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アコンカグア6日目:ついにC2ニドへ

2019年1月26日(土)

雪だ

C1カナダには雪がなくて、水が作れないことが判明した。ちょっと登れば雪があるとかそんな感じでもなく、C2のニド・デ・コンドレス(通称ニド)まで行かないといけないそうだ。

C1からC2のニドまでは3時間、標高は6,000m、今日もテントを畳んで20kg以上のバックパックを背負って、山を登る。

体調は大丈夫そうだ。プロテインのおかげか体が重たいなんてこともない。夜は真っ暗だし、やることもないので、ずっと寝ているせいかもしれない。毎日21時には寝て、8時くらいに暖かくなってきたら起きる。

11時間睡眠だ。(−5℃の世界で)

テントはなんでもいいけど、寝袋とマットレスはけっこう重要だということがわかった。

一度にすべての荷物を持っていくことはできないので、今日は食料を置いていく。ダブルブーツ、アイゼン、テント類とちょっとした食料とガス。これで行こう。

C1にいても水がないので、さっそく出発しよう。

しばらくジグザグに登っていく。BCからC1に行く途中で見えた人たちはここを登っていたんだ。

登っても登っても雪はない。そして足元が砂利で滑りやすいので、力を入れて歩くので結構疲れる。

ジグザグに登る行程を終えると、次はまっすぐの勾配のある道だ。そして雪景色が広がっている。と思ったが、一度溶けて氷になっている。

もう少しでC2なのだろうか。

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滑りやすいので注意が必要だ。アイゼンは必要なさそう。(というより今履いている夏山用トレッキングシューズにはアイゼンはつけられないので、ここまま行くしかない。)

すこし休憩してから登っていく。C1を出発してから1時間半くらい経っているので半分くらいまでは来ているはずだが、まだまだC2らしき場所は見えてこない。

そして勾配がキツイ。息が切れる。

標高5,300mくらいまで登ってる上に、今日の本来の予定はC1で順応する予定だったのだ。

しかし水がなければ死んでしまうので、登るか下りるかの選択肢しかない。

雪が深くなってきた。何人も歩いている足跡があってそれが道のようになっている。

誰も歩いていないキレイな場所を歩いたら、膝まで雪に浸かりそうな場所もある。

すこし遠くにはものすごい荷物を持った人がけっこう早いペースで登ってる。50kgくらいの荷物を持っているじゃないだろうか、と思えるくらい大量の荷物だ。

それを地上と同じように歩いている。かなり慣れてる登山家なんだろうな。そう思った。似たような人がBCからC1の途中にもいた。

山頂まで、高さにしてまだ1,500m以上もある。C3からサミットプッシュをする日は1日で14時間は行動することを想定していないといけない。こんな人たちが挑戦する山に、僕は登ることができるのだろうか。

登っている最中は特に何も考えることがないので、いろいろな不安や邪念が浮かんでくる。それを振り払うように無心になって足を動かす。

続く急登

しばらくすると雪道が途切れて、砂利道が出てきた。そしてその先にまた雪景色が見える。そして急登がキツイ。

今度は、さらに長い雪道になっている。これだけ雪が残ってるんだ。きっとこれを抜けたらC2があるはず。(そうであってほしい。)

一人登山の何が不安って、どこにキャンプ地があって、今自分がどこを歩いているか、ペースは速いのか、遅いのか。

それがまったくわからないので、不安がつきまとう。

が、これが楽しい。これは冒険なんだ。自分で道を切り開いていくしかない。登山者がいる、登頂した人もいる。どこかに正解があるはずなんだから、そこに続く一本の道を探し当てるんだ。

C2のテントだ!

