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Joe Meek - Joe Meek's Tea Chest Tapes: The I Hear A New World Sessions

アウタースペースミュージックというコンセプトをもってトライアンフから発表したテープエコーとオープンリールによる1960年のアヴァンポップエレクトロニカ「I hear a new world」のさらに本作はセッショントラックスという位置付けになる。I hear a new world自体が極めてラジカルだがそのためのセッションということで本作はさらにアウタースペース寄りの作品群になっている。チェリーレッドからのリリースでは7トラックが収録されているが、間断なく続く一つの音響作品のように感じた。

冒頭、Orbit Around The Moonは電子音とエコー、左右のパン、効果音的なスタートから初期ロックンロールフォーマットの演奏に入る。演奏は恣意性があるかどうかは分からないが時折不安定な音階を含んでいる。ギターとドラムはそのままフリーキーな演奏になだれ込み、Entry Of The Globbotsに入る。ヴォイスパフォーマンスはポップだが、ベースが入らない事で浮遊感が続く。後半、楽曲は予兆なく断ち切られてエコーに巻き込まれ、そのままダビーなLove Dance Of The Saroosに続く。この辺りの構成はチェリーレッドによる編集の影響もあるかもしれないが見事だ。

Glob Waterfallは、SMiLE期のブライアンウィルソンにもつながりそうな非楽器、非音楽によるアプローチが素晴らしい。ほぼエレクトロニクスエクスペリエンスの様相だが、続くMagnetic Fieldのイントロダクションとして機能しているため、ラジカルなアプローチもペリー&キングスレイ的なストレンジポップを連想してしまう。

ラストはDribcots Space Boatだが、浮遊感あるシンセサイザーとスティールギターが素晴らしい。この曲にはあらゆる要素が凝縮されている。電子音による音響的な実験とポップな要素、20世紀前半のポピュラーミュージックのフォーマットの限りを尽くしたアプローチが素晴らしい。

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