ペレとポリアフ。ハワイ島に住む2人のライバル。
ハワイ島には2人の偉大な女神が共存している。
ひとりはキラウエア火山を住処にしている火の女神ペレ。もうひとりがマウナ・ケア山に住む雪の女神ポリアフだ。
2人ともとても美しい女神だと伝えられているが、プライドの高いペレはポリアフの美貌に強い嫉妬心を抱き、ホルアと呼ばれるそり遊び(写真)で戦いを挑んだという伝説が残されている。
マウナ・ケア山に住むポリアフは、ある天気の良い日に友達と一緒に山の斜面を利用してそりで遊んでいました。それはハワイの王族の間で流行していたホルアと呼ばれる木のそりで、緑の草の斜面を滑り降り、誰が一番長い距離を滑降できたかを競い合う競技です。
ポリアフは誰よりも長い距離を滑り降りることができ、誰も彼女にはかないません。
ポリアフが滑り降りたその場所に彼女を見つめる黒いマントをまとったひとりの美しい女性が現れ、一緒にレースをしたいと申し出てきました。ポリアフは彼女を歓迎し、そりを彼女に貸し、一緒に山を登り始めました。
ポリアフに勝負を挑んできた黒いマントの女性はかなりのスピードで山の斜面を滑走していきます。勝負を挑んでくるだけあって、かなり自信があるようです。
しかしポリアフも負けてはいません。彼女の後から滑り降りると彼女が到達した地点よりさらに遠くへと滑り降りました。
すると黒いマントの女性は怒りをあらわにして目をギラギラさせながら、「このそりは私に合っていない!」と言ってきたのです。
ポリアフは彼女のために長いホルアを用意し、再び山の上へと登っていきました。
そりを変えて滑り降りたにも関わらず2回目もまたポリアフに軍配が上がると、黒いマントの女性は「そりが悪いのよ!」とまたもや文句をいってきました。
それでは、とポリアフは自分のそりを彼女に貸すということで3回目の勝負をすることになり、もっと上から滑り降りたいという申し出にポリアフも受けて立ち、さらに高い場所まで登っていき、今度はポリアフが最初に滑り降りました。
ポリアフが滑り始めると、黒いマントの女性は足を踏み鳴らし、地面を大きく揺らしました。するとポリアフが滑り降りるそりのコースの先に大きな裂け目ができました。勝負を見ていたポリアフの友達も目を覆いました。
黒いマントの女性はそのマントを赤々と燃やし、目をギラギラさせながら、ポリアフのすぐ後をそりに乗って追いかけてきます。黒いマントの女性は火の女神ペレだったのです。
ペレがもう一度足を踏み鳴らすと、溶岩が裂け目に向かって流れてきます。
ポリアフを助けようと彼女の友達はマウナ・ケアに向かって手を高く上げ、チャントを唱え始めます。すると黒い雲が山をおおい、雪を降らせて熱い溶岩の勢いを抑えました。
ペレはますます怒りに震えて叫び声を上げると、溶岩の勢いは増し、噴水のように湧き上がります。もはやポリアフのそりはその中に突っ込むしかありません。
勢いがついていたため、裂け目を跳び越えて落ちることはありませんでしたが、ポリアフの輝く白いマントには火がついてしまいました。
あわててそりから降りたポリアフはマントを振り払って火を消しました。
川のように流れる溶岩を流すペレをポリアフが静かに見つめ、白いマントを一振りすると今度は氷のように冷たい風が山から吹き、たちまちのうちに溶岩は冷えて固まってしまいました。
ペレはポリアフを焼き殺そうと叫び、溶岩を流しますが、もはや溶岩に勢いはなく、ポリアフの足元を流れる溶岩も彼女を囲むように二手に分かれて流れていってしまいました。
ペレは目の前の光景が信じられず、怒りは静まり、赤々と勢いよく燃えていたマントは黒く戻り、目の輝きも鈍っていきました。そしていつの間にかペレは姿を消してしまいました。
ペレとの戦いに勝利したポリアフも友達と一緒にマウナ・ケアへと帰っていきました。
それ以来、ペレは決してポリアフの住むマウナ・ケアの北側には足を踏み入れないそうです。
この勝負のときにペレが流した溶岩は、ヒロの北側で冷えて固まり、現在のラウパホエホエの奇岩の風景(写真上)とオノメア湾にあるアーチ岩だといわれています。
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