雪道を進んでいくと、先が見えなくなっていた。きっとあの向こうは開けていて、キャンプ地となっているはずだ。

もう3時間以上歩いている。そこにC2ニドがある。間違いない。

抜けた。

大きく開いた場所になっている。C1カナダよりも何倍も広い。

ここがC2のニド・デ・コンドレス(通称ニド)

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テントもかなり広範囲に張られている。なんでもここはアドバンスベースキャンプと呼ばれるくらいで、天候が良くなるのを待ちながら登頂日まで待機したり、状況によってはここからC3を飛ばしてサミットプッシュをしたりもする。

また、レンジャーという山岳警備の人たちが滞在していて、ヘリポートもある。天気予報もここで教えてもらうことができるのだ。

C3は標高6,000mでかなり風が強いらしい。長期滞在はできないため、みんなC2から登頂日に狙いを定めて動く。

今日はC2で寝るためテントを張らないといけない。そして今日から毎日、雪を溶かして水を作らないといけない。大変な仕事だ。

右のほうのC3に向かうところにテントがたくさん張られていた。たぶんコンフルエンシアで会ったセブンサミットのグループかなにかだろう。みんなノースフェイスの大きくて良いテントを使っていて、けっこうな大所帯だ。

しかし、あっちに行くまでに深い雪を渡らないといけないし、すでに疲労困憊で動きたくない。

風が強いため、なるべく岩の横とかで、なおかつキレイな雪がある場所がいいのだが。

そんな場所があったらすでにテントが張られているだろうな。とりあえず平らでペグが刺さりそうな場所にテントを張ることにした。

C2の中央付近、平で石が円を描くように転がっている場所があった。この辺にテントを張る人がいるんだろう。風を避けることはまったくできないけど、まぁいいだろう。平らになっているので、寝るのに良さそうだ。

テントが・・・

とテントを設営を始めたのだが、風が吹いてきた。さすが風の山。強風で吹っ飛ばされそうだ。

標高が高くなればなるだけ、風が強くなる。これがもっと強くなるならC3で滞在するのは大変だろう。

風が止まないため、なかなかテントを張ることができない。そしてテントのポールをテントと繋ごうとした瞬間、強風が吹いた。

テントが吹き飛ぶ。

一瞬でテントがはるか彼方に飛んでいき、山から落ちていく。

この瞬間に僕のアコンカグア登山が終わった、そう思った。

テントが飛んだ先はめちゃめちゃ雪が深い場所だった。その先にいた登山者の人が走って、雪に足を突っ込んで追いかけてくれた。

僕も走る。が、雪が邪魔でなかなかテントまでたどり着けない。登山者の人が猛スピードでテントめがけて走ってくれて、無事に捕まえることができた。

しっかりと怒られた。そして反省した。

この標高でテントがなくなったら、死を待つしかない。

結局、C2の入り口近くの岩場にテントを張ることにした。

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しっかりとペグを打って、ロープを岩に巻きつけた。念には念を入れておかないと本当に何が起こるかわからない。

そこにいたのは、アルゼンチン人で長身のDarioと小柄で年配のDiegoだ。この二人にはこれからかなり助けてもらうことになる。

とりあえず、かなり疲れている。久々に高山病のような疲れだ。一度でも心拍数が上がるとなかなか戻らない。

今日は水を作ってご飯を食べて、すぐ寝ることにしよう。

雪から水を作るのも初体験。お腹壊さないんだろうか。沸騰させたほうがいいんだろうか。たぶん水と雪を混ぜて水を沸騰させながら雪を溶かしていったほうがいいだろう。

1リットルの鍋に雪をいっぱいにして、テントまで持ち帰ってきて水をつくっても500mlにもならない。何度も雪を取りにいかないといけなくて大変だ。

何度か繰り返しているうちに2リットルくらいの水ができた。とりあえずこれくらいでいいだろう。

すべて軽く沸騰させていたら、ガスが1つなくなってしまった。残りのガスはあと2つ。

今までご飯を作るように多少使っていたとはいえ、なくなるのが早すぎる。もちろん酸素の問題もあるだろう。

これは沸騰させちゃダメだな。ガスがなくなって撤退しないといけなくなる。

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