【ネタバレあり感想】『ゴジラ -1.0』

　ネタバレありの感想、書きます。

前提

　僕はゴジラシリーズに詳しいわけではありません。

　数年前に近所のTSUTAYAで昭和・平成のゴジラ作品をいくつか借りて鑑賞したのがファーストコンタクトで、その後Amazonプライムビデオで鑑賞できるものをちらほら観ている程度です。

　最近鑑賞したゴジラ作品は『ゴジラKoM』『シン・ゴジラ』『ゴジラvsコング』です。どれも少し前に鑑賞したので記憶がおぼろげですね。なかでもシンゴジとKoMがお気に入りです。

　僕のゴジライメージはおおよそこのような背景から形成されています。『ゴジラ -1.0』の視聴時も、このようなイメージを持ったまま鑑賞しました。ですから、「ゴジラうろおぼえ君の感想」として楽しんでいただけると幸いです。

以下、ネタバレを含むはずです。映画を観てから読んでください。

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ゴジラが怖すぎる

　ゴジラが怖すぎます！

　怖すぎたので見出しと太字で二回も言いましたが、何度でも言いたいです。映画館という逃げ場のない暗所でごじまい（『ゴジラ -1.0』のこと）ゴジラの恐怖に晒されました。

　今回はその、ゴジラの恐怖についての感想に絞って書きたいと思います。その方が読みやすそう。その方が書きやすそう。

近作のゴジライメージと今作ゴジラの「殺意」

　僕の記憶にあるゴジラは、KoMのゴジラとシンゴジのゴジラです。この二つのゴジラはそれぞれ異なるイメージを与えてくるゴジラでした。

　KoM、およびモンスターバースのゴジラは、生態系の頂点に君臨する生物の王です。作中では神と称されることすらありました。KoMではギドラという地球外生命体との激闘を繰り広げ、「地球という生態系の守護者」というイメージが前面に押し出されています。正義の味方、というほどではないにしろ、人類に敵対するようなイメージはありません。

　シンゴジのゴジラは「災害」のイメージが色濃いです。加害の意思どころか、意思自体があるのかすらわからない。しかしあまりに巨大で、あまりに強大なために、ただそこに在るだけで人命が奪われてしまう。人類を阻む障害であれど、敵とみなすには加害の意図が感じられない、よって災害と呼ぶのが相応しい。そんなイメージです。

　そんな中、ごじまいゴジラは圧倒的な敵意の象徴として現れました。ゴジラという超生物が、意思を持って人を殺しにやってきたのです。今度のゴジラは人殺しだ！

　この加害性全開ゴジラは、先述した僕のゴジライメージの隙間からフルスイングで殴りつけてきました。衝撃的な体験。

「噛みつく」＝個への殺意

　ごじまいゴジラは、序盤のゴジラザウルス形態と、中盤以降のゴジラ形態の二種を持っています（名称は僕が適当に付けました）。僕は特にゴジラザウルス形態を恐ろしく感じました。

　主人公が滞在する島の近海に棲む、謎の巨大生物として現れたゴジラザウルスは、博物館で見たことのあるティラノサウルスの標本より少し大きいほどの身の丈で、作中でも「恐竜のようだ」とか言われていました。一般的なゴジラのイメージに比べると小柄です。

　しかし、小さくてもこいつはごじまいゴジラ。殺意むき出しです。なんと、小さい身体を活かして噛みつき攻撃を仕掛けてきます。

　さながら『ジュラシック・パーク』のように噛みつかれては投げ捨てられる人々。その身体で踏み潰すだけでなく、噛み潰すという従来の巨大なゴジラではデカすぎて行えない人類殺戮ショーを敢行するゴジラザウルス。初っ端からフルスロットルです。

　この噛みつき攻撃に象徴されるんですが、僕の抱いていた「一個人に興味がないゴジラ」のイメージとは異なり、ゴジラザウルスは命を一つずつ丁寧に奪っていくんですね。

　「俺はお前を殺したくて殺すんだ」と言われているような気がして、それがとても生々しくグロテスクに恐ろしかったことが印象に残っています。アリの行列を踏みつけるより、アリ一匹いっぴきを、人差し指でじっくり、じっくり擦り潰す。そんなグロテスクです。

重なる敵意、感情移入

　ゴジラサウルス形態の恐ろしさを体感させた後しばらくの間は、主人公の傷心と再生の葛藤が描かれます。主人公敷島の罪と、重すぎる罰。出会いを経て、少しずつ癒えていく傷。その横でチラチラ顔を出すゴジラ。怖いって。

　ごじまい、いわゆる「人間ドラマ」の描写に力を入れていて、それを上手く利用してゴジラへの恐怖を掻き立ててきます。罪悪感に苛まれながら少しずつ前を向かんとする主人公と、「お前は許されない」と言わんばかりに何度も現れるゴジラ。

　人が積み上げたものを殺意のままに破壊するゴジラは、まさに打ち倒すべき「敵」として立ち塞がります。作中の人物たちにも、鑑賞者にも、破壊と恐怖を以てそれを宣言するのです。これほど登場人物に感情移入できる映画もそうないでしょう。

「頼むから死んでくれ！」

　こうしてゴジラvs人類の決戦が幕を上げるんですが、ここまで散々ゴジラの恐怖を刻み付けられてきたので、僕は「こんな奴ほんとに殺せるんですか……？」と心底ハラハラしていました。

　「やったか！？」と登場人物が言うたび、僕も「やっててくれ～！」と心で叫んでいました。沈ませたり浮かばせたりするあの場面、一生懸命引き上げるあの場面。

　「もう頼むから死んでくれゴジラ！」なんて、ゴジラ映画観てて初めて思いましたよ。僕は怪獣映画は怪獣が活躍してなんぼだと思っていたのですが、ごじまいゴジラだけは例外です。早くいなくなってほしい。

　そんな僕の見守る先で、ゴジラの生命力と人類の根比べが決着して、エンディングへ……

あとがき

　感想、以上！

　今作の良いところはたくさんありますが、真っ先に挙げたい。「ゴジラが怖い」。

　「心が動かされること」を感動と呼ぶなら、間違いなく感動できる映画です。人と人の支え合いの温かみと、それらまとめて灰燼に帰すゴジラの冷徹な視線。殺すことだけを考えたあの冷たい瞳に射竦められて怯えることが、感動と呼べるなら。

　共感してくださった方、ありがとうございます。これを読んでおいてまだ観てない愚か者どもはさっさと映画館に走りなさい。なんだかんだあんまりネタバレせずに書いたから気にせず観に行きなさい。