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音楽について書きます。 (15min recordsお手伝い係:X Twitter @15minrecords)

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  • ASARI NOTE

    ASARIによるライナーノーツのような音楽紹介です。

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自己紹介

はじめまして、ASARIです。音楽について書いています。昔、CDに「ライナーノーツ」という形で作品レビューのテキストが挿入されていることがありました。私はライナーノーツを読みながらCDを聴くのが好きでした。ここではそんなライナーノーツのように作品紹介を兼ねた文章を書ければいいなと思っています。 音楽を文章にすることについて 私はほんの少しの間、ピアノを習っていたことがありました。結局何も身につきませんでしたが、ピアノを通じて和声やメロディーを楽しむことを覚えました。今でも

    • The Doors - S/T

      1967年に発表されたドアーズ最初のアルバムはほぼファーストテイクがそのまま使われているという解説を読んだ。ボーカルの勢いなど確かに企図されたものではなさそうな起伏がむしろ感情を揺さぶるようでとても素晴らしい。仮に演奏はスタジオミュージシャンによるものだったとしてもボーカルの勢いと流れは演奏の熱量にも伝わっているようで圧倒される。 Soul Kitchenは、タイトでファンキーなドラムとパーカッシブなオルガンの組み合わせが素晴らしい。ギターのリズムカッティングがグルーヴを一

      • Molly Drake - The Tide's Magnificence: Songs and Poems of Molly Drake

        本作は2018年には発表されたが音源は1950年代にピアノ弾き語りベッドルームレコーディングされた作品の編集盤になる。丁寧に旋律を歌う声と誠実な演奏がとても美しい。Molly Drakeは、Nick Drakeの母親であり、1950年代以降、Nick Drakeの死後も創作を続けていたが全ての曲が未発表だったようだ。 冒頭のHappinessは、美しいトラッドのようでもある。生活の中にポエティックな感性を見出す非常にイノセントな歌のように感じる。メジャーコードは端正な進行で

        • Tori - Descese

          Bruno Berleのローファイタイニーな宅録MPBセンスとオルタナティブ感溢れるブラジルのSSW Toriのコラボレーション曲を含むToriの2023年作は南米サイケ感を伴ったフォーキーなアルバムに仕上がっている。 タイトル曲は以前先行公開されていたが、Bruno Berle色の強いベッドルーム感ある演奏が素晴らしい。またBruno BerleとToriのユニゾンの憂いを含んだフィーリングがとても美しい。ホーンセクションの静かなアレンジがオーケストレーションを効果的に生

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          347本

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          いちやなぎ - IRAHAI

          京都を拠点に音楽にとどまらず多様な展開を続けるいちやなぎによる2024年の本作は同じく京都で活動するミュージシャンをバックに従えたバンドサウンドを軸に作られたタイニーサイケポップ作品に仕上がっている。どこかあがた森魚からの継承を感じる文学的な幻影がある。 森の怪獣は、オープニングのコーラスを伴ったサイケデリックポップな展開が素晴らしい。その後も展開は一貫してサンシャインポップ的な雰囲気を保っている。淡々としたボーカルと対照的なきらびやかなアレンジで両者のバランスがとても心地

          いちやなぎ - IRAHAI

          João Gilberto - Live In San Francisco, 2003

          2000年以降数年のジョアンジルベルトのアグレッシブな活動はボサノバのオリジネイターとしてのある種の使命感をも感じる力強い活動だったようにも思える。2000年にリリースされた「声とギター」とそれ以降の各地でのライヴは楽曲の完成度を飾り気なくそのまま差し出されたような強さがある。本作は2024年に音源として発表されたがオリジナルボサノバの完成形が詰まっているように思う。 Waveは、アントニオカルロスジョビンのA&Mのオーケストラアレンジが非常に印象的だが、対照的なギター1本

          João Gilberto - Live In San Francisco, 2003

          Spacemen 3 - Playing With Fire

          1988年の時点ですでに1990年代のインディーロック的アプローチをやり尽くしたようなフィーリングをもったSpacemen 3の3rdアルバム。Spacemen 3は2人の異なる音楽性とサイケデリック感覚という共通項の重なり合いがどの作品にも詰め込まれているように感じるが、本作は両者の方向性の違いが漠然と見え隠れする微妙にもろく崩れそうなところがむしろ魅力に感じる。 Honeyは、ギターとオルガンによるドローン的な雰囲気溢れるイントロから柔らかなボーカルとリバースエフェクト

          Spacemen 3 - Playing With Fire

          Lucas Arruda - Solar

          2015年、アジムスのメンバーやリオンウェアも参加したブラジリアンメロウな2ndアルバム。カバーの選曲もサウンドの質感も素晴らしくどこかメタ視点あるバランス感を感じる仕上がりになっている。 Aguaは、転調を繰り返す凝った作りを流麗に響かせるバッキングがとても心地よい。歌メロの間に挟まれるシンセサイザーのサブメロディーは特異で美しいコードを際立たせているがアレンジに込めた想いがダイレクトに伝わってくるようでこのサブメロディーに惹き込まれてしまう。 Stop! Look,

