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SF初心者が読んで良かったと思えたSF作品5選

はじめに


 前記事で、私がSF創作講座を受講していることを書いたのだが、実は受講するまでSF作品を読んだことがほとんどなかった。ガチで野﨑まどと星新一をひと欠片くらいだった。『幼年期の終わり』や『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を開幕10ページほどで挫折した経験のあるSF弱者だから仕方ない。一年前くらいまでは「海外SF作品基本読みづらいから苦手だわぁ(オブラート64層包み)」とか言っていた。今はだいぶマシになったがそれでも苦手意識はある。

 そんな私でも、素晴らしき先達の方々が教えてくださり手に取ってみたSF作品がある。その中で個人的に特に良かったと思えた(≒印象に残った)作品を5つ(短編3作、長編2作)紹介する。

 ※個人の意見だが、SF作品は基本「我慢して読め」みたいな雰囲気がある。小難しくても文章が難解でも辛抱して読んで、その先にあるカタルシス(よくわかってない)とか快感とか新たな価値観とかを得るというのが良いらしい。多分サウナみたいなもん。私は水風呂に入れないので全然理解できない。体も文章も整わない。OMG。






短編(3作)




『第六ポンプ』(パオロ・バチガルピ)

  早口言葉にしたいSF作家ランキング第1位。異論は認める。
 2012年に出た短編集で、どの作品も割と読みやすい。個人的に一番好きなのが表題作の「第六ポンプ」。物語として大きな起伏がある訳ではないが、リアリティと虚構性の割合がじわりじわりと変わっていって、最後に残された1つのリアリティが沁みた。
 SF作品ってどれだけ虚構性の部分を受け入れられるかというのが、作品と読者の相性に深く関わっている気がするけど、個人的に相性バッチリだった。でも、私が一番好きなのは野﨑まどだから。あなた、信じて待ってて────





「第五の地平」(野﨑まど)


 My favorite short story.
 神作。笑える面白さとSF的な面白さが仁王立ちして天上天下唯我独尊になってる。簡単に説明すると、チンギス・ハーンが宇宙や次元を駆ける話。はじめに「故郷モンゴルはすでに7auの彼方であった」で読者の心をガッチリキャッチし、最後に「お前それ言いたかっただけだろ!」とツッコんでしまう秀逸なオチが待っている。最初から最後までチョコたっぷりである。SF界のトッポだと言われている。嘘である。
 私の好きな作家だから紹介しているという訳ではなく(いやそうでもあるのだが)、『NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション』『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』『2010年代SF傑作選 2』と三つの短編集に収録されていて、実際にそれだけ評価もされているので、SF玄人にもSF素人にも認められた間違いなく傑作である。ぜひ読んでみて欲しい。





「ラゴス生体都市」(トキオ・アマサワ ※現名義:天沢時生)


 第2回ゲンロンSF新人賞受賞作。
 参考に読んでみようという気楽な感じで読み始めて一気に引き込まれた作品。記事の冒頭に書いた通り、SFは我慢して読むものだと思っていたのだが、この作品はヒップポップや下ネタが盛り込まれていてノリが軽い。そのおかげで読みやすいにも関わらず設定が生み出す重厚感もある。さらに物語の展開もドライブ感が気持ちよくて一気に読み終わってしまった。こんなノリノリのSFもあるのかと新宿のネットカフェの一室で衝撃を受けた記憶がある。
 早く単冊で本を出して欲しい。新作も楽しみにしています。






長編(2作)




『三体』(劉 慈欣)

 みんな大好き『三体』。読んでない人にはあんまり伝わらない面白さ。
 冒頭の入り方が面白くて良かったけど、そこから残りの三分の二は我慢の読書だった。登場人物の整理が全然出来ないまま「なるほどね、完全に理解した」って顔だけしてとりあえず読み進めた。だってSF創作講座の主任講師が翻訳している話題作だもん、読まない訳にはいかないでしょ。
 そんな義務感だけで我慢の読書をしていたけど、終盤三分の一でめちゃくちゃ面白くなった。ビビった。「めっちゃ面白っ!」って声に出して言った。男の子が興奮しちゃう感じのやつ。ちなみに二巻(上下分冊)はその三倍面白かった。三巻(上下巻)がまだ読めてないから早く読みたい。
 話題作ならいくらか我慢して読めるという人は読んで損はない。というか得しかない。おすすめ。




『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)

 SFの名作と言ったらすぐに出てくるやつ。
 2021年夏に映画も公開されて知名度がさらに上がってきている名作は、海外SF作品なのに読みやすい。本当に読みやすい。普通に日本のヤングアダルト作品でも読んでるのかと思うくらい読みやすくて驚いた。ついでに面白い。猫はおまけ。でもかわいい。
 多分、これを小中高のどこかで読んでたら私もSF好きになってたかもしれないなぁと思える作品。1956年に発表された作品ということもあって「新鮮味がない」とか「ご都合すぎる」みたいな意見もある。たしかにと思えたりもするけど、それは恐らくその人にとってはもっと若い頃に読めてたら良かった作品だったってことなんだと思う。つまり楽しく読めた私はナウでヤングなパーリーピーポーである(Q.E.D.)。
 SF初心者で海外SF作品とかになかなか手が出せない人にとっては良い導入作になると思うのでおすすめ出来る。お子さんにSFを触れさせるなら『夏への扉』か星新一かドラえもんで良いと思う。じゃあドラえもんでいいじゃん。対戦ありがとうございました。





おわりに


 なんか適当に「5選」にしたからこうなったけど、他にも面白いのは結構ある。特に短編だとワンアイデアが光る作品はたくさんあって、例えば「冷たい方程式」とか「90億の神の御名」とか「息吹」とか枚挙に暇がない。特にカレル・チャペックの「大洪水」はこんなんでいいのかと驚かされたしあまりの荒唐無稽さに笑ってしまって完全敗北した。これがIMPACT EXCITER……(2010年7月7日発売、水樹奈々8thアルバム)。
 あとは、親切な方がコメント欄とかでお薦めを書いてくれるかもしれない。ちなみに「スキ」「フォロー」で私のお薦め本、アニメがそれぞれ表示されるように設定した。何種類かあるから連打してみてもいいよ。

 まぁ真面目に紹介したけど、皆さんは正直野﨑まど読んでくれたらそれで良いと思う。野﨑まどについては単体で書かないといけない分量があるからそれはまたいつの日か。

サポートしようと思ってくれてありがとうございます。ちなみに、野﨑まど作品を読んだり買ったりしてくれたらもっと喜びます!