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ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.2:そさむとスケート場

 休日。同僚の葵と有希からスケートに誘われたのは「そさむ」。そんなそさむに、修は『あるもの』を持たせた。
 
「あっ、修さーん! ここですよー!」
 スケート場の前で葵が手を振っている。
「もうっ、修さん遅い!」
 腕組みをした有希がそさむを一喝する。
「すまんすまん。ちょっと支度に手間取ってな」
 手を合わせてそさむが頭を下げる。
「支度って……スケート靴は借りられるし、そんな持ってくるものってありましたっけ?」
 有希が不思議そうに尋ねる。葵も首を傾げている。
「まあまあ、行こうぜ」
 疑問を持っているふたりの背中を押しながら、そさむはスケート場に入った。

 スケート靴を借りた葵と有希は、「ちょっと準備するから」と言って消えたそさむを待っていた。
「遅れてきたと思ったら、入ってからも遅い……!」
 有希はまた腕組みをして、イライラしだしている。
「まさか、スケート場の中でも待たされるとは思いませんでしたね……」
 葵は苦笑いしている。と、そこへ。
「すまん、待たせたな」
「!?」
 登場したそさむを見て、葵と有希は目を見開いた。そさむは、頭までピチッとしたスケートのウェアを着て立っていたのだ。
「ちょ……修さん、それ……」
 目を見開いたままの有希が、震える指でそさむを指す。
「自前のウェアだ。似合ってるだろ?」
 腰に両手をあてドヤ顔を決める、ピチピチのそさむ。有希は「やっちまったな」といった表情で、葵は唖然としてそれを見ている。
「さあ、滑るぞ」
 そんなふたりをおいてけぼりにして、そさむはリンクへ向かった。

「え、修さん……」
 ふたたび唖然とする葵。
「ちょ、マジで……」
 若干ひいた様子でそさむを見る有希。
「いてっ」
 そして、何度も何度も派手に転ぶそさむ。
 そう、そさむはスケートがまったくできないのだ。
「滑れないのに、カッコだけは一人前ね……」
 それを見て呆れて笑う有希。
「黙って止まってて写真撮ったら、いっちょまえに滑ってるようには見えそうだけどね」
 有希がふざけてそう言うと、葵も「あはは……」と苦笑い。
「あたっ」
 ふたりが笑っているのも知らず、そさむは何度も転ぶのだった。

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