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どこにでもいるアラサーOLがほうれん草に転生した話。

はじめまして。アオイと申します。

皆さん、タイトルをご覧になって不思議に思いました?
私もまだ現実を受け入れられていません…

今日は私の自己紹介と、今の姿をお伝えしたいと思います。

アオイってどんな人?

around30 いわゆるアラサーです。
どこにでもいる平凡なOLというやつです。

地元は関東の田舎町。
父は普通の会社員で、母はスーパーでパートをしています。
祖父母が車で30分程のところに住んでおり、道の駅に野菜やお米を出して生計を立てています。
小さい頃は祖父母の畑を手伝うのが楽しかったのですが、だんだんとそれが恥ずかしくなり、時々会うくらいに。

大学では憧れの都会で一人暮らしを経験し、そのまま就職。
季節ごとに祖父母から野菜やお米が送られてくるのがありがたいと思うものの、一緒に入っている手紙に、少し鬱陶しさも感じています。

趣味はスマホアプリでマンガを読む事と、実家の猫や友人の子供の写真を見る事。
最近、YouTubeを観ながらゆるゆるできるストレッチやヨガを始めました。

恋人はいなくて、同期や学生時代の友人と時々お酒を飲みに行くのが楽しみな、ほんとに、ごくごく普通の生活を送っていました。

あの日のこと。

その日は突然やってきました。
朝の占いで「予想外の事が起きるかも」という一言はあったものの、いつも通り出社し、いつも通り業務を終えます。

「予想外の事」といえば、お弁当を作ったのに玄関に忘れてしまったので同期とランチに出たくらい。
ほうれん草とベーコンのパスタとコーヒーのランチセット。美味しかったな。

帰り道、駅までの歩き慣れた道。
ランチで同期に教えてもらった歩数計と連動したアプリを眺めて信号が変わるのを待っていました。

突然聞こえてくる周囲の悲鳴と、目の前には大きなトラック。そして、身体がふわりと浮く感覚。
「あぁ、私、事故にあったのか」と何故か冷静に状況を理解しました。

ランチに食べたほうれん草とベーコンのパスタ、週末に家でも作りたかったのになぁ…なんて思った直後、私の記憶は途絶えます。

目が覚めると…

ぼんやりと意識を取り戻し、トラックにはねられた事を思い出しました。

「よかった…生きてる…」

そう思い、日付と時間を確認しようと手を動かそうとしますが、上手くいきません。

そして不思議と、トラックにはねられたのに、体のどこにも痛みがないのです。

不思議に思い、周囲を見渡すと…

畑…?

祖父母の畑を手伝っていたので、すぐにわかりました。
ほうれん草の双葉です。

上を見れば青い空が広がっています。

「私、病院にいるんじゃないの…?」

戸惑いながらも、どうやっても動く事ができないので、ひたすら周囲を見渡すか耳を潜めるしかありません。

しばらくしてから車を停める音と、女性と子供の声がしました。

「ママ!ほうれん草!芽が出てるよ!」

やっぱり私、ほうれん草になってるんだ…

まさに「予想外の事」が起こりました。
トラックにはねられ、目が覚めたらほうれん草になっていたのです。
訳がわからないまま、また意識を失ってしまいます。

その後。

それから何日経ったのでしょう。
ふと寒さで目が覚めては、体の周りに霜柱が立ち、やがて溶けてあたたかくなる。
そして、日が暮れた頃に意識を失う。その繰り返しです。

楽しみといえば、日向ぼっこや鳥達の鳴き声を聞く事、道行くご年配の方々の会話や「私」を育てているであろう女性と子供の他愛もない会話を聞く事くらいです。

あたたかい日が続いた頃、体がムズムズしていたので「えいっ」と動いてみました。

「ママ、大人の葉っぱが出てるよ!」

子供の無邪気な声のおかげで、自分の状態がわかりました。

本葉だ、本葉が出ている。
私も小さい頃に祖父母に大人の葉っぱって教えてもらったっけな。
懐かしい思い出に浸ったのも束の間、母親らしき女性は続けて、

「ほんとだね〜、2月くらいには食べられるかな?」



………えっ?

私、食べられちゃうの??


その瞬間、やっと全てを理解しました。
「私」はトラックにはねられて、ほうれん草に転生し、近い未来、この子供と女性の家族に食べられる事を。

クリスマスの音楽が遠くで聞こえるので、おそらく今は12月。
あと2ヶ月程で私はこの家族に食べられるために今日も生きている。

食べられてしまうのは本当に、本当に嫌だけど、せめて最後はあの日食べたパスタになれればいいのに、そう思いながら日々を過ごしています。

まだこの不思議な状況の整理がついていない私ですが、宜しかったらまた時々、私の成長を覗きに来てください。

本当に私、このあとどうなってしまうんだろう……

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