SF創作講座を受講しての思い出①
はじめに
私は現在、「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の第五期を受講している。
この講座は、毎月お題に沿った短編小説の梗概(1200字)を提出し、名立たる講師陣に読んでもらえる講座である。更に、梗概が選出された人は実作(20000字の短編小説)を次の月までに仕上げると、その短編小説も講師陣が読んでくれて評価してくれる。
詳しくは、HPを確認してもらえれば良いのだが、簡単に言えば「プロの作家や編集者に自分の作品を読んでもらったりアドバイスをもらったりすることが出来る講座」となっている。
そして今はその講座の最終盤で、最終実作(上限48000字)を書いている時期である……はずなのだが、正直進捗は芳しくない。あまりにも芳しくなくて休みの日は部屋の窓から空を見上げて「オソラ、キレイ」と言っている始末だ。実際は曇天である。だからこそわざわざnoteにログインして思い出なんかを書き始めようとしているのだ。少し言い訳をつけるとすれば、過去を振り返って何か還元できるものとかがあればなぁという藁にも縋る思いなのだ。
ということで、過去の事を振り返っていこうと思う。誰かの何かの参考にもなったら嬉しいが、間違ったことも書いていると思うので責任は取らないと予め伝えておく。
第一回課題「旬のネタでSF小説を書く」
梗概講評のみのこの回は、ゲスト講師に長谷敏司先生と早川書房編集の塩沢快浩さんがいらっしゃった。
私は、お題を出された時点で「絶対コロナ書こう」と思っていた。これは、ゲンロンカフェでの藤井太洋先生と小川哲先生の対談イベントで、「作家はコロナから逃れられない。書かないことにも意味が生まれてしまう」という趣旨の話がされていたのを覚えていて、「なら書いた方が得じゃん」と思ったからである。単細胞 is 単細胞。それで出来たのが「プロボスキス」である。たしか、コロナ → 距離・隔絶 → 人が一生他人と関わらなかったらどうなる、という思考回路だったと思う。選出はされなかったが、ありがたいことに長谷先生からA評価をいただいてとても嬉しくなって勝手に実作を書いてしまった。ただ、実作は梗概にもらったアドバイス等によって内容が変わっている。今となっては反省しかない。SFを何も知らない創作初心者丸出し作品とはこれのことである。
この回で生徒の梗概を読んだ講師の方々がコメントされていたことを箇条書きでまとめていたので載せておく。私の解釈で書き換えているものになるのでニュアンスなどが違うものも多いと思うがご容赦願いたい。
・タイトル、最初の一文でつかむ(パッと見でつかむ)
・お客さんが読みたいものに自分が書けるものを合わせにいくというのも大切
↑ コントロールできない大きな流れ
・大枠を作って、物語化をして欲しい
・梗概の一番の目的は実作を読んで貰うこと。引きをつくる。
・設定だけでは物語は作れない
・一番面白いところをアピールしないと伝わらない、分からない
・しっかり計画を立てて
◎設定とキャラクター(と物語)が噛み合っていない。なんとなくじゃダメ
・キャラクターが動いているか、動かされているか
・面白さを納得させる
・他の作品と比較してどう抜け出すか。一番目立たせる、印象を残す
・アプローチを描く
・「これは今読むべき小説だ」とさせたい
・今回の場合は、『復活の日』『ペスト』に勝てるものだったか(現在・過去のプロ作家、作品と勝負出来るものだったか)
・トレンドにも1、5、10年もつものというものがある
・必然性のないものからは探しづらい
→ 自分の好きなもので考えてみるというのも良い
・パンデミックをパンデミックで書くのはちょっと難しいかも
・大局観が大事
・外の世界も考える
・掛け算するテーマがマッチしているか
◎必要性(その設定やキャラが物語やテーマ、あるいはSFとして書く必要なものであるか)
・梗概で完結していてはダメ。それで十分と思わせない
◎途中の展開と山場をしっかり書く
◎この作品をどう好きになってもらうか
◎梗概としてのクオリティを考える
◎もっと個性を出してほしい
「・」や「◎」は個人的なものなのであまり気にしなくて良いと思うが、創作初心者の私にとって金言ばかりで「やっぱプロってすげぇ」と感動したのを覚えている。
第二回課題「新人SF作家特集号の依頼」
第二回の梗概と第一回の実作を読んでくださったゲスト講師は、小川哲先生と集英社編集の稲葉努さんだった。
この時は、とにかく課題の意図を汲み取ろうと考えた記憶がある。その結果が提出梗概の「あるロボットの寄る辺」のアピール文に書いてある。梗概にそれが反映できているかは微妙。しかし、稲葉さんから「50枚(20000字)が想像できた」「アピールが分かりやすかった」とB+評価をいただけたので考えてやったことが少しは伝わったのだと安心した。ただ、小川先生からは「連作アピールはサムイからやめた方が良い」とご忠告いただいた。まったくもってその通りである。
この回はとにかく小川先生の評価軸がハッキリしていてとても勉強になったことが非常に印象的だった。一言で言うなら、
設定が生きているか
ということだった。物語の構造を十全に把握して、SF設定が物語に生かされているか(SF設定である必要性があるか)というところが強く指摘された回だと感じた(あとは梗概単体でのクオリティについて)。これはずっと自分に問い続けなければならないことであり、SF作品を書く上での基本中の基本なのだと思う。
おわりに
ここまでで、なんとなく自分が意識できていない事の多さや物語を書く上での基本中の基本を認識し始めるようになった気がする。まぁ気を抜くとすぐに忘れてしまうので身についてはいないのだが……。
と、真面目に書いてきてはいるが、私の講座受講動機は「友達づくり」とか「お布施」とかいうゆるふわエンジョイであったし、実際受講生同士の交流が楽しすぎてこの一年めっちゃハッピーに過ごしている。この講座で得られて良かったと思える一番のものは間違いなく「仲間」「友達」だと断言できる。プロの方に自分の作品を読んでもらえるだけで受講料の元は取れているのに、それに加えて楽しいことや人との繋がりも得られるなんて素晴らしすぎる。本当にやばい(語彙不足)
とりあえずこの記事はここまでにして、第三回課題以降についてはまた執筆が行き詰ったら書くことにする。めんどくさくなって書かないかもだけど。
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