14日目:下山開始

2019年2月3日(日)

C3からBCへ

登頂の翌日、喜びもつかの間、今日はこのC3コレラ6,000mからBC4,300mまで下山しないといけない。しかもC1にデポしてある荷物もすべて回収して。

おそらく6時間くらいあれば下山できるだろう。しかしさすがに体中が痛み、筋肉痛のような感じだ。

15時間も歩いた、さすがに疲労は溜まる。

登るのも大変だが、下るのも大変。でももうこのキャンプ生活も終わりだ。明日にはメンドーサに戻って、シャワーを浴びて、ワインも浴びる。ステーキも食べ放題だ。

テントを畳むのも慣れたものだ。バックパックにすべての荷物をパッキングして、C3をあとにする。C2までは1時間ちょっとあれば着くだろう。

途中、ベルリン小屋の前を通った。植村直己【著】「青春を山に賭けて」にも登場する50年以上も前からある小屋だ。

1968年およそ50年前、植村直己が山頂で見た景色と同じ景色を僕も見た。植村直己が登頂したときに、山頂の箱に手紙を入れたそうだ。僕が登ったときも箱があったが、当時と同じものなんだろうか。

先人と同じ、変わらないものに挑戦するって良いな、そう思った。なんとも言えない感情がこみ上げてきた。

そしてC2には、C1から登ってきたサトキ君が滞在しているはずだ。登頂報告ができると思うと嬉しい。

もう何度も来たC2ニド・デ・コンドレス

コンドルの巣と呼ばれる広いキャンプ地だ。山頂で会ったジュンヤさんはいるだろうか。今日の夜にはBCで再会できるだろう。

C2に下りていくとサトキ君がいた。再会と登頂を喜びあった。

明日、C3に登って、その翌日にサミットプッシュをするそうだ。健闘を祈る。

下山中に吹雪になったこと、山頂でジュンヤさんに会ったことなどを話した。まだ話したいことはたくさんあるが、またメンドーサで会おう。

アートギャラリー

C1でデポしてある荷物を回収して、過去一番の重量の荷物を背負って、ベースキャンプまで下山した。

さっそく、テントを張る。慣れたものだ。

テントを張るのもこれで最後!明日はメンドーサのホテルに宿泊して、これでもかっ!というくらいの熱々のシャワーを浴びる。
(アルゼンチンは夏だが、今はそういう気分なのだ。)

テント設営後は、先日訪れた世界一高い場所にあるアートギャラリーを再訪した。ミゲルさんと固い握手をして、無事に登頂したことを報告した。

そしてアコンカグア登頂を記念して、絵を買うことにした。

手持ちのお金がそんなになかったのと、小さめの絵がほしかったので、A4サイズで400USDくらいで買える絵が欲しいと伝えた。

飾られている絵には値段は書いてなかったが、パンフレットには値段が書いてあり、載っていたA4サイズの絵(1点モノのためほとんどがすでに売却済み)の相場がそれくらいだった。でも300〜800USDくらいまで値段の差はあった。

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(右下が日本のメディアに紹介されたもの)

値段は気にしないで、この中から8つ選んで、と言われA4サイズの絵が並んでいるところを見た。

どれも素敵な絵だった。

南十字星が輝いている絵、アコンカグア名物ビエントブランコによって行方を阻まれている絵、自然現象ペニテンテの中を進んでいく絵、アコンカグア南壁の氷河の絵、

この2週間のあまりにも濃い思い出が鮮明に蘇ってくる。どれもアコンカグアに登る人には思い出深いシーンが描かれている。

ミゲルさんは、僕が選んだ8つをさらに4つに絞って、この4つの中で一番好きなものを選んで、と言った。

そして僕が選んだのは、この絵。

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南十字星が輝く、アコンカグアの夜の絵だ。

真っ暗になるアコンカグアの夜、でも力強く、他とは違った輝きを出している絵を選ぶところがなんとも僕らしい。

この絵は一生の宝ものだ。
(日焼けしてボロボロな顔はアコンカグアに登った勲章だ。)

最後の挨拶

最後に、お世話になったINKAのスタッフにあいさつをしに行った。

「Congratulations!!」とみんな祝ってくれて、ハグをした。

明るくて、頼もしくて、みんないいヤツだった。INKAを選んで本当に良かった。

そして明日の朝、メンドーサへ帰ることを伝える。2日しか過ごしていないメンドーサに、2週間過ごしたアコンカグアから帰る、という心境が不思議な感じだ。

行きの時にムーラの荷物を預けたペ二テンテスからメンドーサへのバスは20時が最終だ。

それに乗れなければ、明日中にメンドーサへ帰ることはできない。行きはオルコネスからコンフルエンシアまで3時間、プラザデムーラスまで9時間かかった道のりだ。

18時にはオルコネスに着きたいが、行けるだろうか。

昨日はサミットプッシュで14時間の行動をして、今日も6時間くらい下山して、明日も9時間は歩くだろう。

登頂したあとも、ハードなスケジュールだ。

食料がけっこう余ったので、INKAのスタッフに配って回った。みんな日本の食べ物に興味津々。美味しく食べてくれるだろうか。

明日のムーラの手配をして、テントに戻った。

あいさつ周りをしながらジュンヤさんを探したが、見つけることができなかった。INKAのキャンプ地でテントを張っていると思ったのだが。

まだC2にいるんだろうか。そんなわけないと思うが。会えないなら仕方がない。これもまた旅だ。

不思議と、会える人とは偶然ばったり会うものだ。

たまたま予約した宿の同じ部屋で再会したり、街を歩いていたら鉢合わせになったり、バスターミナルでチケットを買っていたら、同じチケットを買おうとしているところに遭遇したり。

僕もよく経験がある。

もうまもなく日が沈みそうだ。

最後にINKAのテントに行って、Wi-Fiに接続した。そして一番初めに日本にいる従業員に向けて、メッセージを送った。

「登頂しました!」

ほかにもTwitterやInstagramで生存報告しないといけないけど、メンドーサに帰ってからでいいや。

これであとはメンドーサに帰るだけだ。


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