          Lucas Arruda - Solar

          BADBADNOTGOOD - Talk Memory

          前作ボーカルアルバムに続いて2021年にリリースされた本作はインスト作品になっている。本来のアプローチに近いのかもしれない。ジャムセッションのような雰囲気を保ちつつ細かなエディットが加えられており、スピリチュアル、フリーからメロウソウル、エレクトロニカまで自在に表現を打ち出してまとめていく壮大な仕上がりだ。 冒頭のSignal from the noiseは、Floating Pointが参加していることで話題になった。スピリチュアルジャズアプローチにエレクトロを織り込んだ

          BADBADNOTGOOD - Talk Memory

          Crowded House - Woodface

          本作はロック周辺の喧騒溢れるイメージがある1991年にリリースされた3作目になるが非常に穏やかで美しいアルバムだ。リリース当時は必ずしも主流の音像ではなかったかもしれないが、とてもビートルズ愛とエバーグリーンな雰囲気のある良質な作品だと思う。 Chocolate Caleは、アプローチこそ異なるがどことなくDrive My Carを思わせるマイナーブルース的な雰囲気がある。かつてのレジェンドを現代の視点で描くと同時に自身とも重ね合わせるようなイメージがある歌詞のユーモアがシ

          Crowded House - Woodface

          ドドイッツ - Music is Magic

          水戸でセンバヤマスタジオというダンス・音楽スタジオを運営するウンケンを中心に活動するドドイッツによる2024年に発表された本作はファンク、レゲエ等をベースにすつつプリミティブな日本のリズムや節回しを前面に打ち出したサウンドが非常に印象的だ。解説によれば作品によっては歌詞は日本語の他にトランスマントラという独自言語も用いているということで語感も含めた土着的なアプローチがとても面白い。 ワニはコワイは、ワンコードのファンキーなエレピに重たいリズムと呪術的だがユーモアを交えつつ軽

          ドドイッツ - Music is Magic

          Mario Castro Neves & Samba S.A. - S/T

          プロデューサー、マリオカストロネヴィスと、その兄弟のギタリスト、オスカーカストロネヴィス率いるSamba SAによる1967年のアルバム。細やかなコーラスアレンジと躍動感あるブラジリアングルーブが心地よい作品だ。 Candomlbeは、プリミティブなアフロジャズを思わせる低音のピアノと抑制されたドラムから入るがコーラスの登場で一気にラウンジ度が増す瞬間が素晴らしい。その後はブラジリアングルーヴを押し出したアップテンポな展開が美しい。間奏のピアノのブロックコードとリズムの組み

          Mario Castro Neves & Samba S.A. - S/T

          Osmar Milito - Viagem

          1974年に発表された本作はピアニストでありアレンジャーでもあるオズマールミリートによるボッサラウンジ感あふれるアルバムだ。アレンジャー視点のバランス感覚ある選曲の美しさが全編通じた統一感につながっていると思う。 Up, Up And Awayは、5th Dimensionのシングル曲だが流麗なピアノとストリングスの美しい導入に続くコーラスワークが素晴らしい。コーラスの裏でゆったりと支えるストリングスと細かく動くピアノのバランスも美しい。オリジナルではギターが担っている部分

          Osmar Milito - Viagem

          Avalanche Kaito - Talitakum

          タイムラインでNyege Nyege Tapesに例えている方がいた。不穏で呪術的なリズムアプローチは確かにNyege Nyegeのような雰囲気がある。アフロノイズロックと言われることもあるが、マルチプレイヤーでもあるカイトウィンセによる2024年のアルバム。 Borgoは、冒頭の不穏な短いフレーズのループとディレイを経て、Avalanche Kaito らしい低音にNyege Nyege Tapesを思わせるテクノ経由のプリミティブなパーカッションと呪術的なボイスパフォー

          Avalanche Kaito - Talitakum

          Hatfield and the North - S/T

          カンタベリー人脈が交差するHatfield and the Northはその時点で取り組みたい音楽を実現するための最善のメンバーを揃えたというような趣がある。1974年の本作は短めのトラックが絶え間ななく続く構図の中に2曲、コアになる楽曲が据えられている。印象派を思わせるカバーアートと連続して一つの組曲のような形を成している楽曲の構成力はつながりを感じる。 Son of ‘There’s No Place Like Hometown’は、前半のコアになる楽曲で、鍵盤のフレー

          Hatfield and the North - S/T

          Marker Starling - Diamond Violence

          カナダのSSW、Chris A. Cummingsが率いるMarker Starlingの2022年の本作はバンドサウンドを基調にしたタイトな演奏の一方で作品を通じて物静かな雰囲気が漂っているメロウなアレンジが素晴らしい。インスタントクラシックスと表現されることもあるMarker Starlingの美しいメロディーが活きた心地よいアルバムだ。 冒頭のタイトル曲、Diamond Violenceは、ゲストミュージシャンPeter Zummoによる柔らかなトロンボーンの音色が印

          Marker Starling - Diamond Violence