見出し画像

アコンカグア12日目:C3コレラ

2019年2月1日(金)

C3コレラ

今日も快晴。C2ニドから最後のキャンプ地C3コレラを目指す。

前回のサミットプッシュ時にC3を通ったことがあるが、明るい時間に行くのは初めてなので、道は覚えていない。

寝袋をたたみ、テントをたたみ、すべての荷物を持って、C3に向かう。

標高は6,000m、ここから3時間くらいの行程だ。

予定では、明日の朝5時くらいにはサミットに向けて出発したいので、ちょっとでも順応するためになるべく早く到着しておきたい。

13時くらいに着ければいいだろう。

無心になってジグザグ道を登っていく。他に登山者はいない。天気は良いが、風がある。

2時間半くらい登っただろう。ベルリン小屋が見えた。

植村直己の本「青春を山に賭けて」にも登場する小屋だ。今はもう半壊しているので、使う人はいない。これが見えたらC3はもうすぐそこだ。

植村直己がアコンカグアに登ったのは1968年、50年以上も前からこの小屋はここに存在している。

植村直己もこの景色を見て、そして山頂を目指した。山頂にはどんな光景が広がっているんだろう。

そして僕は、山頂から故人と同じ光景を見た時に、どんな感情になるだろう。

C3の入り口は大きな岩場となっていて、ワイヤーが張ってある。それを掴んで体重を預けて登る。

見た目はしっかりとした強固なワイヤーだが、20kgの荷物を背負って掴んだら外れるんじゃないかと不安になる。

今思うと、昔はこのワイヤーがなかったからベルリン小屋で滞在する人がいたのかなと思った。20kgのバックパックを背負ってワイヤーを使わずに登ろうとすると難しい箇所がある。

体調不良もなくコースタイム通り標高6,000m, C3のコレラの到着した。

最後のキャンプ

C2に比べると小さなキャンプ地だ。何組か登山者がいて、真ん中にINKAのテントがある。

雪はやはり少ない。

今からやることは、テントの設営と、今日と明日の分の水作り、できれば戻ってきたとき用の予備の水も作っておきたい。(そのまま置いておくと凍ってしまうので、寝袋の中で温めておく)

あとはアタックザックへのパッキングだ。この登山最長の12時間以上の行程になるので、行動食などを入れておかないと動けなくだろう。

平らなところを探して、テントを張った。テントが飛ばないようにしっかりとペグを打ち付けて、中にバックパックと寝袋、マットレスを入れてから、外側のレイヤーをかぶせて、ロープを岩にくくりつけて完成だ。

ちょっと離れたところに雪が積もっている場所があるので、調理用の鍋と寝袋を収納する袋をもって雪をかき集めに行く。

雪といっても氷のように固くなっているので、そう簡単には集めることはできない。鍋を使って削り取るような感じだ。

削り取ったら、袋いっぱいになるまで雪を詰める。この気温なら溶けることはないので明日まで保管しておけるだろう。

テントに戻って、バーナーにガスを取り付ける。ガスを開放すると、シューという音がする。

バーナーの着火ボタンを押すが、火は着かない。さすがにこの標高では空気が薄いのか着火ボタンで火が着くことはない。

持ってきたライターの火を着けて、ガスに近づける。これでもなかなか着かないので、ガスの量を増やしてようやくが火が着く。

ほんの数日間だけど、こうやって火を着けるのも慣れたものだ。100円均一のようなライターだけど壊れなくてよかった。

今日は景気付けでラーメンを食べよう。残りあと二袋あるマルタイ棒ラーメン。この美味しい食べ物を食べることができて、日本人でよかったと思う瞬間だ。

画像1

残りの一袋はもちろん明日の朝に食べる。

スープまで全部飲めば、水分まで補給できる最強の食べ物。山で食べたらなお美味しい。(ここだと標高が高すぎるので、たぶん2,000mくらいで食べたほうが美味しいと思う。。)

今回、いろいろな食べ物を持ってきて食べたけど、この棒ラーメンが圧倒的に美味しかった。あとは、アマノフーズの畑のカレーシリーズ。

無印良品のリゾットはあまり美味しく食べることができなかった。標高が高くて、お湯の温度が低かったのかもしれない。水の量や、安定した火力でしっかりと調理しないといけなかったのかも。

定番の尾西のアルファ米。基本的に薄味なのかあまり美味しくは感じなかったので、塩を入れて食べていた。わかめご飯と五目ご飯は美味しかった。

今回の経験から、尾西のアルファ米とアマノフーズのカレーやシチューを混ぜて調理するのが「一番美味しい」という結論に達したので、これからの登山でもこの方法を採用すると思う。

6,000mでのトイレ事情

今まであまり書かなかったが、排便もうまくなった。テントの外でするのはさすがに恥ずかしいので、テントの内側のファスナーを開けて、外側のレイヤーとの間にゴミ袋を設置して用を足す。

画像2

最初はなかなか狙いが定まらなかったが、今では一発だ。すぐに凍ってしまうので、臭いはない。それでもバックパックに入れて持ち歩くのは苦痛だが。

基本的に便秘気味なので毎日出なくてよかった。

これだけ寒くて、毎日大量の水を飲んでいると、必ず夜中に1回以上トイレで起きる。

テントの近くですると流れてきたりするので、なるべく遠くでしたいのだが、ダブルブーツを履いたり、ジャケットを着たりと面倒なので、テントの中で空のペットボトルにする技を会得した。

男で本当によかったと思った瞬間だ。達人クラスになると寝袋の中でするらしいのだが、さすがにその域には到達していない。

そして生温かい液体が入ったペットボトルを外に出しておくと翌朝には完全に凍っている。

せっかく雪を溶かしてペットボトルに入れた飲み水も、外に出しておくと凍ってしまって解凍不可能になるので、寝袋に入れて一緒に寝る。

コンタクトレンズで登っている人もいて、保存液が凍ってしまうから大変だ。僕はICL手術を受けているので裸眼で快適な登山をしている。

今日もたくさん水を飲んで、老廃物を排出して明日のサミットプッシュに備える。

いよいよこの時がきた。本当にラストチャンス。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?